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種もみ剣士最強伝説!

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種もみ剣士最強伝説!
種もみ剣士最強伝説! 種もみ剣士最強伝説!

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「安心しろ、あんたはまだ一人ではない」
 みすみの横に体格の良いドラゴニュートが並ぶ。
 荒野を歩いていた時には見かけなかった顔だ。
 それもそのはずで、彼──ホー・アー(ほー・あー)は、偽龍翼で空から塔を目指していたのだ。
 ホーと共に、各地で農業神と崇められている救世主達が、みすみを守るように立つ。
 大助はだいぶ疲労を感じていたが、気は抜かずに身構えた。
 妙な威圧感に、まずは相手の出方を見ることにした。
 しかし、ホーもイーグルフェイクを構えたまま、大助を睨み据えて微動だにしなかった。
「さあ、来るがいい! オレは逃げも隠れもしない!」
「それなら……」
 このままでいても仕方ない、と大助は様子見程度に仕掛けた。
 数度の攻防で大助は違和感を覚える。
 ──手を抜いているのだろうか。
 与えられる威圧感と格闘技術がちぐはぐだ。
 けれど、ホーの強気は変わらずで。
「こんな程度で倒されはしないぞ!」
 殴られながらも堂々と言い放つ。
「何だかわかんないけど、いくぞ!」
 たとえ自分がここで倒れても、仲間達がきっと何とかしてくれると信じて、大助は全力を出した。
 渾身の力を込めた大助の拳を、こちらも全力でガードしたホーだが、攻撃は守りの壁を突き破った。
 ホーの巨体が宙に舞う。
 ひょっとしたら鋼の板のような防御に拳が壊れることも覚悟した大助だけに、その呆気なさにややこけてしまった。
「フッ……あんた強いな」
 リングに身を打ち付けたホーはやたら爽やかな笑顔を見せると、残りの命は倒れた仲間のために使った。
「まさか、これが目的か!?」
 むくりと起き上がる可憐、アリス、エリヌースに、大助は頭痛を覚えずにはいられなかった。
 本当はホーは見かけだけ強そうなのだが、そんなことわかるはずもなく。
 大助がホーに問い質そうとした時には、彼は救世主によって遠くへ運ばれていた。
「おいおい、まいったなこりゃ」
 不意に近くで聞こえたのはラルクの声。
 混戦は一時終わったらしい。
 ラルク達が大助に合流するように移動したというのもあるし、種もみ剣士達がみすみとの合流を望んだのもある。
「さて、どう攻めましょうか」
「いっぺんに全員を叩き伏せる手があればいいな」
「あはは、夢のような手だね」
 リュース、エヴァルトと続き、最後に大助が明るく笑う。
 かなりくたびれていたが、種もみ剣士達はもっとくたびれていた。
 ふと気づけば、ゲドーとシメオンがいない。
 どこへ、と辺りを見回すと、二人は菊に連れ出され静かな説教を受けていた。
 そろそろ見逃すこともできなくなったようだ。この時はダリルとヒロユキも困ったような笑みを浮かべて何も言えなかった。
 いればけっこう頼りになったのに、と大助はやや残念に思った。
 それはそうと、種もみ剣士に対する妙案も特に浮かばず、エヴァルトの言うように一度に全員を倒さないと苗床ループに陥り、根気負けしてしまうという未来は見えた。
 速さを武器にいくしかない、と彼らは気を引き締める。
 そんな彼らの前に、比較的元気が残っている平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)が進み出た。
「そろそろ決着をつけないとね……みんな、力を貸してくれ!」
 彼がそう呼びかければ、五人の救世主が待ってましたと現れる。
 それぞれ違う色のスカーフを巻いた、まるで戦隊モノか何かのよう。
 レオは彼らを紹介した。
「何でも気合で解決する熱血農家! 救世主レッド!」
「俺のこの手が唸って耕すぜ!」
 紹介通り、やる気満々の表情でポーズを決めるレッド。
「クールな容姿に熱いハート! 救世主ブルー!」
