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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

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「5、4、3……2……1……ハッピーニューイヤー!! 皆さーん、明けましておめでとうございまーす!」
 計画通り、年明けと同時に108階へ辿り着いた六花が言うと、参加者達やツアーコンダクター達が一斉に新年の挨拶をする。
 108階は2フロアだけのシンプルな作りである。
「海くん、明けましておめでとうございます! 今年も宜しくお願いしますね!」
「ああ、こちらこそ」
 柚は海と新年の挨拶をかわし、『パラミタ不思議発見』の放送を行っていた衿栖も、「皆さん、明けましておめでとうございまーす!」と、笑顔で視聴者に向かって呼びかける。
「さぁ。私達は紆余曲折を乗り越え、ついに最下層108階へ来ました! ここには一体何があるんでしょうかー?」
 飛翔兵がカメラを向けると、参加者にまじって神社の鈴を鳴らしパンパンッと神社に向かって拍手を打つジークフリート達がいた。
「今年こそは、我が魔王軍が宝くじでも埋蔵金でも掘り当てて、財政が潤いますよーに!」
「魔王さん……神頼みですか……」
「流石ジークさん、ご自身でどうにかならないことは人任せ! うんうん、それでこそ魔王ですよ!!」
 朱鷺とルイがそれぞれの感想を述べる。
「……えーと、どうやら魔王さんも拝みに来る神社だそうです。きっと、強力なんでしょうねー……さ、さぁ、私達も早速初詣を……」
 衿栖がフォローをする中、後ろから走ってきた鳳明が一同の前に立ち塞がる。
「ダンジョンといったらラスボス……そして、ラスボスと言えば私、琳鳳明よ!!」
「……え」
「お参りしたければ、私を倒していきなさい!!」
「鳳明ちゃん、さっき詩穂達と一緒に年越し蕎麦食べてたよね……?」
「しかも二杯もおかわりしたわよ」
 詩穂と祥子が顔を見合わせる。
「そ、それはそれ! これはこれよ!! 第一、お腹減ってたんだから仕方ないじゃない!」
「じゃ、やろうか……」
「ええ、新年早々戦える相手がいるのは良い事ですわ」
 明子とイングリットが前に進み出ると、参加者達がスッと武器を構える。
「(……う、うわぁ。どう見ても多勢に無勢)」
 鳳明がやや気後れするほど、戦力の整った『冒険屋』のツアー参加者達。
「(探索の疲れとかあるだろうけど、ちょっと本気で頑張らないと! 私も拳聖と言われる人達の末席に名を連ねてるんだ。そう簡単には倒れられないよね!)」
 鳳明が拳を構えると、参拝を終えて地上に戻ろうとするジークフリートが声をかける。
「ふむ、そちらはおまえがラスボス役か。大変だが、頑張るのだな」
「あ、ジークフリートさん! え? そっちは終わったの?」
「ああ、今から帰還する」
 ガシリと鳳明に肩を掴まれるジークフリート。
「何だ?」
「きょ……」
「ん?」
「共闘してくれない?」
「俺がか?」
「流石に、私一人でこの人数相手にするの、シンドイよぉ……それに待ってる間寂しかったんだから、本番くらいは一緒に戦ってくれる人がいたっていいよね!?」
「……バイト代、弾むのだろうか?」
「た、多分……ううん。私が卑弥呼さんに掛けあってみるよ」
 ジークフリートがパチンッと指を鳴らすと、朱鷺、ルイ、セラ、ルビーが振り返り、 魔王軍の緊急会議が招集される。
「ジークさん。何か?」
「もう1ラウンドいけるか?」
「えぇ、まぁ、やれと言われれば……ちょっと疲れてますけど」
「私は体力は有り余ってますよ!」
 朱鷺とルイに頷くジークフリート。
 そこに、彼らに【命のうねり】をかけた者がいた。ジークフリートが振り返るとセルフィーナであった。
「ジークフリート様、わたくしが【命のうねり】で体力を回復させました。存分に鳳明様とご一緒にお暴れ下さい」
「敵に塩……というつもりなのか?」
「いいえ、ダンジョンの維持管理もツアーコンダクターのお仕事です」
 セルフィーナが一礼して戻っていく。
「……何話してたの、セルフィーナちゃん?」
「詩穂様。鳳明様と並んでジークフリート様達も参戦する予定だろうです。手強いですわね」
「今、回復させてなかったか?」
 真司が尋ねるが、セルフィーナは笑って首を横に振る。
「ふはははっ!!」
 ジークフリートの高笑いが突如響く。
「年も明けたことだし、心機一転!! 再び俺達魔王軍は活動を再開する!!」
「あのぅ、私疲れたから帰りたいんですけどぉ?」
 ジークフリートのツアー参加者の一人が言うと、
「では、帰還したい者はマッパーのルビーに付いて行くのだ! 戦力低下だと? ふはははっ、新たな四天王、鳳明が加わった魔王軍に死角はないっ!!」
「いや、私、加わったつもりはないけど……」
「見せてやろう! 俺達の力を!!」
 こうして、鳳明を加えたジークフリート達『魔王軍』は、ツアー『冒険屋』、『朴念仁』、それに明子を加えたツアー参加者達との激闘に突入するのであった。

