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リアクション
「ここに先ほどの方がいるとのことでしたが、正解だったようですね。雅羅さんもずっと奇声をあげていらっしゃいますし、大変な事件なのでしょう」
「まあ、ある意味大変かもな。ひでぇ過去がある奴らには」
遅ればせながらもカオスの中心地に姿を現したフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)とベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)。だが未だにフレンディスは悩んでいた。
「しかし、くろれきし、とは如何なる意味をもつ言語なのでしょう? れきしは、『歴史』として、くろは……『玄』? 『玄人さんの歴史』? それとも、えぇと……はっ! もしや『苦労歴史』の言い間違いなのでしょうか?」
「どうしてそうなる……玄人でも苦労でも愚弄でもねぇ。『黒歴史』な。なんつーか、知られたくない恥ずかしい過去みてぇなもんか? 良い例が目の前にいるだろ」
本気で悩むフレンディスに若干呆れつつ、めげずに解説していくベルク。
そんなベルクがハデスを指差す。どうやら現在進行形の黒歴史、と言いたいようだ。
「? ハデスさんに恥ずべきものはないと存じますが……というか、そのようなものが暴露されてしまうのですか!? ……それは知られたら切腹ものじゃないですか! 一刻も早く止めなければ!」
ようやく『黒歴史』の意味を、なんとなく理解したフレンディスは最近の己の色々を思い出しこれはまずいと再認する。
「そうかい……まあいい。さあ、本編はこれからだ。なあ? ハデース?」
一方のベルクは『そんなことはどうでもいい。重要なことじゃないんだ』と言わんばかりに笑い、ハデスへと邪悪な笑みを浮かべる。
「ちょ!? 咲耶、離れっ! 今もっとも危険な男が目の前にっ」
「そんなデタラメ言ってもだめですー! 今日という今日は許しません!」
ベルクの姿を確認して距離を取ろうとするハデスだが、咲耶にそれを阻まれる。なれば起こりうる当然の結果。
「俺がいて、ハデスがいる。つまりそれは……ショータイムってことだ!」
全てから解き放たれたかのようないい笑顔と身軽さでハデスへと向かうベルク。
無論、この後ハデスがベルクにイジメらごほんごほん、可愛がられたのは言うまでもなかった。
「また雅羅の黒歴史が……こうなったら四の五の言ってられない!」
これ以上雅羅の黒歴史がバレるのをよしとしない想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が意を決する。
自分の中で押しとどめていた凄惨なる歴史を解放し、黒歴史暴露という悲しき連鎖を断つ為、一歩前に勇み出る。
「蒙 武李! これ以上はキミの好きにはさせない……しっかり聞いておくんだ! オレの、覚悟を!」
「ま、まだ黒歴史を叫ぶ人がいるのっ!? どうしてみんなそこまで……!?」
-----想詠 夢悠の黒歴史-----
「以前とある映画撮影へ参加した時、女性が苦手なオレは共演する雅羅を前にして緊張しないよう、彼女と背丈が同じ女性のマネキンの頭部に印刷した雅羅の顔を貼り、蒼学の女性用制服を着せ、それに向けて演技の練習をしていたんだ。ここまではまだいいと思う。
でも次第に、デートの練習とか、恋人になった時の練習などと、会話や体への触れ方をシミュレートし始め、お、オレは……オレは……!
気がついたらマネキンの胸元に軽く触ってたり、スカートをちょっとめくっていたんだあああ!」(想詠 夢悠談)
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渾身の黒歴史を、ありったけの思いと共に解き放ち、夢悠はその場で仰け反った後真っ白に燃え尽きて膝から崩れ落ちた。
「れ、練習するのはいいことよね……あは、あははは」
話を聞いた雅羅もどう対応して言いかわからないのか、ただただ笑うのだった。しかしその言葉のおかげでクールダウンしたのも事実。更に、
――――エラ_発生。エラ_発生。シス テムを周復します、
AIにも致命的ダメージを与え、ぽんこつ寸前にまで追い込んだ。夢悠の燃え尽きは決して、決して無駄ではなかった。
「こ、こうなったらこっちも反撃だ! 次は海、さんだ!」
「くそ、雅羅だけかと思っていたがそう甘くはないか!」
海が走る。だがその距離は遠く、止めるまでには至らず、武李がゆっくりと海の黒歴史をバラし始める。
-----高円寺 海の黒歴史-----
「まった、また兄弟の話しになるけど、海さんは小さい頃兄たちに泣かされていたりはしていたが、
四人の兄が大好きだったので、今でもたまーに子供のころの癖で『お兄ちゃん』と呼びそうになってしまうことがあるそうで。
実は軽度のブラコンなのでは? と思っていたりする今日この頃、らしいよっ」(蒙 武李談)
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「お兄ちゃんっ……く、くく」
「笑うな! 誰にだって言い間違いくらいあるだろう! それにブラコンなんかじゃない!」
「海くんたら、可愛いですね」
「だから……! もういい、倒す!」
雅羅に笑われ、柚に可愛いと言われ恥ずかしくなった海が実力行使に打って出る。それに追随するように小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も武李へ駆ける。
「人様が隠したいことをいけしゃあしゃあと言おうだなんて、許せないよ! 絶対に許せないよ! ぼっこぼこにされてもまったく言い訳できないんだから!」
鬼の、いや、般若の形相だろうか。可愛らしい顔をしながらも、その背後に纏わせる気からは一撃必殺の四文字が垣間見える。
(あんなの聞かれたら……!)
と、内心ではかなり焦っている美羽。ちなみに、パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)はと言うと――――。
〜〜〜とあるコハクの現在状況〜〜〜
「急に出て行くから呆然としたまま見送っちゃったけど、平気かな」
そう暢気に思いながら、美羽の心配をしていた。
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