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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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chapter.16 おっしゃれおしゃーれ♪……6 


 そもそも何故人はお洒落をするのであろうか?
 ただ寒さを凌ぎたいのであれば、何を身に着けてもよかろう。
 だが、人は可愛く、格好よく、綺麗に……美しくありたいと願うもの。
 だからこそ、人は自分を着飾るのだ。
 そして、人は自分を着飾ることで、自分というものを他者に示しておる。
 言わば、お洒落とは、美の追求するための道であり、己が個性を表現するための手段なのだ。
 ……だが、果たして、本当に人は着飾らなければ可愛くなれないのであろうか?
 格好よく、綺麗にはなれないものなのであろうか?
 ……答えは、否だ。
 人が歩んできた美の歴史を振り返るがよい。
 ミロのヴィーナスやミケランジェロのダビデ像のように、美しいものは『そのまま』でも美しい。
 いや、『そのまま』であるからこそ、美しいのだ。
 何よりも、己が全てを曝け出すこと以上に、自分というものを表現する手段が他にあるであろうか?
「つまり、究極のお洒落とは、『そのまま』であることに他ならぬ!!」
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は結論を出すと緋桜 ケイ(ひおう・けい)の服をむしりとった。
「……って、な、何をするだー!」
「許せ……これもあやつを倒し、無事にブライドオブシリーズを台座におさめるためよ」
「む、むりむり! むりだから!」
「男のくせにだらしのない奴だ。仕方がない。せめてこの薄布を纏うことだけは許してやる」
「許してやるっていうか、これがなかったらこの蒼フロが全年齢対象じゃなくなっちゃうだろが!」
 素っ裸のケイは涙ぐみながら薄布で大事なところを隠す。
「ほほう、ヴィーナスやダビデ像には及ばぬが、おぬしもなかなかに美しいな」
「あ、あんまり見ないでくれ……」
 けれどなんだろう。皆の視線に晒されて沸き起こるこの感情は……。
「ち、違うぞ、俺は変態じゃない!」
「?」
 なんだか癖になりそうなのをケイは必死で気のせいと自分に言い聞かせる。
「その心意気やよしッ!」
 教導団の弁髪ダリ髭の美女マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)は言った。
「ニルヴァーナへの道を開けねばパラミタも地球も全てが終わる。そのような時に小賢しい守りは不要ッ!」
 彼女が「憤ッ」と力むと服がバリバリッとふっ飛んだ。
 勝利のためには、積み上げた輝かしい実績(自称)や社会的地位も投げ打ち、命をかける必要がある。
 あらわになった鍛え抜かれた身体にタオルを一枚纏う。
「身を覆うもの全てを投げ捨てた……これがノーガード戦法『馬鹿には見えない服』であります!」
「いや、今完全に服を破り捨てたでしょうが!」
 道満も突っ込む。
「蘆屋道満……」
「な、なによ?」
「あなたが戦場には不向きな瀟洒華美を追求する理由は、生い立ちの特異性が人格形成に影響した結果でありますな?」
「勝手に決めつけないでよ!」
「いや、何も言わなくても結構! あなたに必要なものは愛、そして絆ッ! ワテにはわかってるであります!」
 目をきらきら輝かせる。
「さあ、このべんぱつがやさしくしてやるであります。ふふりふふり」
「き、気持ち悪いわねっ! あたしは髭が生えてても女には興味はないわよっ!」
「大丈夫だよ。道満くんの気持ち悪いところもカナリーちゃんがセフセフにしてあげるから」
 マリーの相棒、カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)は言った。
「神秘の現象ッどっどっどーん! は煙幕と妖精『ピー』で隠してあげるから蒼フロ的にも安心だよねっ」
そのピーは自主規制のピーじゃないでしょ!
「ふむ……」
 緊張感はどこへやら、わいわい騒ぐカナリーと道満を、とある人物は複雑な思いで見つめていた。
 英霊蘆屋 道満(あしや・どうまん)である。
「60代目蘆屋道満か……。1代あたり8、90年の長寿を続けるとだいたい五千年になる。この数字はシャンバラ古王国、あるいは地球とパラミタが繋がっていた時と合致する。地球で没した者はナラカへ落ち150年の時を経てパラミタへ蘇るというが、我が没したのは奈良時代。彼らのほうが先だ。まさか地球の陰陽道の始祖は彼らだったというのか?」
「はぁ? 何言ってんの、このヒゲ親父」
 道満……あ、えっと道満(60)のほうが言った。
「葦原に安倍も蘆屋の一族もないわよ。あたしも晴明坊やも地球出身に決まってるじゃない」
「なんと。そうであったか」
「というか、1代あたり8、90年って、生まれた瞬間に代替わりするとか意味わかんないわよ!」
「……ちょっと待て。と言うことは、おまえはオレの子孫なのか!?」
「あんたが初代ってんならそうなるけど……えー、でもあんたが初代ぃ? 思いのほかイケてないんですけどぉ〜」
「オレもいろいろ残念だよ……」