 やっと出番が来た鳳明は気合十分に【神速】で相手の間を縫うように走りぬけ、すれ違い様に拳を叩き込んでいく。
「たあぁぁぁーーーっ!!」
 殴るというより突き飛ばす鳳明の一撃に、ビリヤードの玉がはじかれるように、一般の参加者達は吹き飛んで、頭をぶつける。
 鳳明は乱戦の中、チラリとジークフリートを見やる。
「(巨大化までして、ノリノリだね。ジークフリートさん……)」
【鬼神力】で巨大化したジークフリートは、今度はちょっと力を込めて、イングリットと明子相手に戦っている。
「ふはははっ!! あイタッ! こら、そこのおまえ、ガチで殴るんじゃあない!」
「え……っと、ごめんなさい」
 イングリットが小さく詫びる。
「おお、ジークさんに手を出すヤツは私が許しませんよぉーー!」
「ルイ! おまえの相手は俺だ!」
 真司がジークフリートの援護に向かっていたルイに【ゴットスピード】で一気に接近し、『ナイフ型機晶スタンガン』で感電させる。
「うおおおぉぉ!? だけど、ちょっと快感♪」
「効いてない!?」
「魔王軍のルイが、それくらいで参るとでも思ったのですかぁぁ!!」
「真司、どいて!」
 リーラが『ドラゴニックアームズ』を使って火炎放射で攻撃するが、ルイはこれをかわすと、セラの召喚したフェニックスに掴まり、宙へと逃げる。
「逃さないよ!!」
セラの召喚したフェニックスに【歴戦の必殺術】で狙いを定めて、【サイドワインダー】で攻撃していたのは海と連携していた三月である。
 同時に放たれた二本の矢はフェニックスには当たらなかった。
「海! 何やってるんだよ、チャンスだったじゃないか!」
「三月。戦うのもいいが、オレはツアコンなんだぜ? 柚、出来るか?」
「はい、海くん」
 柚が傷ついた参加者の傷を【ヒール】で治療する。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう!」
 参加者は再び戦場へ駆けていく。
「オレが柚を守らないとな……」
「え? 海くん?」
 柚はハッと顔をあげる。
「柚が【ヒール】をかける間、だぜ? 無防備になるだろう……」
 ぶっきらぼうに言う海。
「……はい!」
 笑顔の柚の元に、また怪我をした参加者がやって来るのだった。

「たあぁぁーーーっ!!」
「ぐえああー!」
 参加者を蹴り飛ばした鳳明が周囲を見やる。
「(そういやセラさん達皆準備があるとかでどこか行ったけど……どこに?)」
「あははは! 鳳明!! 雑魚ばっかじゃなく朱里の相手してよね!!」
「くっ!?」
 朱里が梟雄剣ヴァルザドーンを振り下ろし、鳳明がかわす。
「人の事心配してる場合じゃないね……ラスボスって大変だなぁ」