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リアクション
「あら、いい格好ね」
空京警察にしょっぴかれていく三兄弟を眺め『彼女』は笑った。
「あ、あんた!」
笑い声にドッドが気づいて、声を漏らす。ルメとポッキーも遅れて彼女に気づいた。突然止まった三人に、もう少しで収容施設なのにと警官が嫌な顔をした。
「あ、あのさ!」
「いいわよ。失敗したみたいだけど、わたしの目的は達成出来たし、報酬はちゃんと払ってあげる」
それに、と続けた。
「なかなか面白かったわ」
「は?」
「ふざけんな、お前がやれって言ったから――」
ドッドとポッキーは声を張り上げるが、ルメは静かだった。彼は何かを察したのだろう。
そもそも自分達が軽い気持ちで彼女をナンパし怒らせたのが発端である。彼女を怒らせるよりはとルメは無言を貫いた。
「じゃぁ、またね?」
縄を強く引かれて建物へと連れて行かれる三人に彼女はゆるゆると片手を挙げ、左右に小さく振った。
そして腕を降ろし、そのまま腹の前で両腕を組んで、考える。
「髪の色と少し痩せて色が薄くなったみたいだけど、まさか遺っていたとわね。散々探したのに今頃見つかるなんて、やりそうな嫌がらせよね」
嫌だ嫌だと首を振る。
「それにしても、自分の息子どころか、わたしの娘まで遺してたなんて、一体、何を考えてたのかしら?
ま、好都合と思えばいいわね。それに、行方不明だったあの子の居場所もわかったから良しとしましょう」
彼女は呟き肩を竦めると空京の街の中へと消えていった。
…※…※…※…
夜、孤児院『系譜』の二階の一室に破名はいた。
「お前以外に命令文を知っている人間はどれだけいるんだ?」
疑問を投げかけている相手は、ずっと眠り続けている守護天使の男性。
先日、箱を並べただけの簡易ベッドから立派なベッドへと待遇が良くなった相手の顔を、カーテンを開けて月の明かりに晒した。
見ている方がむかついてしまう程、綺麗な寝顔である。
「目覚めて教えてくれれば楽なのに」
結局あの後自分に命令した相手を見つけられず院に帰ってきた破名は、まだ暫くは目覚めないだろう相手に、ただ苦く溜息を吐いた。
眠っているのは、名前すらわからない男。
それこそ誘拐同然で院に引き取った男。
捜索されていないことをいいことに、ずっと黙っていたが、探すべきだろうか。
守護天使が起こしたトラブルの時に他にも知っているだろう人間がいる可能性に気づきながら、関係者を探そうとはしなかった。
故意に避けた。
現代で唯一破名に『命令』できた人間を眺め、今話しをすることができたらいいのにと、思わずにはいられない。
それが単なる問題の先送りとわかっていても、破名は良策だろうと何だろうと接触する可能性が少しでもあると思うと、わざと避けていた。
「相談すべき……なのだろうな……」
心にもないことを吐き出す。
破名は悪魔であると同時に、壊獣研究施設『系譜』の生体装置でもある。
道具として扱われたいという消しきれない欲が為に、命令を拒絶する自信が無く、今日だって不意だったとは言え受け入れて行動不能になっていた。
「さて、どうするのが正しいのだろうな」
だからと言って、いつまでも避けていていいわけではないのだから。
動かないと事態は展開されない。
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担当マスターより
▼担当マスター
保坂紫子
▼マスターコメント
皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。
本当に、様々なアクションを頂いて、保坂はいつも驚かされているような気がします。
今回ページ構成がいつもと違います。場合によっては一頁が長いかもしれません。
また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。
では、ご縁がございましたらまた会いましょう。