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リアクション
どうも、完全でないような気がする。
到着早々、村雲 庚(むらくも・かのえ)が我が身に感じたことだ。
まさかこの、荒廃しきった東京の光景に士気を削がれたわけではあるまい。パラミタを守るために石原を守るという、与えられた目標がどうにも漠然としすぎていて気が乗らないのも理由ではないと思う。
二時間ほど前に1946年(ここ)到着した庚だったが、まだ魂の一部を2022年に残してきているような気がしていた。いわゆるタイムワープ酔いの可能性もあった。頭痛は消えたが寒気がする。悪質の夏風邪でも引いたかのように、体の調子がすぐれない。
「……」
試しに路傍の石を拾い、握ってみた。石は、ひびの一つすら入らなかった。
この石が『見た目はただの石ですが、実はダイヤモンドの原石でした』というのなら話は別だが、おそらく、自分の力が足りないのだろう。
転移の影響か、庚の力は明らかに本来を下回っているのだ。
「さて、どうすっかなぁ……」
空を見上げた。やけに青い空を。
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