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賑やかな秋の祭り

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賑やかな秋の祭り
賑やかな秋の祭り 賑やかな秋の祭り

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 朝。
「賑やかな音楽に踊っている人もいて朝から大賑わいですわね。さすがお祭り……今日は……」
 イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)は一通りテンション高い光景を見やってから隣にいるだろう祭りに誘ってくれた恋人にお礼を言おうと振り向こうとした時
「いんぐりっとちゃん、いんぐりっとちゃん」
 いつの間にか前方に移動していた明るく天真爛漫な天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)の呼び声がしてその方向に顔を向けると
「葉っぱの雨だよ、葉っぱの雨」
 頭上に降る紅葉や銀杏に浮かれ手を広げたりくるりと回る結奈がいた。
「ふふ、すっかりお祭り気分ですわね」
 結奈の無邪気なはしゃぎぶりに思わずこちらまで楽しくなって吹き出すイングリット。
「だって楽しいから、いんぐりっとちゃんも……」
 結奈はイングリットを手招きしようとした時、
「……ん?」
 クイッと後ろから服の裾を引っ張る感触を感じてゆるりと振り返った。
 途端
「わぁあ、雪香ちゃん!!」
 結奈の顔は更に嬉しさで一杯になり、
「結奈お姉ちゃん、こんにちはぁ」
 声をかけてくれた雪ん子の雪香を思いっきり抱き締めて
「こんにちはぁ、久しぶりだね〜、雪香ちゃん」
 頬ずりをした。この地で行われたハロウィン以来の再会である。
「うん! あっ、イングリットお姉ちゃんもいたんだぁ」
 結奈に抱き締められて雪香はにこにこしていたかと思いきやイングリットがいる事にも気付きさらに嬉しそうになった。
「えぇ、お久しぶりですわ。今日はどうしてここに?」
 イングリットは雪香に歩み寄り、視線を同じくしてから挨拶と思わぬ再会を訊ねた。
「あのねぇ、お祭りがここであるって聞いて……面白そうだから来たのー。あとね、お姉ちゃん達に会えるかもって……だって、前もお祭りの時に会ったから」
 雪香はちょっぴり恥ずかしそうにここに来た理由を明かした。
「じゃ、今日は一緒に遊ぼー」
 結奈はぱっと雪香を解放してからはぐれないようにと手を差し伸べた。
 その手を
「うん!!」
 雪香はしっかりと握り、力強くうなずいた。絶対に手を離さないと。
「それじゃ、まずはあそこ!!」
 結奈はすぐ近くで営業する猫がいる出店を指し示すなり雪香を伴ってタァと駆け出した。
 結奈達の後ろ姿を見て
「まずは食欲の秋ですわね」
 クスリとイングリットは洩らしていた。
 三人はひとまず出張猫カフェへ。

 出張猫カフェ。

「どれも美味しそうですわねぇ」
「迷っちゃうよぉ」
 イングリットと雪香はどれを注文するかで迷っていた。さすが食欲の秋である。
 そこで
「だったらみんな違うのを選んでみんなで食べよう! そしたら色んな味も食べれて楽しいよ!」
 結奈の名案がきらりと光り
「あたし栗きんとん食べたい!!」
「スイートポテトも秋らしくていいですわよ」
 という雪香とイングリットの意見を統合し、
「じゃ、栗きんとんとパンプキンパイとスイートポテトの三つと飲み物にハーブティーを注文しよう」
 と結奈は自分が食べたいパイを含んで注文を決定した。
 そして、エースが注文を取りに来て無事に注文をしてしばらくして料理はすぐに運ばれた上に
「……取り分け用の小皿もよろしければどうぞ」
 エースは注文を取る際に見た様子から必要だろうと人数分の小皿も付けた。
 エースのサービスに
「ありがとー」
「気が利きますわね」
 結奈とイングリットに喜ばれた。
 その後、
「秋がいっぱいだね!!」
「美味しい秋ですわね」
「うん! どれも美味しいね!」
 結奈、イングリット、雪香はそれぞれの料理を存分に味わった。
 そうしてまったりと秋のスイーツを楽しんでから出店を出た。

