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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair
アリサ・イン・ゲート -Rest Despair アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

リアクション

 キョウマ博士の用意した航空輸送艇に乗り、彼らはそれぞれの目的のためにオリュンズへと向かった。
 オリュンズ地方は【グリーク】国の南方にある【グリーク】の元属国であり、都市オリュンズは大陸から別れた島の上にある。
 その島の周りは世界崩壊後、『キンヌガガプ』に囲まれ、周りの海は次元の亀裂に消えてしまって干上がっている。
 つまり、陸路も海路もなく、空路で行くしかない。
 海の上の孤島ならぬ次元の孤島と化したそこには、今は無人島だという。崩壊前はドールズとの攻防で都市部が削られ、崩壊時には外世界への移民による人口の減少と都市機能の壊滅により、無事生き残った人々も島からの退避を余儀なくされた。
 更には、『キンヌガガプ』により周辺海域の水が無くなったことと。気流の関係から本来は海からの湿った風と雨が運ばれるはずなのだが、それが乾いた風になり急速な砂漠化を促している。
 土地さえも人を拒むようにその変容を遂げたという。
 そこに今なお残る都市という残骸に彼らは再び降り立った。



 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はカメラ越しに再び訪れた都市の様子を見ていた。
「相変わらず高いわー」
 セレンフィリティはカメラを垂直にスライドさせ、オリュンズの象徴たる巨大な柱『雷霆』を収めていく。
 天を突く柱は今なお健在で、支柱とともに高層地区の支えになっている。
「同じ所ばかり撮ってないで」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がセレンフィリティを叱る。
 二人ともレオタード水着と、時と場所にあってない格好だというのは置いておくとして、二人は様変わりした都市の様子をカメラという記録媒体と自らの目に収めていた。
 アリサを伴って歩く彼らだったが、踏み入れた都市の様子にセレアナが言う。
「捨てられた都市。それにしては綺麗よね」
 世界崩壊時のイコン戦と市民の発狂暴徒化にて都市部はひどい有様だったというのに、地面に瓦礫はなく、周りの建物や緑化植物も道路も人がいるかのように整然としていた。
 以前のマップデータを現在のものと比べてみると、戦闘のあった一部区画を除いてほぼ元通りになっていることがわかった。
「ただ、人がいないけどな」
 新風 燕馬(にいかぜ・えんま)の言うように、ここには人がいない。訪れた彼らを除いて、ここには誰もいないはずだった。
 サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が燕馬の袖を掴みつぶやく。
「ゴーストタウン……」
 歩行者も車もないのに信号機は機能し、広告映像塔には商品宣伝や都市案内の立体映像が流れている。落ちた木の葉を清掃ロボットが片し、店の中にはアンドロイドが来店客を待ち佇んでいる。
 人のためにあるモノたちが機能しているのに、ここに住む人はいない。整然としているだけに不気味だった。
 漂ってこない人の意識にアリサが言う。
「海京に似ていると思ったけど……なんか人の気配がしない」
 御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が答える。
「そうですね……ここには本来沢山の人がいのでしょうけど。そのことだけすっぽり抜けているようで」
 夏侯 淵(かこう・えん)が思い出し言う。
「そうだな。初めて来た時には活気があったというよりも、近くで戦争してるってのに呑気な街だったよな」
「RAR.が人々にそうさせていたというのもあるのでしょうけど。今でもそうなのかしら?」
 セレアナが言っているのは『雷霆』にある都市機能維持を司るコンピューターRAR.のことだった。RAR.は市民を守ることを第一として機能し、市民の感情が戦争によって暴発しないように電波による人心掌握までしていた。
 安全性への徹底したシステム構築。それは今も機能しているということをセレンフィリティがカメラに記録していく。
「でも、それも今は『守るべき市民』もいないのでは意味ないわよ」
 セレンフィリティの言葉に燕馬が頷き、
「それはRAR.に聞くしかないよな。もしかしたらここにいないだけで奴の言う『守るべき市民』てのが居るかもしれない」
「そのRAR.が『アリサを連れて来い』と言うんだから、もしかしたらその市民に私達が入るのかも」
 と、返すサツキに「まさか」と燕馬は言う。
「何が出ようと、何が来ようと、この正義の騎士アルテミスがアリサさんの護衛をさせていただきます。ご安心を!」
 高らかにアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)が宣言する。が、
「ところで、その肝心のアリサはどうした?」
 夏侯淵が言い、皆が確認する。
 やはりいない。
「護衛対象から目をはなすとは正義の騎士として一生の不覚です!」
 セレンフィリティがため息をつく。
「直線にしか移動していないのにこの短時間でどこに行っちゃうのよ……ま、発信機つけているからすぐに場所は割れるけど」
「今更のことだけどな……RAR.のところに行く前に探すぞサツキ。おまえは離れるな」
 燕馬がサツキの手を引く。少し強く引かれた感覚にサツキが驚く。
「大丈夫。私はいますから」
「そういえば、もうひとりいたはずだけど……」
 舞花はアリサとともにもう一人減っている事に気がつくのだった。