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リアクション
■ 結婚報告 ■
「よ、久しぶりだな」
ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が顔を出して挨拶すると、アーロン・クローディスはちょっと目を見開いた後、破顔した。
「よぉラルク、元気そうじゃねぇか」
アーロンはラルクの母親側の叔父で、ラルクにとっては今や唯一の親戚だ。
昔はまぁ、ラルクは大人を怨んだりもしたし、懐疑的な眼差しも向けたこともある。
けれど家族を持ってはじめて分かった。
助けなかったんじゃなく、助けられなかったんだ――と。
強盗が出たらまずは自分の家族を最優先にするのは当たり前だ。
孤独だったラルクは、そのことに気づけなかった。
けれど、今は違う。
掛け替えの無い家族を持った。
死んだ母親にも会って、色々と話すことも出来た。
1年前の自分とは全く違っていると思う。
「ま、おかげさんでな」
ラルクはアーロンに笑顔で答える。心にゆとりができた今だからこそ、出来る笑顔で。
「帰るなら帰るで連絡ぐらいして来いよ。いきなり帰ってくるもんだから、なんの準備もしてねえぞ」
「だと思って、土産を持参してきた」
ラルクはパラミタの酒を出すと、それをアーロンと酌み交わしてしばらくぶりの再会を祝った。
酒が入れば口も回るようになる。
「なんつーか、相変わらず独り身なのな。いい加減所帯持てって! 子孫を残さねぇと!」
ラルクが軽口を叩くと、アーロンはがぶりと酒をあおった。
「余計なお世話だ。俺は結婚したい時にするんだよ!」
「残念だったな。俺は去年の6月に結婚した新婚ほやほやだぜ! ま、俺の方は子孫は残せないがな」
相手は男だからとラルクが言うと、アーロンは驚いたようにラルクの顔を見直した。
「何の用事かと思えば結婚報告かよ……しかも男だと……!」
「ああ。結婚はいいぞー! まじで人生の潤いってか、奥さんまじ最高だしな! ちょっと今は病気だが、それがより守ってやりてぇって気持ちにさせるんだよなー」
思いっきりいい笑顔でラルクが言ってやると、
「なんてうらやま……」
アーロンはごほんと咳払いでその先を濁した。
「あ? 何か言ったか? アーロン」
「いや……とにかくおめでとうだ!」
今日は腕によりをかけて祝ってやると言うアーロンが何かをごまかしている気はするが……まあいいかとラルクは追及しないことにする。
家はなくなってしまったし、地球にはほとんど居場所も無いけれど、正月ぐらいは唯一の居場所でゆっくりしても良いだろう。
パートナーたちをパラミタに置いてきたのをいいことに、ラルクは地球で美味しいものを食べ、久々にだらだら過ごして羽を伸ばしたのだった。
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