「私の計算によればこの戦い、勝率100%です」
 涼しい表情でグラップラー達へ会釈をするブルー。
「実った穀物は俺のもの! 救世主イエロー!」
「僕、10辛食ってきたから元気っス!」
 その手にはまだ何か食べ物を持っているイエロー。
「植物の声が聞こえる心優しき少女! 救世主ピンク!」
「種もみにだって命はあるの!」
 手に種もみ袋を抱えているピンク。
「素直になれないテレ屋さん! 救世主ブラック!」
「罪深き子羊達よ、我が前に跪くがいい」
 意訳:みんな、正々堂々がんばろう、なブラック。
 五人はみすみを守るように展開する。
 おもしれえ、と笑うラルク。
「手応えのあるほうが、やりがいあるってもんだ」
「まずは、元気な彼らからいきますか」
 リュースの提案に、エヴァルトも大助もレオと救世主戦隊に向き直る。
「一人当たり1と4分の1人だ。いくぜ!」
 何だか無茶を言い、ラルクが真っ先に飛び出す。
 対したのはレッド。
「この種もみに誓って通さねえ!」
「押し通る!」
 救世主達は奮戦したが、ここが正念場と腹を括ったグラップラーには敵わなかった。
 悔しさに顔を歪めながらリングに沈む彼らを、ラルク達は静かに見下ろす。
 経過をじっと見つめていたレオは、ピンクの周りに散らばった種もみを一粒掬う。
 サイコメトリを使えば、収穫した荒野の住民の想いが流れ込んできた。
 レオの中で何かが弾ける。
「次に繋げたいという願い……! 僕達は、種もみの成長を見守り続けることにより、発芽の瞬間を見逃さない予知能力【行動予測】を手に入れた!」
 クワッと目を見開き、常とは別人のようになったレオが勇ましく立ち上がる。
 救世主戦隊が倒されたことで、未知の何かが目覚めたようだ。
 レプリカディッグルビーを握り締め、ラルクへと駆ける。
「雷速の刈り取りを見切れるかッ!」
 稲を刈る動作のように鎌で斬りつける。
 初撃はかわしたが、その位置を読んだように二撃目はラルクを捉えた。
 救世主戦隊を倒した時点で他の種もみ剣士を囲むように移動していたエヴァルトへ、呪うような視線を投げる。
「踏みにじられた種もみの怨嗟を受けるがいい!」
「言いがかりだ!」
 エヴァルトはすかさず反論したが、直後には周りは地獄のようなものに変わっていた。幻を見せられている。
 レオはレプリカディッグルビーでリュースと大助を牽制し、叫んだ。
「ぶっちゃけ! 僕らは救世主がいなくてもけっこう強いッ!」
「それを言っちゃあ元も子もないよ」
 呆れた笑いをこぼしながら、レオの横に立つみすみ。
 けれど、レオの気迫は疲れた種もみ剣士達の心に力を与えた。
「よぅし、全員でいくよー!」
「来るならこいよ!」
 大助が応じ、傷ついたラルクも、幻覚からさめたエヴァルトも呼吸を整える。
 バーストダッシュでもっとも密集しているところへ突っ込み、リュースが等活地獄を放ったことで睨み合いは崩れた。
 ラルクとエヴァルトは鳳凰の拳で一人ずつ仕留めるが、後から後から救世主がしがみつき、種もみ剣士が突き込んでくる。
 リュースと大助は等活地獄で数人を一まとめに吹き飛ばすが、そうして周りがあくと間を置くことなく次が押し寄せた。
 どちらも回復に手を割く時間はなく、また回復させてもすぐに傷だらけになった。
 種もみ剣士もグラップラーも、一人二人と立ち上がれなくなり、とうとうラルクとみすみを始めとするわずかな種もみ剣士だけになった時、レオが掠れる声でみすみの背を押した。
「さあ、略奪され続けた歴史に終止符を打つんだ、萌──いや、みすみッ!」
「だから、俺達は略奪はしてねえって……」
「えいっ」
「あっ……」
 思わずラルクがレオへ言い返した時、駆け寄ったみすみが剣の平でラルクを叩いた。
 奪われ続けたみすみに傷つけることはできなかったようだ。
 ラルクは頭を抱えてがっくりとうなだれた。
 何とも闘争心を萎えさせる攻撃だった。
 ふ、とみすみは視線を落とし、儚く笑む。
「これで、今日の分はチャラにしてあげるよ」
「……あのなぁ」
 すっかりレオの発言に流されてしまったみすみの台詞に、ラルクだけでなくリュースもエヴァルトも大助も、体から力が抜けて行くのを感じた。


