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流せ! そうめんとか!

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流せ! そうめんとか!

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2.食べられる!

「これは……っ! らぁめんにうどんまで! 是非とも全ていただかなくてはいけませんっ!」
 結とエースの流した各種麺に、闘志を燃やしたのはフレンディス。
 既にばりばり食べているセレンフィリティの隣に立つと「はぁあああ……」とこちらも気合を溜め始まる。
「いや、そうめん食うのに一体何を!?」
「とぉうりゃー!」
 箸が舞う!
 フレンディスの持つお椀には、しっかりとラーメンが。
 そしてもう一つのお椀には、うどんが入っていた。
「むむむっ、やるわね。あたしだって負けないわよ!」
 それを見たセレンフィリティの対抗心に火が着いた。
「はぁあああ!」
「てぇええい!」
 競い合い、麺を食べる二人。
「……まあ、楽しそうでよかったな」
「そうね……」
 互いのパートナーの様子を少し離れた所で眺めるのは、ベルクとセレアナ。
「……けど、今回はラッキーハプニング的なことはないみたいだな……ちぇ」
「そうね……」
「え?」
「え?」
 ぽつりと、つい心の声が漏れたりなんかするのだった。

 しかしやはりハプニングは起きてしまうもの。
「流しそうめんって、こんなに激しいものだったのね……初めて知ったわ」
 確実に間違った流しそうめん知識をインプットしつつあるマリエッタは、自分も……と、麺類争奪戦に参加しようとする。
 が、慣れないことをしたためか、身体がぐらりと傾いて……
「あ、きゃああああ……!」
「どうしたの、マリー……きゃああああっ!」
 ゆかりも巻き込み、滝壺へと落ちていくマリエッタ。
 だぶん、と水しぶきがふたつ。
「た、大変だ!」
「早く、救助を」
 その様子を見て焦る、ウェザーの店員レインとクラウド。
「大丈夫よ」
 しかし、サニーは珍しく落ち着いていた。
「滝の中にはラフィルドがいるから、溺れることはないわ」
「ラフィルドが?」
「それは……大丈夫なんだろうか」
「ああ、別の意味で」
 大丈夫ではなかった。

(きもちよく、なりにきたの?)
 滝に落ちたマリエッタの手足に、ぬるりとしたものが触れた。
 水が、その場所だけ赤い。
 不定形な赤い少女、ラフィルドが近づいてきたのだ。
(え……)
 驚き固まるマリエッタに、ラフィルドは触れる。
 ぬるり。
(あ、あ……っ)
 その思いもよらぬ滑らかさに、思わず声が出た。
 ぬるりとした感覚は、マリエッタの足首から太腿へ、そしてもっと上へと浸蝕していく。
(や、そこ……駄目っ)
(あ……んっ)
 気が付けば、隣ではゆかりが同じ様に赤いものに絡みつかれ、悶えている。
(か、カーリー……カーリーが一緒なら、ま、いいか……)
(あぁあっ)
(ん、ひゃうっ)
 水だけでなく、快楽にも流されていく二人だった。

「ん?」
 フレンディスと麺類争奪戦を繰り広げていたセレンフィリティは、ふと手を止めた。
「どうしました?」
「うん、なんか呼ばれたような気がしたんだけど…… 今は、こっちね!」
「そうですね!」
 今回は健全なまま終わりそうな二人だった。

「よし。ほら、こうやって箸で取るんだよ」
 やっとの事でそうめんを取ることができた北都は、クナイのお椀に入れてあげようとする。
 と、クナイはその腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「どうせなら、食べさせてくれませんか?」
「え、えぇ」
「いいじゃないですか。恋人同士、なんですから」
「でも、でも他にも人がいるし、えーと」
「……嫌、ですか?」
「う、うぅ……」
 不意に、捨てられた子犬のような寂しげな眼差しで北都を見るクナイ。
(そ、そんな風にされたら、断れるわけないじゃないか!)
(ああ、揺れてます揺れてます)
 逡巡する北都を見て、心の中でそっとほくそ笑むクナイ。
「う〜、い、一回だけだからね! はい、あーん」
「あーん……うん、おいしいですね」
「……味音痴なのに、何言ってるの」
「北都の味は、分かるんですよ」
「ぼ、僕の味って、妙な言い方しないでよー!」
 クナイのその台詞に、ただでさえ赤かった北都の顔が更に赤くなる。
 クナイはよしよし、とその頭を撫でるのだった。

「取れないか? なら、これをやろう」
「……悪いな」
 こちらも、取ったそうめんをお椀に入れてあげる光景が繰り広げられていた。
 取ったのは、モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)
 受け取っているのはムティル・ジャウ(むてぃる・じゃう)
 箸の使い方に慣れていない上に、いきなりこんな滝の中の麺類を取れと言われては手も足も出ない。
 そんなムティルを見かねて、モーベットが助け舟を出していた。
(ん……?)
 ふと、モーベットが顔をしかめる。
 取ったそうめんの中に、変わったものがあったような気がした。
(色々な種類の麺を流しているそうだし、問題はないだろう)
 黙って、ムティルのお椀に入れる。
「そういえば、弟はどうした?」
 いつも、ムティルの側にいるムシミス・ジャウ(むしみす・じゃう)の姿が、今日は見えない。
「ムシミスは、別の滝に興味があるらしい。そっちへ行った」
「貴様は、行かなくていいのか?」
 何の気なしの質問だった。
 しかし、モーベットのその言葉に、ムティルは少し不服そうな様子で彼を見る。
「……ここにいてはいけないのか?」
「いや……」
 にょろり。
 言葉を続けようとしたモーベットの目に、ムティルのお椀から蠢く白い麺類が見えた。
「あ」
「え……なっ」
 麺類……に混じっていたパラミタソーメンヘビは、にょろりと身体を伸ばすとムティルの手に絡まる。
 両手を拘束するようにぎゅっと絡み、更に上腕へと伸びて行く。
「これはいかん。すぐにそこの茂みへ」
 拘束されたムティルを抱え、運び込むモーベット。
「な……何を」
「すぐに楽にしてやる」
「待て、待……て、そこは、何かが違……っ!」
「止めるか?」
「……後で覚えていろ」
 茂みの中、何かが違うことが行われようとしていた。