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魔女と傭兵と封じられた遺跡

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魔女と傭兵と封じられた遺跡

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暗闇の中で

「……うわ……真っ暗で何も見えないわ……」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は先を見通そうとしても全く見えなくてそう言う。
「もう少し光を強くしましょうか? 光に反応する守護者がいるとも考えられるので出来る限り抑えていますが、この当たりからは本当に暗いみたいです」
 さゆみの言葉を受けて穂波はそう言う。
「うーん……今はいいわ。この辺りはただの通路みたいだし。何か見つかったり、戦闘が避けられそうになかった時に頼むわ」
 穂波のする警戒も当然のことだとさゆみは断る。
「そんなこと言って大丈夫ですの? また……もといいつものごとく、迷うことになったら…………今回は本当に帰れないかもしれないですわ」
 さゆみの極度の方向音痴を知っているアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、好意に甘えて光を強くしてもらったほうがいいんじゃないかと言う。
「大丈夫よ。穂波さんから離れないよう気を張り巡らしてるから」
「……そんな状態じゃ、何かを見つけるのは難しいですわね」
 そうアデリーヌは言うが、その言葉ほど、それが悪いことではないと思っていた。
(穂波さんの傍を離れない……それは護衛の意味もあるのですから)
 探索も大事だが、それも大きく大事だろう。
(まぁ……迷わないようにというのが一番大きな理由には違いないですわ)
「……アディ、なんか酷いこと考えてない?」
「そんなことないですわ」
 いつも考えていることなので適当に流すアデリーヌ。さゆみの方向音痴はアデリーヌがいなければどうしようもないレベルなのだ。
「ま、さっさと恵みの儀式の終わらせ方を見つけて帰りましょう。……見つけて、どうするかは別にしても、知らないよりは知ってるほうがいいのは確かだわ」
 さゆみとしても、穂波が永遠の眠り……正確な意味での死ではなくても、それに等しい状態になることは望んでいない。それでも、儀式を終わらせるという選択肢があるかないかではあったほうがいいと思っているのも確かだった。
(選択肢を持った上で自分がどう振る舞うか……穂波さんにはよくよく考えて選択して欲しいですわね)
 さゆみの考えているだろうことを予想しながら、アデリーヌもまた心のなかで思うのだった。


「セレン。あの部屋怪しくないかしら」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はパートナーであるセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)にそう声をかける。
「んー……確かに。なんかキメラがたくさん守ってるし」
 セレンもセレアナの言うとおりその部屋が怪しいと思う。
「でも、流石に戦わないで入るのは無理そうね」
「ええ。ここはキメラを倒すしかないかも」
 セレンの言葉にセレアナは同意する。
「さて、さっさと終わらせるわよ」
 他の契約者と狙うキメラの役割分担を終わらせたセレンはセレアナと一緒に自分たちの獲物であるキメラに正対する。
 最初に動いたのはセレアナだ。『女王の加護』で守りを確保し『疾風迅雷』でスピードを上げたセレアナはキメラに肉薄する。そして星印の剣でその急所を的確に突く。
「セレン!」
「分かってるわ」
 セレアナの掛け声に応じてセレンはセレアナと位置を変わるようにしてキメラに肉薄する。迎撃するキメラの攻撃を『ゴッドスピード』のスピードと『銃舞』で避けながら確実に止めを刺していく。

「流石ねセレン」
 キメラが動かなくなったのを確認してセレアナはそう声かける。
「ま、セレアナの最初に入れた一撃でもうあっちは満足に動けなかったからね。別に難しくないわ」
 実際このレベルのキメラであれば楽勝とは言わずとも一対一で対応できる二人だ。二人で一人で戦えば特に難はない。
「さてと、他の契約者達も戦い終わったみたいだし、この部屋を探索と行きましょうか」
 そうして契約者たちは一つの部屋を調べ始めるのだった。

(……あそこに罠がありますね)
 セレンたちがキメラたちと戦い始める直前。穂波は部屋を守護するキメラの近くに罠が設置されているのを発見する。
(皆さんは…………罠を警戒している様子はありませんか)
 複数いるキメラを相手するのに契約者たちは集中している。このまま戦えば罠に引っかかる可能性が高いだろう。
(仕方ありませんね…………罠は私が解除するようにしましょう)
 気配を消して穂波は罠の解除にとりかかるのだった。…………その様子を気配を『消して』観察する敵の存在に気付くことなく。