 エース達の店を出た後。
 三人はぶらぶらと歩いていたその最中
「……あそこに可愛い服があるよ!!」
 結奈が興味を引いた店を指し示した。
 そこには
「まぁ、貸衣装とお茶のお店ですわね」
 秋らしい装いの迦耶の屋台があった。

 店に立ち寄るなり
「着てみたいなぁ」
 雪香は店頭に並ぶ衣装に目を輝かせ最大級の興味を向ける。
 その結果
「だったら、三人で着ようよ!」
 となるものの
「えっ、わたくしもですの?」
 イングリットは予想外の事にびっくり。
 さらにそこへ
「いらしゃいませ。秋をイメージした衣装をお貸ししますよ。サイズは大人、子供、幼児の3サイズです。服だけでなく装飾品もありますよ」
 迦耶の言葉が加わり、完全に貸衣装を纏う流れに。
「ねぇ、この看板に書いてあるのは?」
 結奈が看板について訊ねると
「ご希望の方に魔法を掛けるサービスもしています。お祭りを楽しんで貰うために。もちろん安全は保証済みですよ」
 迦耶はにこにこと笑顔で説明した。
「ねぇ、ねぇ、魔法もかけて貰おうよ♪」
「うん! みんなと飛びたい!!」
「わたくしも構いませんわよ」
 聞いた結奈、雪香、イングリットはサービスを受ける事に満場一致で決定。
 三人は衣装を借りた後、迦耶に『空飛ぶ魔法↑↑』を掛けて貰い空へ。

 空。

「わぁ、結奈お姉ちゃん、イングリットお姉ちゃん、すごいよ、すごいよ、町が下にあるよ!!」
 紅葉をイメージした赤系の物を着た雪香は飛んでから興奮気味に眼下を見下ろし、
「楽しい音楽も聞こえてくるから空で歌って踊ろうよ! 雪香ちゃん、いんぐりっとちゃん♪」
 銀杏をイメージした黄色系の衣装を纏う結奈は雪香とイングリットの手を握り、にこぉとダンスに誘った。
「踊る!」
「お付き合いしますわ」
 雪香は速攻で賛成し茶色系と緑系の衣装を纏ったイングリットも喜んでいる雪香の事もあり断らなかった。
 三人は妖精の如く軽やかに楽しく歌い踊った。
 そして、存分に踊った後に一休みにと迦耶の店に舞い戻り喉を潤す事にした。

 椅子に座りティーを楽しむ中
「一休みのおやつに……」
 結奈はそう言うなり
「じゃーん!! 栗のタルトだよ!!」
 持参した自作の栗タルトを大袈裟な効果音と共に披露。
「結奈お姉ちゃんが作ったの?」
 雪香はキラキラと目を輝かせながら栗タルトを食い入るように見た。
「うん!! みんなに食べて貰おうと思って……雪香ちゃん、いんぐりっとちゃん、どうぞ♪」
 雪香に答えるなり結奈は雪香とイングリットに栗のタルトを渡した。
「ありがとー」
「頂きますわ」
 貰った樽とを早速頬張る結奈とイングリット。
 そして、
「おいしい!! 結奈お姉ちゃん、料理上手だね!!」
 雪香の表情が美味しさにゆるゆるになり、美味しいお菓子を作った結奈に向かって拍手。
「本当に美味しいですわ」
 イングリットも雪香につられて拍手。
「へへへ、ほめられると照れちゃうよ」
 素直な褒め言葉に結奈はテレテレに。
 結奈は自分達だけが楽しむのではなく
「……よかったらどうぞ!」
 お世話になったこの店を切り盛りする迦耶達にも勧めた。
 商売が一段落しているため
「では、お言葉に甘えて」
「たべるよ」
迦耶とペイジは少し前に双子から飴玉を貰った時のように快く栗のタルトを受け取り美味しく食べた。
 この後、結奈達は迦耶が淹れた美味しいお茶と一緒にお菓子を食べてから迦耶の店を出て存分に祭りを楽しんだ。
 迦耶達は貰ったお菓子で少しばかりほっこりしてからさらに商売に精を出した。