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食い気? 色気? の夏祭り

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食い気? 色気? の夏祭り
食い気? 色気? の夏祭り 食い気? 色気? の夏祭り

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 誰よりもあなたが居てくれれば

 夏祭りが開かれているイルミンスール近郊の村を訪ねた金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)金元 ななな(かねもと・ななな)は仲良く腕を組んでデートの真っ最中であった。
「ななな、疲れたらすぐ言うんだぞ? 無理はしちゃだめだ、お腹の子供に障るからな」
「大丈夫だよ、ゼーさん。なななはそんなにヤワじゃないよ?」
 軍人としての動きがそうさせるのか、見事に人混みを避けて歩く2人はかき氷で涼を取り、なななが荷物で両手がふさがっているシャウラの口にフライドポテトを1つずつ運んでいたり仲の良い若夫婦の姿を見せていた。
「ゼーさん、喉渇かない? あそこのベンチで待ってて、ななながジュース買って……」
「俺が行ってくる! なななはベンチで待っててくれ!」
 ベンチに荷物を置くとなななを座らせ、シャウラはヒュン! と風を切る音をさせながら速攻でジュースを買いに走った。その姿を見ながら、なななは無意識にお腹を擦りながら呟く。
「……あなたのパパは、ママ以上の働き者になっちゃったわ」
 クスクスと笑いが込み上げてきたところで、戻ってきたシャウラからジュースを受け取ってひと口飲むとお化け屋敷がある事を聞いた。
「祭りの中にお化け屋敷があるんだそうだ、この子が生まれてちょっと大きくなったら3人で入り……」
「宇宙怪獣がいるかも?」
 幸せそうになななのお腹を擦りながら言うシャウラの言葉を遮って、なななが言い出した事は――
「う……宇宙怪獣?」
 キラキラと瞳を輝かせているなななに目が点になるシャウラだったが、入りたそうな彼女を押し止めてシャウラはお化け屋敷の前に立った。
「なななは、出口のベンチで待っててくれ。俺がひとっ走り行って見回ってくる!」

 しかし、中のお化け屋敷からは悲鳴や子供の泣き声が絶えない。
 それでもシャウラは意を決して突入していった。


「ゼーさん……大丈夫?」
「だ……大丈夫大丈夫!」
 光の速さで一周して戻ってきたシャウラであったが、半ば強引に屋敷のトラップを振り切ってきた。それは先を歩いていたカップルを追い抜き、出口付近に潜む幽霊達を跳ね飛ばしてきた勢いのままに出口から飛び出してきたのである。
「ああ、でもなぁ……壁越しにずーーーーっと付いてくる顔だけがあって、アレはちょっと不気味だったな。どういう細工してるんだろう」
「それが、宇宙怪獣かも……!」
 再び、瞳が煌いたなななを落ち着かせたシャウラは、人混みを避けながら出店を巡り、なななに似合いそうな小物や子供のおもちゃに良さそうなグッズを見つけては2人ではしゃぎ、いつの間にか時間は過ぎて行った。


 ◇   ◇   ◇


 花火のアナウンスが祭り会場に流れると、出店から花火観賞の会場へ移動する人々に混ざり、シャウラとなななも向かうが2人は会場から少し離れた静かな場所で互いに寄り添って座り、打ち上がる花火を待っていた。
「良い場所空いてて良かったね、ゼーさん」
「うんうん、これも日頃の行いがいいからだな!」
 打ち上がった花火を2人で見上げ、シャウラは隣で楽しそうに花火を眺めるなななの横顔を見つめていた。シャウラの視線に気が付いたなななも、花火から目を離してシャウラを見つめ返す。
「ゼーさん……?」
「ん……花火も綺麗だけど、なななも綺麗だなって」
 
 これから子供が生まれれば、その分なななへ負担をかけることになる。勿論子育ては2人でって思う。シャウラはなななをギュッと抱き締め、耳元で囁いた。
「ななな、ホント……ありがとうな」
「ゼーさん……それ、なななもだよ」

 
 なななのお腹に芽生えたばかりの命――シャウラはお腹に耳を当てて子供の心音を聞き取れないかと試していた。花火が上がる合間の僅かな時間、シャウラは懸命にその音を探して聞いていた。

「時々さ、俺達だけこんなに幸せで良いんだろうか……って不安になる事がある。これ、目が覚めたら全て夢だったらどうしよかって……」
 小さな心音を探り当てたらしいシャウラがふと、洩らした言葉になななは黙ってシャウラの髪を指先に梳いていくように撫でた。
「ね、ゼーさん……そういう時はなななを探せば良いと思うよ? ゼーさんが愛してくれた証は、なななにあるんだもの」
「……そうか、そうだよな! はは、やっぱりなななは頭良いな!」
 花火が再開し、子供の心音が聞きづらくなるとガバッと身体を起こしたシャウラがなななに口付けた。どのくらいそうしていたのか、花火を見るよりも長いキスの後――

「ゼーさん……幸せな時間を、ありがとう」
「俺もだよ、ななな。なななが楽しいと、幸せだと喜んでくれたら……それは、俺もだから」
 優しい夜風が2人を包み、祭りと花火の夜は更けていったのでした。