リアクション
イルミンスールの勝負日 ★ ★ ★ 「……というわけで、小ババ様専用イコンを第三世代機にパワーアップしたいのですが……」 「う〜む、そうじゃのう……」 猿渡 剛利(さわたり・たけとし)に言われて、アーデルハイト・ワルプルギスが腕組みして考え込みました。 「ダメでしょうか……」 「うう〜ん。まあ、いいじゃろう。認可!」 そう言うと、アーデルハイト・ワルプルギスが、判を押した書類を猿渡剛利に手渡しました。 これで、無許可ではなくなりました。 「にっしっし。でかしたぞ、では、あらためて合体だあ!」 「合体だね、いくよー」 猿渡剛利の報告を受けて、イルミンスールの研究室に集まっていた三船 甲斐(みふね・かい)が、ポータラカ人であるエメラダ・アンバーアイ(えめらだ・あんばーあい)に声をかけました。 「ゆーにおーん!」 ユニオンリングを掲げた三船甲斐とエメラダ・アンバーアイの足許に光のサインが走り、それによってできた幾何学的な魔方陣のような物からのびた光の柱が二人を呑み込みました。その光が消えると、三船甲斐一人だそこに立っていました。よく見ると、そのお肌はキラキラとしています。どうやら、ナノマシンとして拡散したエメラダ・アンバーアイが、三船甲斐の体表面にまんべんなくべったりねっとりさらさらと貼りついているようです。 「薫、素材は準備できているかあ」 「ぬかりなし」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐が訊ねると、佐倉 薫(さくら・かおる)が何やら怪しい物の入ったタライを指し示しました。 ナノマシン原木を培養液で培養した物に触媒として天上天下唯我独尊鉄を混ぜ、硝子蜂の針銀と結合させた物でした。 「さて、作業に入るぞ」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐が、ナノマシン拡散をして素材を組みあげ始めました。ファイバー状になった素材を、ナノマシンがナノレベルで結合させて結晶を構成していきます。さらに、それをパーツの大きさにまで組み立てていくわけです。このへんは、今日まで解析してきたたくさんの設計図の集大成です。 「これは便利だな。さすがに量産にはむかないが、今後も試作品の研究のときには合体して作業をしようかの」 調子よく、エメラダ三船アンバーアイ甲斐が各パーツを結晶化させていきます。それを、佐倉薫が錬金術的に組み立てていきました。 「さて、後は武装だのう。鳴神 裁(なるかみ・さい)に頼んだ物は完成してるかな?」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐が振り返ると、ちょうど及川 翠(おいかわ・みどり)がパートナーたちとやってきました。 本当は、三船甲斐は鳴神裁に協力を頼んだのですが、肝心の本人は遊園地のそばだかなんだかへ行ってしまったようです。代わりに、三船甲斐からの依頼を聞いたのがミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)でした。 「こんな話、乗らない理由がないわよ。ぜひ、もふもふを採用してもらわなくっちゃ!」 なんだかたくさんのもふもふが入ったカートを押してきたティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)とサリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)を連れたミリア・アンドレッティが言いました。 「さあ、もふもふを作りましょう!」 及川翠が嬉しそうに言います。その声に合わせて、パートナーたちが「おーっ!」っと声を揃えました。 「剛の装甲に柔の武器。まあ、よいであろう」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐とイコプラ本体の方の制作を手伝いながら、佐倉薫がつぶやきました。 「よし、任せたぞ。さて、こちらは、塗装に入るかの」 武装を及川翠たちに任せると、エメラダ三船アンバーアイ甲斐は小ババ様専用イコンの仕上げに入りました。 さて、もふもふ武装の方は、ティナ・ファインタックが、用意してきた図面を広げて制作を始めました。その指示に従って、ミリア・アンドレッティが組み立てを行っていきます。及川翠とサリア・アンドレッティは、機械はよく分からないのでお手伝いです。 「じゃあ、できあがったもふもふビットの毛を櫛で綺麗に解かしてね」 「任せてよね♪」 ミリア・アンドレッティに言われて、及川翠が元気に答えました。 もふもふビットは二種類で、一つは仔猫型、もう一つはピヨ型です。まん丸としたビットの表面に、及川翠がもふもふの毛皮を貼りつけていきます。二つとも、ほとんど毛玉という感じです。 「サリアは、爪研ぎをお願いね」 「うーん、頑張るよー」 サリア・アンドレッティも、意気込みは負けていません。 仔猫ビットの爪と、ピヨビットの蹴爪をヤスリで研いでいきます。 二つのビットはこの爪でクロー攻撃をするのです。ピヨビットの方は、他にも口からビームという隠し機能があります。 「できたよー」 ほとんどぬいぐるみのようなもふもふビットを完成させて、及川翠がエメラダ三船アンバーアイ甲斐に言いました。その後ろでは、パートナーたちができあがったばかりのもふもふビットにさっそく頬ずりしています。まあ、お約束の儀式のようなものです。 「よし、さっそく搭載じゃあ」 できあがったもふもふビットを、エメラダ三船アンバーアイ甲斐が小ババ様専用イコンのバックパックコンテナに装填しました。 「こばあ?」 そこへ、「できたの?」とばかりに、小ババ様がやってきました。 「にっしっし、もちろんじゃ。さっそく試してみるのだ」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐に勧められて、小ババ様が新型イコンに搭乗します。まあ、イコンと言っても、イコプラがベースですから、大きさは、本物のアーデルハイト・ワルプルギスほどですが。見た目は、大きなボックスコンテナ型のバックパックを背負ったメカ・アーデルハイト・ワルプルギスといったところです。 「こばっ!」 さっそく、小ババ様が帽子の部分にあるコックピットの中に乗り込みました。 「よおし、フォースゲートオーブンじゃ。小ババ様イコンをカタパルトへ移動!」 エメラダ三船アンバーアイ甲斐が命じました。研究室の壁の一画がパタンと外へむかって倒れ、その先にまっすぐに続く枝のカタパルトが現れました。 「こばこば、こばばー!」 外へと出ると、小ババ様専用イコンは、枝のカタパルトの上を滑走して、空へと飛び出していきました。 |
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