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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

リアクション

「んっ…………なにぃいいいいいー!!!!!」
 空を見上げてカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)が叫んだ。
「ぬぉおあぉおあおーーー!!!」
 天井やガレキが降ってきた。そのどれもが巨大で重い塊だった。
「ぬぁっ……はぁ……はぁ……」
 全力で駆け逃げて、息が切れた。
 焦りすぎた、いや誰だって焦るでしょ! だって突然に序章も無しに―――
「動くなんて聞いてねぇぞ……」
 ザナドゥの巨機兵が動き出したのだから。
「よしっ!」
「えぇえっ?!! ちょっ!!!」
 カセイノは慌ててリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)の腕を掴んで止めた。
「『よしっ!』じゃねぇよ! 急に走り出すなよ! ってか、どこに行く?!!」
「あれを止めます」
「止めるって」
「オレたちも行こう」
 椿 椎名(つばき・しいな)の声にカセイノだけでなく、パートナーのソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)も「えぇっ!!」と叫び跳ねた。
「あれと戦うの?!! 椎名、あれと戦うの?!!」
「あぁ戦う。このままじゃ集落が潰れちまうからな」
 イコンはゆっくりと大きな歩幅で歩きだしている。このまま進めば職人たちの工房も家屋もみんな踏みつぶされてしまう。
「アー君も? アーちゃんも行くの?」
 言われたアー君アドラー・アウィス(あどらー・あうぃす))とアーちゃん椿 アイン(つばき・あいん))は順に、
「椎名が行くなら、俺も行く」
「アドラーが行くなら私は止める」
「なんですと?!!」
「冗談です。私も椎名と共に戦います」
「…………弄ばれた」
 アドラーは一人、俯いたが、
「ぅ〜ん、じゃあボクも行くっ!!」
「決まりだな」
 ソーマも意を決して空を見上げた。俯くアドラーだけを残して3人とリリィカセイノも続いて駆けだした。
 残されたのはアドラーただ一人。
「……出遅れたわけではありませんよ」
 辺りを見回して、屋根に登れる建物を探した。皆は正面に回り込むようだが、アドラーが狙うのはイコンの脚部、後方から飛びついて膝裏を叩き斬る……斬れたら良いなぁと思っていた。
(それにしても、なぜ突然……)
 職人たちの話ではあのイコンは調整中だったはず。それはつまり『動かせない事もないが安全性は保証できない』ことを意味しているわけで。職人なら尚更そんな状態のイコンを動かそうなんて思うことすらしないはずだ。
 それなのに『イコン』は動き出した―――
「ふふふ」
 その答えを持つ者、いや、それを仕掛けた張本人が笑みを浮かべた。
「私が動かせれば良かったのですが。まぁ、ここは彼らに任せましょう」
 ザナドゥに忠誠を誓った女、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が軍兵をけしかけて『イコン』を起動させたのだった。
 調整中だが動かせないわけではない、地上軍に集落を蹂躙される位ならパイモン様の為にも起動させるべきでは? と彼らに説いたのだ。
 『操縦訓練は受けていない』と軍兵たちは言ったが、まぁ、その方が見応えがある。
「さぁ、楽しませて頂きますよ」
 綾瀬も見つめるその先で、リリィがイコンへ『バニッシュ』を放った。
「っ……ダメですか」
 今度はもっと強力な一撃を。リリィは瞳を僅かに閉じて気を落ち着けた。
「狙いは右膝、側面部」
 アインは『スナイパーライフル』で狙いを定める。足場はリリィとは向かいの建物、その屋上。そこには椎名ソーマも居たが、うちに椎名が助走をつけて大きくイコンに跳びついた。
「おぉおおおおおおお!!!!」
「ふうっ!!」
 同じ時に別棟からアドラーも跳び出した。予告の通り、『グレートソード』で膝裏を斬りつける。
 椎名は『龍骨の剣』で膝頭を、アインは狙撃でこれに続いた。
「なっ!!」
 3人で膝に集中砲火を喰らわせたからか、イコンはグラリと右に大きく体勢を崩した―――
「リリィ!!」
「えっ―――――――――」
 カセイノの叫びは届けど願いは届かず。
 体勢を崩して傾いた巨機兵は、その重心移動を逆手にとって、その巨拳を強く打ち落としていた。
「リリィイイイイイイイイーーーーーー!!」
 椎名たちをフォローするべく、持てる力の全てを振り絞って『バニッシュ』を放っていた。その頭上に、彼女の頭上に―――運命かイタズラか、はたまた試練か―――
 リリィの頭上に『イコン』の拳撃が打ち落とされた。
「リリィ! リリィ!! リリィリリィリリィ!!!」
「そんな……」
 打ち落とした拳を支えに、一度傾いた『イコン』の巨体はどうにか制止した。と今度は左の腕がブラリと動きだし―――
「椎名っ!!」
 椎名がこれに巻き込まれた。建物の屋根をすくい壊すように振り迫った巨拳が、彼の体を弾き飛ばした。
「うわああああああああ!!!!」
 これまで後方で彼を守っていたソーマが発狂して飛び出した。
「あああっ!!ああっ!!!ああああああああっ!!!!」
 瞳を剥いて剣を打ち振り続けた。ソーマは完全に我を忘れていた。
「椎名っ! 椎名ぁ!!」
 いち早くアドラーが駆け寄った。
 吹き飛ばされた椎名は、30m離れた魔鎧職人の工房で見つかった。壁に叩きつけられてようやく制止したようだが、大破した『緑竜の鎧』がその衝撃と彼が受けたダメージの大きさを物語っていた。
「ぅ…………」
「椎名っ?!!」
 奇跡的に意識が戻った。しかし―――
「アナタは……」
「あなた?」
「誰、です? アナタ」
 頭に受けたダメージが原因だろうか。椎名は記憶を失っていた。




 素人操縦で動き出したザナドゥのイコン。そしてその一撃を受けて記憶を失った椎名、巨拳の一撃で圧死したリリィ
 同じ集落内では職人たちに捕らえられ幽閉された生徒が多数。またジバルラ紫銀の魔鎧を装着した直後から、どうにも意識が揺れていた。
 そして集落の外ではマルドゥーク魔神 パイモン(まじん・ぱいもん)が対峙している。

 ペオルの集落を舞台とした物語と戦局は、今まさに、激しく強く動きだしたのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。

 「【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)」如何だったでしょうか。
 お楽しみ頂けたなら幸いです。

 さて、役者は揃ってしまいましたね。
 第2回は激戦激変激笑必死な予感がします。いえ、そう思い込みます。そうであれ。

 そろそろ内容補足に触れましょう。
 まず、称号についてです。
 今回は【ザナドゥ魔戦記】シリーズとして初めて『参加制限』を設けさせて頂きました。
 多くのお客様にご参加いただけるよう、運営とマスター陣が熟考した結果であります。
 引き続き、ご理解とご協力を頂けたらと思っております。
 さて、称号についてです。
 上記した『参加制限』というルールを利用しまして、今回のシナリオ終了時点において
 ・魔鎧職人に幽閉された方
 ・妖しげな気配の正体を探っていた方
 にはそれぞれ称号を付与しております。
 次回参加時にそれらの称号を設定されますと、終了時点の状況・状態からスタートする事ができます。
 もちろんそれ以外の方もお好きな場所からスタートする事が出来ますが、上記の『妖しげな気配の正体を探っていた方』はボーナス設定を付けるか否かの選択が可能になる予定です。

 第2回のシナリオガイドは日程調整の後、出来るだけ早くに公開したいと思っております。
 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。