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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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学生たちの休日15+……ウソです14+です。
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リアクション

    ★    ★    ★

「お待ちしておりました」
 鷽の巣で待機していたチュチュエ・テルプシコラが、到着した散楽の翁たちにむかって優雅な仕種でお辞儀をした。
 周囲は、見渡す限り鷽の素体である銀砂……のはずであったのだが……。
「おかしい、ここって、鷽の巣のはずだよね……」
 なんだか磯臭い臭いに、ネージュ・フロゥが顔を顰めながら言った。それに、どこを見回しても、銀砂は見えない。
「それが、つい先ほど、忽然と銀砂が消えてしまったのです」
 タンサ・メルポメネが、困ったように告げた。
「うしょ〜ん」
 突如、なんだか素っ頓狂な鳴き声が響く。
「鷽ですね。時期が悪かったようです。ここの銀砂は、たしか一年かけて巨大な鷽に変化しているんですよ」
 やれやれというふうに大神御嶽が説明した。
「おそらく、退治するなり、一日が過ぎれば、元の銀砂に戻るとは思いますが」
「それを待つのも時間の無駄ですね」
 ショワン・ポリュムニアが、大神御嶽に答えた。
「それにしても、これは、あのとき盗まれた試作品が変化したものでしょうか?」
 アマオト・アオイが、散楽の翁に訊ねた。
「おそらくはそうでしょうね。ある意味、この子たちの試作品とでも言える存在なわけですが。形状の固定が不安定だったのと、パンダ像と同様に周囲とのリンクが異常でしたから」
「鷽は、そんなに昔からいたんですか!?」
 散楽の翁の言葉に、大神御嶽が聞き返した。
「5000年前の試作品です。この銀砂を研究して作った初期ロットですね。資料としてシャンバラ宮殿に保管されていたのですが、戦後の混乱の中、盗み出されたと記憶しています」
「それについてですが……」
 散楽の翁の説明に、コウジン・メレが進み出た。
 イレイザー・スポーンに憑依されていたコウジン・メレは、当時もイルミンスールへ侵入しようとして失敗したのだと言う。イレイザー・スポーンの無意識下に刻まれた世界樹と同化するという命令は、ほとんど本能レベルにまで単純化されてしまっていたため、世界樹に行きたいという欲求以上には効果を発しなかったと見える。そのため、具体性を欠いた計画は、幸いにも実現することはなかったのだ。
 現在のイレイザー・スポーンが明確に世界樹を狙っているのは、大図書室にある資料から、グランツ教がしかけた本来の命令を理解したからである。
 また、当時の世界樹は大きなダメージを受けていたため、対象を特定できなかったということもあろう。イレイザー・スポーンの目には、当時のイルミンスールは世界樹として認識されなかったのである。
 そのため、曖昧な目的をはたそうというよく分からない衝動に突き動かされたイレイザー・スポーンは、当時、強力な女王器を開発しているというシャンバラ宮殿に、アイテムを求めて盗みに入ったとのことであった。相棒として空賊たちを雇い、首尾よくギフトから作られた鷽と、客寄せパンダ様の像を盗み出したというわけだ。もちろん、それらは失敗作だったわけで、間が抜けていたわけではあるが。
 当然のように、客寄せパンダ様の影響を受け始めた空賊たちとイレイザー・スポーンは、空峡近くの小島で町を作り始めてしまった。自業自得である。
 その騒ぎを解決してくれたのが、散楽の翁と名乗る陰陽師であった。散楽の翁は世襲制であるため、現在のカン・ゼの先代か、数世代前の者であろう。
 客寄せパンダ様が封印され、引き寄せられた者たちは開放されたわけではあるが、元凶であった空賊とイレイザー・スポーンは、鷽を連れて逃げだしてしまった。鷽の危険性を見抜いた散楽の翁に追われ、仲間割れを起こした空賊たちはイレイザー・スポーンに憑依されたコウジン・メレを囮にし、鷽を持って姿をくらましてしまった。その後、パラミタ内海そばまで追い詰められたコウジン・メレが、散楽の翁によって封印されたわけである。
 おそらく、鷽を持ち逃げした空賊たちは、この島まで逃げ延びたところで、銀砂と同化して活性化した鷽によって追い払われてしまったのだろう。どうせ酷い目に遭ったのだろうということが容易に想像できる。
 コウジン・メレに憑依していたイレイザー・スポーン同様、世界樹へむかうという命令だけを銀砂から取り込んだ鷽は、その後の世界樹イルミンスールの再生と共に、そこへとやってくるようになったというわけだ。
「いずれにしても、銀砂は必要です。全て鷽になってしまったらやっかいですから、その前になんとかしたかったのですが」
 困ったことになったと、タイオン・ムネメが言った。散楽の翁たちが到着してから、質のよい銀砂を採取しようとしていたのが裏目に出てしまったようだ。
「ああ。不活性化してしまっては、素材としてはあまりよろしくはない。早く回収しよう」
 散楽の翁に命じられて、一同はまた鷽に変化していない銀砂を求めて散らばっていった。
「あっ、なんか来た……」
 地面を調べながら歩いていたネージュ・フロゥが、ブルンと身体を震わせた。急に尿意を覚えたようである。
「ど、どこかにトイレはないの……」
 切羽詰まって、ネージュ・フロゥは茂みの中へと入っていった。

