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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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第23章 アナザーワールド20年後の世界 Story1

 サリエルにより強制転移され、数時間経過した後。
 目覚めた祓魔師たちは、誰がいるかいないか把握しようと互いの顔を見合う。
「お父……様?」
「ミリィ、よかった…無事なようだね。皆…いるかな?」
「…何とか生きてるみたいや」
「あ、あれ!?封魔術の媒体がないよ!」
 リーズは床をぺたぺた触り探してみるが、跡形も残ってはいなかった。
「あいつが時間後退で消滅させたんやろ。んまぁ、封印に成功した枷はやつでも解除不能みたいや」
「ボコールとサリエルは?」
 辺りを見回してみるが、どこにも姿がなかった。
「別のところに転移したのかもしれんな、北都さん」
「先生方がいらっしゃらないようですよ!?」
「フレイ、どこかきっと別の場所に…って、何か赤ん坊の声がしないか?」
 “ふぇええぇん!”と泣きじゃくる声を耳にし、そこへ目を向けたベルクは…。
「こ、校長!?」
 …まだ眠っているのかと思い、自分の頬をつねってみるが残念なことに現実だった。
 どうやらサリエルが能力を封じられる前、エリザベートの時を戻して赤ん坊にしてしまったらしい。
「んむぅ〜…」
「困りましたわ、校長がこんな目に遭ってしまうなんて…」
「あかたんあつかいは、やめてくだちゃいおめがさん」
「い、いえでも…」
「わたしはとしがもどっただけでちゅ。のうりょくはおちてしまったでしけど、ちしきはちゃんとあるのでしよぉ」
「校長が赤ん坊になったってことは…、フレイはなんともないか?」
「え?えっと、はい!変わりはないようです、マスター」
 能力の一部である生命の時を捻じ曲げる魔術は封じることがきたらしく、周りの者たちの姿にも変化はなかった。
「あ、あの、ラスコット先生は?さきほどから姿がないのですが?」
「別の場所へ転送されたか、あるいは…」
「大丈夫なはずだよ、あの人なら…」
 時の魔性に屈することはないはずだと涼介が言う。
 ひとまず仲間と合流しようと、訓練場やカフェへと向った。
 彼らのほうも魔術の影響を受けなかったようだが、退治したはずのボコールやカフェで交戦中だったディアボロスの姿はどこにもなかった。
 パラミタの外はどうなっているのか、校舎の外へ出てみると…。
 自分たちの目を疑いそうな世界へと変貌していた。
 空は不気味な夕焼け色に染まり、森の木々は痩せ細っているようだ。
「わたくしの携帯にメール?…おや、こんな時によくもまぁ…」
 誰からだろうと開いてみるたエリシアは、生暖かい眼差しで文面へ目を落とす。

 ‐キツイお仕事でしょうが、頑張ってください‐

 エリドゥでの任務、無事に終了したそうですね疲れさまです。
 すぐにまた新しい任務に就くとのことですね。
 皆の平和を守る為の大切な任務だと思います。
 大変でしょうが、頑張ってください。
 俺たち夫婦も応援しています。

 それと、嬉しいニュースがあります!
 もうすぐ我が子が生まれます。
 妻と2人で生まれてくる子は女の子らしいので、きっと妻に似て美人になりますよね。
 生まれたらその子の将来について、いろいろと妻と話し合ったりしてみたいです。
 お腹に子がいるので料理は、俺が作っています。
 美味しいといってくれると、作り手としては嬉しいものですね。
 もちろん妻に負担がかからにように、掃除も俺がやっていますから安心してください。

 by陽太

 任務に励んでいるであろう御神楽 陽太(みかぐら・ようた)から、エリシアとノーンへの激励メッセージだったが、やはり半分はのろけ話しだった。
「大変な時に、ごちそうさまなことやらかしてくれましたわね」
「おねーちゃん。メールいっぱいきてるよ?」
「あら、…メールが容量オーバーしてますわ」
 何年分ものメッセージがたまり、これ以上は受信できなくなってしまっていた。
「ねぇ、トラちゃんは?」
「ここにいる…ルカルカ」
「まだぐっすりなのね」
 テスカトリポカはまだ目を覚まさず、グラキエスの腕の中で寝息を立てていた。
「1つの器に、2人の人格がいることになってしまったが…」
「そ、それって大丈夫なの?」
「あぁ、対価としてリスクがとても高いものだったな。エリドゥで校長が言わないのもなんとなくだが分かる…」
 本質の摂理を曲げてるような所業なのだから、止むを得なかったと説明する。
「そう…。とりあえず皆無事だったのね」
「ミリィさん、ちょっといい?」
「どうしたんですか、美羽さん」
「先生はどこにいるの?何か忙しい事情でもあるのかしら」
「―……えっと」
 あのエリアで起こったことを話していいものなのかミリィが悩む。
 隠していてもいずれは知られてしまう。
 ふぅと小さく呼吸をして、まず自分の気を落ち着かせてから美羽に説明した。
 まさかの出来事に彼女は膝を崩し、悔しそうに地面の土をがりりと掴んだ。
「やだ、やだよ…私また……」
「サリエルの口ぶりからして、殺そうという意思はまだ感じられませんでしたわ」
「もし、あの人にみたいにいなくなってしまったら、私…」
「美羽さん…、まだそうと決まったわけではないですよ」
 大量の血を失ったため足取りをふらつかせながらも、ベアトリーチェは彼女の傍に寄り添う。
「ちょっといいですか?」
 ミリィがベアトリーチェだけ手招きし、美羽に聞こえないよう小さな声で話す。
 事の詳細を聞いた彼女はパートナーにはまだ、黙っておくことをミリィと約束した。
 復讐心にとらわれてしまえば、サリエルを殺すだけのために1人で突っ走ってしまうからだ。
「(確かなことは、彼だけでなく…私たちも対象として狙われかねなかった…。それに私たちは、荒廃させられた未来を元通りに修正しなくてはなりませんから…)」
 ベアトリーチェ自身も悔しさで気がおかしくなりそうだったが、そんなことになってしまったら祓魔師の教えに反することになる。
 彼の教えを守り、これからパラミタのために成すべきことを優先するしかなかった。