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第15章 遊ぼう!

「久々の休みだ! 遊ぶぞーーーーー!!」
 周りの目を気にせず、大声を上げたのは蒼空学園の校長である山葉 涼司(やまは・りょうじ)だった。
 まだ復帰はしていないものの、御神楽環菜が蘇ったことで、多少涼司の精神的負担が減った。
「よし、とことことん付き合ってあげるわ!」
 涼司に誘われて空京に訪れたルカルカ・ルー(るかるか・るー)も、大きな声をあげた。
 ルカルカは男物のカジュアルな服装に、スニーカーといった軽装だった。涼司も似たような服装をしている。
「山葉は有名人だからな。一応これを」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が涼司、そして集った皆に薄い色のサングラスを渡す。
「さんきゅ」
「プチ変装ね」
 涼司とルカルカはサングラスをかけたあと、互いの顔を見て違和感に笑みを浮かべる。
「それじゃ行くわよ」
 ベシンと、ルカルカが涼司の背を叩た。
「うごっ」
 叩かれた涼司がよろめいて、膝を地につく。
「おっまえ、ホント怪力だな。おーいてっ」
「なにおー!? わざと転んだくせに」
 ルカルカは涼司の腕を強引に引っ張って起こし、笑いあった。
「涼司様、楽しそうです」
 涼司についてきた、花音・アームルート(かのん・あーむるーと)も嬉しそうだった。
 ルカルカは、涼司の『友人』であり、仲間だと花音は認識しているから。
「で、どこ行く?」
「まずは、バッティングセンターだ! ホームランを打って打って打ちまくってやるぜ!」
「おー! 負けないわよ」
「……」
 スポーツセンターに突撃していく2人を見ながら、サポートについてきたダリルは少し不安になる。
 この2人を暴れさせても、大丈夫なのだろうかと。
「打って、撃って、討ちまくって下さい。涼司様の邪魔をする者は、あたしが排除します!」
 そんなことを言いながらついていく花音の存在にも、不安を覚える……。

 バッティングセンターで、2人は競い合って打ちまくり、時には妨害しあったり、悪戯したりと楽しく過ごした。
 花音はそんな2人の様子をにこにこ眺めているだけで、ダリルの方は……花音に苦手意識を感じているため、少し離れて皆を見守っていた。
「あそうそう、目的を忘れるとことだった」
 散々はしゃいだ後、汗を拭きながら涼司がルカルカに話しかける。
「ん?」
 ルカルカがスポーツドリンクを飲みながら、目だけを涼司に向けた。
「バレンタインにさ、環菜に何かプレゼントしようと思ってな。けど、何がいいかわかんねーんだよな」
「そうねぇ……」
 環菜の姿と性格を思い浮かべながら、ルカルカはこう提案してみる。
「実用性のある物がいいんじゃないかしら? 品質も良いものじゃないと、使ってもらえなそうよね」
「実用性……。ノートとかか」
 その言葉を聞いたルカルカは、涼司の肩をぽんと叩いた。
「涼司……あなた、モテないでしょ」
「!!!!?」
「万年筆が無難かもな」
 ダリルの言葉に、ルカルカは首を縦に振る。
「そうね、万年筆でサインをする様子、目に浮かぶしねー」
「じゃーそれにするぜー……」
「涼司様は最高の御方です! もてないなんてこと、ありませんから」
 ふて腐れ気味な涼司を花音がフォローする。
 ルカルカは笑みを浮かべながら「冗談冗談。涼司、いい男よー」と言って、涼司の後頭部をぺしぺし叩いた。
「でも、ちょっと可愛い物もつけようね。オデコちゃんもおにゃのこだし? おにゃのこは繊細なのよ。彼女が出来たら気をつけないとね」
 そんな風に涼司にアドバイスするルカルカをじっと見て、ダリルは吐息をつく。
「繊細じゃないのも居るがな」
「なによぅ。ルカが良いって言ってくれる彼ちゃんと居るもん」
 直ぐに自分のことを言っているのだと気づき、ルカルカはぷぅと膨れる。
「ははは……っ」
 そんなルカルカの姿に、涼司の顔が笑い顔に変わった。

 百貨店で環菜へのプレゼントを購入した後、街を展望できる最上階のレストランで食事をとって。
 それから、若者達でにぎわう街へと出た。
「お……?」
 4人の前に、突如高級車が止まる。
「遊び足りたいとは思うが、そろそろ休み時間は終わりのようだからな」
 それは、ダリルが手配しておいた蒼空学園の校長車だ。
「あー、サンキュ。お前、いい秘書になれそうだな。ルカには到底無理だけど」
「何よぉ〜!」
 ルカルカが反発して拳を振り上げる。
「冗談冗談、さっきのお返し」
 そう言って涼司は笑い、手を振りあげた。
 パン
 と、ルカルカと涼司は手を打ち合う。
「じゃ、またな!」
 涼司はサングラスをとって、ダリルに返す。
「うん、今日は楽しかった。誘ってくれてありがとね。今度はルカの用事に付き合ってもらうかも。……涼司がもう少し暇になったらね」
 にっこりルカルカは涼司に微笑みかけて「いつもお疲れ様」と言葉を添えた。
 それから花音にも「またね」と言う。
「ありがと。お前も無理すんなよ!」
「またよろしくお願いします」
 そう言い、涼司と花音は一緒に車に乗り込んだ。
 ルカルカは車が完全に見えなくなるまで、手を振りながら見送っていた。