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賑やかな秋の祭り

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賑やかな秋の祭り
賑やかな秋の祭り 賑やかな秋の祭り

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 朝。

「祭りだけあって賑やかね」
「そうですわね」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は賑やかな祭り模様を目で楽しんでいた。
「夏最後はアイドルとして過ごしたけど今日はただの女の子で過ごそう、アディ」
 そう言うさゆみはツインテールの髪をほどいてカジュアルな服に身を包んだだけの姿。 下手に凝るよりもばれぬにくいという事で。実際誰にもアイドルとはばれていない。
「えぇ、あの後は大変でしたものね。徹夜でさゆみの大学の課題を……」
 アデリーヌが夏最後で思い出したのはライブではなく忙しない夜であった。
「あの時はアディがいて本当に助かったわ。感謝!」
 さゆみは大袈裟な動作で感謝を示すと
「えぇ、本当に」
 アデリーヌはさゆみの動作にクスリとしながら言った。二人の様子からすでに終わった事という事で良い思い出といった感じのようである。
「……それはそうと今日の祭りがあの双子主催というのが何とも嫌な予感しかないんだけど」
「そうですわね。あの二人がいる所では必ずトラブルがつきまといますものね。この素敵な秋を降らせる装置も許可済みらしいですが、何も無いとは思えませんし」
 さゆみとアデリーヌは祭りの主催者が顔見知りの双子という事に危惧する顔に。
 しかし
「そうそう、何か仕込んでそうなのよね。まぁ、何か悪さしていたら問答無用でシメたらいいわ。と言っても他の人がいるだろうからその出番は無いかもだけど」
 さゆみは降り注ぐ紅葉や銀杏を手の平に受けながらこれまでの事から警戒するのは自分達だけではないと考え割と呑気に構えてたり。
「それに今のところ危害を加えられる危険性は少ない事ですし、気にしても仕方ありませんわ。それよりも今は二人の時間を大切にしましょう」
 アデリーヌもまた降り注ぐ秋に目を楽しませながら言うなり、
「まずはあそこですわ、さゆみ」
 早速、さゆみをエスコートして民族料理や秋の味覚を味わったりと賑やかに過ごした。

 食後散策する中。
「……あれ、さっきまで流れていた音楽がいつの間にか聞こえなくなったけど、これは
……アディ」
「あそこからですわ。オカリナの演奏で踊っていますわ」
 さゆみとアデリーヌはオカリナの音色の中、賑やかに踊る者を発見し、釘付けに。
 しばらくして一団は何やかんやと騒がしくしてここを離れ、人だかりも少しずつ小さくなっていた。

 オカリナの音色が遠ざかった後。
「……ねぇ、アディ、いいこと思いついた☆」
 先程の賑やかさを見たさゆみはちらりと悪戯っ子の目でアデリーヌを見た。
「……いい事?」
 アデリーヌが小首を傾げると
「そう、いい事、私達も歌って踊るの!」
 さゆみは嬉々とした様子で言う。どうやら先程見た事が悪戯心を刺激したようだ。
「……それは」
 アデリーヌが何事かを言う前に
「アイドルじゃなくって祭りに来た素人さんとして」
 さゆみの悪戯心に満ちた弾んだ声が遮り
「えっ、えぇ!?」
 さゆみの思いつきに面食らうアデリーヌの腕を取って
「ほら、行くよ、アディ」
 まだ少し残る人だかりの元に躍り出た。