 種もみ剣士の優勝が宣言されると、救護班に両クラスの選手達が治療を受けた。
 そんな中、彼らの中から誰からともなく歌が生まれる。
 ただ今好評発売中の『千の種になって』だ。

♪私の卒塔婆の上に蒔かないでください
 ここに私はいません
 肥料になんてなりません
 千のタネに
 千のタネになって
 あの荒野のすべてに
 バラ蒔かれています♪

 歌の輪はしだいに広がり、治療の終わった種もみ剣士達全員での合唱になっていく。
 歌には自信がないと言っていた久や明子も加わっている。

♪秋には御米になって
 袋に詰められる
 冬には略奪されて
 モヒカンに食べられる
 春は苗になって
 兜につけられる
 夏には稲穂になって
 またもや奪われる

 私の卒塔婆の上に蒔かないでください
 そこに私はいません
 眠ってなんかいません
 千のタネに
 千のタネになって
 この大地すべてに
 いきわたっています

 秋には御米になって
 田んぼにふりそそぐ
 冬はダイヤのように
 きらめくタネになる
 春は苗になって
 若葉を目覚めさせる
 夏は稲穂になって
 こうべをたれる♪

 歌詞は繰り返され、観客の中にも歌を口ずさむ者が現れていった。

 和やかに合唱が続く中、三人の審判は表彰式の準備を進めていた。
「どうなることかと思ったけど、俺が特に何かする必要はなかったな」
 ヒロユキがついこぼした台詞に、菊は敏感に反応する。
「何かするって……やっぱり!」
「あ、やべ……」
「まったく。まあ、終わったことだからいいけどさ」
 菊の呆れの視線にも悪びれた様子もなくヘラリと笑うヒロユキ。
 続いて菊の視線はダリルへと向く。
「まさかおまえもってことはないよな?」
「さあ……」
「おい!」
「うん、よく撮れてるな。みすみのインタビューも」
 すべての試合を撮影したダリルは、後でこれを編集してテレビ局へ売り込むつもりだ。
 そして、その収益金はここ最近の戦乱による被災者への義援金として寄付すると決めている。
『今日奪われても、明日はきっと何かが生まれるよ』
 ダリルがみすみへ優勝への感想を聞いた時の答えだった。

 準備も整い、いよいよ表彰式となった時。
 急に周りに不穏な気配が満ちてきた。
 耳をすませば、聞こえてくるのは大気を揺るがすほどの排気音と、ヒャッハーの声。
 これから起こることに真っ先に気づいたのは、さすがというかパラ実生の菊だった。
「まずいっ。何で気づかなかったんだ。こんなにたくさんの種もみ剣士がいたら、モヒカンが集まってくるのは当たり前じゃんか! 種もみじいさんもいるし……。式は残念だけど、おまえら撤収だ!」
 早口にまくし立てるが、わずかに遅かった。
 周りはすっかり奪う気満々のモヒカンに囲まれてしまった。
「こうなったらしょうがないよ。タネになるまで戦うよ!」
 みすみの一言で対モヒカン戦の火蓋が切られた。

担当マスターより

▼担当マスター

冷泉みのり

▼マスターコメント

 いつもお世話になっております。
 リアクション公開が遅れに遅れて申し訳ありません。
 『種もみ剣士最強伝説!』をお届けいたします。

 全てのクラスがトーナメントに参加したわけではありませんが、いつの間にかこれほど多くのクラスができていたことと、種もみ剣士の人数の多さに驚きました。
 当分はお目にかかれないかなと思うのですが、どうでしょう?
 また、各クラスの特性を生かしたアクションに、何度も唸らせられました。

 御開帳も写真が増えました。ありがとうございます。

 優勝した種もみ剣士の皆さん、準優勝のグラップラーの皆さん、セクシー写真を貼った(貼られた)皆さんに称号をお送りしました。ご確認ください。

 それでは、ご参加いただきありがとうございました。