リアクション
悪夢の先に待っていたのも、また悪夢――
その夢の中で、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は静かに滅びようとしていた。
自分自身の魔力に飲み込まれて。
しかし、それでもエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)はグラキエスに微笑んだ。
「これで貴方は私だけのものです」
「……」
そんなエルデネストに、グラキエスは縋りつく。
見境なく自分を求め、執着し、そして苦しめた相手。
しかし今、グラキエスはそんなエルデネストの存在を必要としていた。
それは、『求める』という行為。
エルデネストがグラキエスに教えた唯一の、そして最大の行為。
どこか戸惑いながら、グラキエスはエルデネストに手を伸ばした。
「グラキエス様……」
そんなグラキエスに、エルデネストもまた戸惑っていた。
これは、エルデネストがグラキエスに与えた悪夢だった。
半分は冗談で、そして半分本心で。
ほんの少し困らせてやろうと、いつもの悪ふざけのつもりだった。
それなのに――
(まさか、こんな所でデレを見せてくださるとは……貴方は本当に私を愉しませてくださいます)
「では、夢の続きといきましょうか」
ばさりと腕を振ると、2人は別の夢の世界へと移動する。
エルデネストは彼を試すかのように、囁いた。
「グラキエス様、貴方の望みをお聞かせください」
この世界は、グラキエスの為の世界。
彼が望むことを、全て叶えてくれる。
グラキエスは、素直な言葉を口にする。
「……エルデネスト、あなたの夢を見た。暗い、何も見えない、何も感じない世界のはずがあなただけは分かった。……あなたはどこまでも俺の側に居ると分かったらどうでもよくなった」
心からの本心を告げる。
「エルデネスト、俺もあなたから離れたくない」
先程覚えたばかりの行為を、もう一度繰り返す。
『求める』という行為。
彼の名を呼び、手を伸ばす――