 そして
「♪♪(アディ、素人っぽくだよ)」
「♪♪(分かっていますわ)」
 さゆみとアデリーヌは自分達の持ち歌をアイドルとしてのキレを封印してただのコスプレアイドル<シニフィアン・メイデン>好きとして歌い踊る。
 いくら素人を装っても人前に慣れた堂々とした様子と一般人にしてはやけに上手い歌声と振り付けに人々は
「これって<シニフィアン・メイデン>の歌じゃん。すげぇ、上手いな」
「もしかして本物か? いや、彼女達が来るって情報は無かったよな」
「でもこの二人、あの二人と何となく似ている様な……二人組の女の子だし」
 本物ではないかと疑いの目で眼前の二人組を見ていた。
 当の本物いや今日は偽物のさゆみとアデリーヌは
「♪♪(ふふ、バレるかバレないかこういうスリルも楽しいわね)」
「♪♪(疑いの目ばかりですわね……無事にただのそっくりさんで歌い終えられるか……こういうのも悪くありませんわね)」
 それぞれ客達の反応を楽しんでいた。
 そして
「……」
 さゆみとアデリーヌが歌い終わり一礼して去った後も人々は疑問符を浮かべるばかりでった。
 その様子を
「……みんな考え込んじゃって……ばれなかったね、アディ」
「そうですわね。冷や冷やしましたけど」
 物陰からこっそりと見てから
「さぁ、祭りを楽しもう、アディ」
「ですわね」
 さゆみとアデリーヌは祭りを楽しむ事に戻った。太陽が空に輝いている時だけでなく夜もまたたこ焼き屋に立ち寄ったりと楽しんだ。

 夜。
 朝から昼が駆け足のように去り夜になっていたが、
「さゆみ、花火が綺麗ですわよ」
 アデリーヌは足を止めて夜空に花火が輝くなりさゆみを促した。
「……綺麗ねぇ(アディと一緒に見ているからかどんな花火よりも綺麗に見える)」
 さゆみはアデリーヌに寄り添いながら花火を楽しんだ。花火よりも最愛の人と一緒に花火を見ている事実の方がずっとさゆみにとっては幸せであった。
 しばらく花火を楽しんだ後、アデリーヌのエスコートで知り合いの呼び声がするたこ焼き屋に行った。

 たこ焼き屋。

「祭りにはたこ焼きでありますよ!」
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)の手伝いをする葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の呼び声が高々に響く中
「たこ焼きを二つお願いしますわ。売り上げはどうですの?」
 アデリーヌが代表として注文ついでに商売の案配を訊ねたり。
「二つでありますよ……上々でありますよ」
 吹雪は注文を伝えイングラハムの補佐としててきぱきと動きながらアデリーヌとのお喋りをする。
「少々待て」
 イングラハムは多数の触手を使い器用にたこ焼きを作り始めた。
「……上々なのは蛸がたこ焼きっていうのもあるかもね」
 さゆみはイングラハムがたこ焼きを作る様を面白そうに見ていた。
 その横では
「……例の二人は来ましたか? あちこちで騒ぎを起こしているみたいですけど、遭遇しなかったので」
 アデリーヌが知り合いの吹雪に双子の事を訊ねていた。
「まだでありますよ。来た際は存分におもてなしするでありますよ」
 吹雪は作業をしながらニヤリと双子が見たから震えるだろう笑みを浮かべた。
「きっと喜びますわね」
 アデリーヌも口元をゆるめるばかり。
 ともかく、さゆみが見守る中、あっという間にたこ焼きは出来上がり
「注文の品だ。大丈夫だ触手など入れて無いから安心しろ」
 渡しながら一言。
「えぇ、美味しく食べるね」
 さゆみはカラカラと笑いながら二人分のたこ焼きを貰ってアデリーヌと共に店を離れた。

 たこ焼き購入後。
「美味しいね、アディ」
「そうですわね。何よりこうしてさゆみと一緒にのんびりと過ごせる事が嬉しいですわ」
 たこ焼きを食べながらさゆみとアデリーヌはのんびりと通りを歩いていた。
「……アイドルをしている時も一緒だけどファンのためって言うのがあるから……やっぱり、こうして誰のためでもなく私とアディだけの時間になると……」
 そう言うなりさゆみはそろりとアデリーヌの腕に自分の腕を絡ませた。コスプレアイドルデュオ<シニフィアン・メイデン>として活動するのはとても楽しいけれど愛する人と過ごす時間はもっと楽しい。
「……幸せですわね」
 同じ気持ちのアデリーヌが言葉を続けた。
 幸せな二人は腕を組みながら賑やかな祭りの中を歩いた。