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5)ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)

ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、
自分も通っている百合園女学院の校長である、
桜井 静香(さくらい・しずか)への質問や回答を見て、
また、出演者メンバーの顔ぶれを見て、考えた。
(ん〜。
面白おかしい回答はみんなするだろうし、
あたしはちょっと違う方で回答してみようかな?)
そうすることで、逆に注目されれば、と思ったのだ。

「こんにちは、ようこそいらっしゃいました」
「はじめまして、トッドさん」
いつも元気いっぱいなミルディアも、
裕福な家庭出身のれっきとしたお嬢様である。
礼儀正しく、きちんと挨拶をする。

「ミルディアさんは、
いつも鎧姿で走り回っているそうですけれど、
いままでの冒険のエピソードで印象的な事などありますかしら」
「うーん、そうだなあ」
ミルディアは、紅茶のカップを置いて、ちょっと考えてから答えた。
「ん〜 鎧だからって特に重いとか感じたことはないなぁ……
これってやっぱ、契約者だからってこともあるかな?」
「まあ、やっぱり、超人的な身体能力を得ることができるからなのね」
「いやいや、それほどでもないよ」
ミルディアは少し照れたように笑った。
「では、エピソードについても伺えます?」
「今までのエピソードで印象的な事、かぁ……」
ミルディアの顔が、ふと、悲しげになった。
「もう2年も前のことなんだけど、
『怪盗舞士』に関する一連の事件でのこと、かなぁ……。
面白いとかとはちょっと違うけど、まだ引きずってるんだよね……。
シャンバラに来て最初にあった辛い出来事だったから……かな?」
ミルディアは、
友人の大切な人を守りきれなかったことを悔やんでいると伝えた。
「いつもは面白おかしい日常を〜って
意識して生活してるけど、泣きたいこととか辛いことって、
心に残っちゃうんだよね……」
「ええ。
わたくし達の知らない、多くの危険な事件も、
契約者の皆様は立ち向かってらっしゃるのよね」
うなずくトッドさんに、ミルディアは笑顔を向けた。
「ま、それも ちゃんと住み分けできたから大丈夫!
心に残しても閉じ込めてれば何てこと無いんだよ?」
その明るい笑顔は、強い決意の表れでもあった。
「あ、たまには思い出して泣くのも必要だけどね。
ずっと底に残してると、ホントもやもやしちゃって、たまんないよ」
「ええ、ミルディアさんも、契約者であると同時に、
普通の女の子ですものね」
ミルディアは、等身大の契約者の姿を、
自分の言葉でもって表現したのだった。

ミルディアを心配して、百合園に入学させた父も、
成長した立派な娘の姿を見てくれていることだろう。