    ★    ★    ★

「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! 上陸班は我に続け」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)が、機動城塞オリュンポス・パレスに残る天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)を前にして、集まったオリュンポス特戦隊たちに言った。
「お任せください。パレスはここで待機させます」
 天樹十六凪が、一礼してドクター・ハデスを見送くる。
「行くぞ、ペルセポネ、アイトーン」
「了解した、ドクターハデス!」
「了解しました、ハデス先生っ!」
 ドクター・ハデスに命じられて機晶戦闘機 アイトーン(きしょうせんとうき・あいとーん)ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)が元気に答えた。
「ペルセポネ、機晶合体だ!」
「はい、機晶合体っ!」
 たがいに声をかけ合うと、きしょい戦闘機……もとい、機晶戦闘機アイトーンが合体用に……分解した。
 ばらばらばらと、機晶戦闘機アイトーンがパーツに分解して床に転がる。
「よいしょ、よいしょっと……」
 バラバラ殺機晶姫事件になった機晶戦闘機アイトーンの破片を、ペルセポネ・エレウシスがかいがいしくちまちまと拾って自分に装着していく。
 20分後……。
「はあ、はあ……。ハデス先生、合体……終わりました」
 ゼイゼイと息を切らしながらペルセポネ・エレウシスが報告した。
「んっ、御苦労。あれ、忘れてるぞ」
 天樹十六凪が入れてくれたコーヒーを飲んでいたドクター・ハデスが、ペルセポネ・エレウシスに言った。
『合体機晶姫オリュンピア・空戦形態!』
「が、合体……機晶姫……オリュンピア・空戦、け、け、形態っ!」
 お約束の名乗りをあげる。だが、ペルセポネ・エレウシスになぜか照れがあるのか、機晶戦闘機アイトーンと台詞があわない。
「あのー、ハデス先生……」
「なんだ。もう少しボイストレーニングの時間がほしいのか?」
 声をかけられて、ドクター・ハデスがペルセポネ・エレウシスに聞き返した。
「合体ですが、もっと他の人のみたいに、パーツがぱーっと飛んで光につつまれて、私の周りをグルグル回りながら、一つずつかしゃーん、かしゃーんと……」
「そんな物理法則を無視した合体できるわけないだろうが。ぐだぐだ言ってないで出発するぞ」
「は、はい……」
 ドクター・ハデスに怒られて、ペルセポネ・エレウシスがシュンとした。
「オリュンピア、いきまーす」
 ドクター・ハデスをだきかかえると、ペルセポネ・エレウシスがオリュンポス・パレスから飛び立っていった。機晶戦闘機アイトーンが、加速ブースターからジェットを吹き出して空を飛ぶ。
「あのー、ハデス先生」
「まだ何かあるのか?」
 またもやペルセポネ・エレウシスに声をかけられて、ドクター・ハデスがめんどくさそうに聞き返した。
「お尻がちょっと熱いです」
「根性で我慢しろ」
「うっ、うっ……」
 涙を流しながら飛行を続けたペルセポネ・エレウシスが、銀砂の堆積している鷽の巣に辿り着いた。少し遅れて、特戦隊がついてくる。
「これが銀砂か。よし、確保しろ。これをやるから命令を聞けと脅せば、イレイザー・スポーンなど簡単に配下にできよう」
 単純に決めつけると、ドクター・ハデスが特戦隊に命令した。
 今回のオリュンポスの目的は、銀砂を使ってイレイザー・スポーンを手下の怪人に加えようという場当たり的なものだったのだ。
「以前、敵イコンを鹵獲して配下にしようとしたときは失敗したが、今回はうまくやるぞ」
 ドクター・ハデスが、つぶやいた。
 以前、茨ドームでの戦闘のとき、敵イコンであるリーフェルハルニッシュを鹵獲しようとしたのだが、どれも壊れていて役にたたなかったのだ。仕方ないので、その破片は要塞の装甲板にしたり、ペルセポネ専用パワードスーツの装甲板に流用したりしている。
「うしょよーんよーんよーん……」
 なぜか三段エコーで鷽の鳴き声が聞こえた。
「あれは、鷽! まずいぞ、銀砂を確保しろ。鷽に渡すなよ」
 ドクター・ハデスに言われて、特戦隊やペルセポネ・エレウシスが近くの銀砂を自分の許にかき集めた。そのとたん、銀砂が変化を始めた。それに巻き込まれる形で特戦隊が身につけていたアーマーや、ペルセポネ・エレウシスのアーマーが変化を始める。
「きゃ、何これ!?」
 ペルセポネ・エレウシスが、あわてて追加装甲を力任せに引き剥がすと、なるべく遠くへと投げ捨てた。すぐに、特戦隊の者たちも真似をする。
 うち捨てられた装甲板の前に、鷽が現れた。すると、まるで生き物のように装甲板が地を這って鷽の許に集まっていった。
「うぞおおおーん」
 鷽が一声野太く鳴くと、装甲が鷽に貼りつき、その姿がリーフェルハルニッシュのものとなった。
「まずい、結局この展開か。ええい、また破片でもいい、吹き飛ばせ、ペルセポネ!」
「はい、ハデス先生!」
 ドクター・ハデスに命じられて、ペルセポネ・エレウシスが上空に飛びあがってミサイルを乱射した。