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Perfect DIVA-悪神の軍団-(第3回/全3回)

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Perfect DIVA-悪神の軍団-(第3回/全3回)
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「ここはこれより国軍の管理下に入ります!」
 ルカルカは声を張って宣言した。
「すでにわれわれの派遣要請により、本隊は当遺跡に到着! 現在着々とパペットの掃討に入っています!」
「そこをどいてくれ」
 階段を上がり、スキップフロアへ着いたダリルに言う。
「……ルドラに……何するつもり?」
「プログラムの書き換えだ。もちろん。当事件の調査と管理がわれわれ国軍の任務だからな」
 ダリルはコンソールのキーに触れ、打ち込む。しかしルドラは一切反応しなかった。
 モニターは黒く、沈黙したままだ。
「ふむ」
「無駄だよ。ルドラは応じない」
 人間だって、いきなり武装して現れた見知らぬ他人にドアを開ける者はいやしない。
「だろうな」ダリルは素っ気なく肩をすくめて見せる。「まあ、十分予想の範囲内だ」
 そしておもむろに、持参したシャンバラ電機のノートパソコンにつなぎ外部起動をかけた。
 彼としては時間短縮のため、教導団のサーバーも使用したかったが、それは無理だった。遺跡は妨害電波を発信しており、いかなるものも遮断してしまっている。
 だがそれならそれでやりようがある。
「俺の脳と力を使うまでだ。
 カルキ」
「分かった」
 あらかじめダリルから指示されていたとおり、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がパワーブレスをかける。
 そしてダリルの体が光に包まれた。発動したのは電脳支配。彼が生み出した、彼だけが扱える力だ。己の気を電気信号に変えて飛ばすことにより、機械に干渉することができる。
 ダリルは今、ルドラの作りだした防御システムの迷路のなかへ下りていた。
 擬似3Dともいえるようなサイバティックな光景のなか、ダリルに理解しやすい形――モンスター――になったアタックプログラムからの攻撃を受ける。
「無駄だ」
 ダリルはどこかうつろな声でつぶやいた。まばたきをやめた青い目はモニターを映しているが見てはいない。電脳支配スキルによってルドラに接続している。
 目指すは城のなかの管理者権限。そこにあるのはドクター・アンリに違いない。その名を自分に書き換えれば、このコンピュータを支配できる。
 人工知能だろうがしょせんは数字の羅列によるプログラムでしかない。
 ――ヴンッ

「ルドラ!?」
 突然ルドラ本体の見せた反応に葵は驚き、ルドラを振り仰いだ。
 ルドラはフル稼働していた。あきらかにダリルの干渉を嫌い、彼を自分のなかから追い払おうとしている。
「やめろ!!」葵は叫んだ。「そんな力ずくで支配するような真似をしたら、「ルドラ」は壊れてしまう!! アンリは彼にとってただのオーナーじゃない!」
 そのとき。
「ウオオオオオオオオッ!」
 グラキエスがおたけびを上げ、ルドラ目掛けて跳躍した。
 彼のルドラ破壊の意思は強かった。
 ルドラは修正されたいなどと思っていない。今のまま、消滅するべきなのだ。きっと心の奥底では、彼もそれを望んでいる。
 危険を承知で突貫をかけた彼を、段上でダリルの守りについていたカルキノスが宙で羽交い絞めた。
「放せ!」
「だめだ。このコンピュータは今ダリルが攻略中だ。少なくとも中のデータを抜き取って調査が終了するまで破壊させるわけにゃいかねえ」
「そうそう。こやつの支配から松原 タケシも解いてやらなくてはならんからな」
 赤髪をポニーテールにした夏侯 淵(かこう・えん)が言う。
 その後タケシは今度の事件の主犯の1人として収監されるだろうが……まあそのときはみんなで見舞いに行ってやろう、と彼は考えていた。
「そうだね」
 とセリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)がうなずいた。
「きっと彼の今後の人生は社会との戦いにもなるね。操られていたではすまない話だけど、今はタケシくんを助けてあげないと。
 きっと彼の身の安全を、彼を教導の監視下に置く事で守る事はできるよね? ほら、所属を蒼空学園から教導団に変更して、教導団の庇護下に置けばいいんだよ。
 ねえクローラ。帰還後クローラは今度のことを上層部に報告するんでしょう? 一緒に提案できないかな?」
「考えておこう。だがまずはこちらに集中しよう。このルドラを攻略しなくては、その松原 タケシも助からん」
「うん、そうだね」
 そのとき、1階フロアの奥の暗がりで動くものがあった。
「!」
 すばやくルカルカはそちらに向き直り、魔剣ディルヴィングをかまえる。
「何者!?」
「今さら、名乗り合う間柄でもあるまい」
 ガチャリ。鋼同士の噛み合う音をたて、暗闇よりもさらに重厚な影をまとって現れたのは、魔鎧葬歌 狂骨(そうか・きょうこつ)をまとった三道 六黒(みどう・むくろ)だった。手には梟雄剣ヴァルザドーンが握られている。
「三道 六黒…。姿が見えないからどこに隠れているかと思ったら、やっぱりここにいたというわけね。もしかしたら北カナンに、とも思ってたんだけど」
 強敵の出現にルカルカは剣を握り直す。カルキノスはすでにパワーブレスを飛ばしていた。
 彼女の言葉に、六黒は答えなかった。
 彼はここで1つの悪の最後を見届けるつもりだった。
 ルドラ本人を無視し、破壊派と修正派に分かれてそれぞれの主張をしたときはさすがに苦笑が浮かんだが。それでもただじっと暗がりにひそんで、事の成り行きを見守っていた。
 しかし、やはりただ幕引きを見ているだけでは終われないようだ。
「しょせんうぬらとは相容れぬ同士よ。ならばくどくどしい御託は不要。
 そのご大層な剣をいつまでも飾りにしておくつもりでないなら、かかってこい」
 あからさまな挑発だった。
 ルカルカはカッとなり、飛び出す。しかし何もないはずの空間が突然爆発して、彼女は吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
 それは六黒のパートナーであり最も忠実な者、強化人間の九段 沙酉(くだん・さとり)が事前に張り巡らせていた罠だった。
 うす闇にまぎれるように張られたワイヤーには見えないチャックがついていて、触れた瞬間爆発する。
「ルカ、ありゃあおそらく封爆のフラワシだぜ!」
「そうみたいね…。でもおかげで、頭が冷えたわ」
 受け身をとってすぐさま立ち上がったルカルカの体にはほとんど傷らしい傷はついていなかった。驚異的な反射能力で、彼女は爆発を回避していたのだ。
 完全に避けきることはできなかったが、少々の打ち身や擦り傷など何でもない。
「よっしゃ! 援護する! 行け!」
 ルカルカは彼を信じ、走った。
 カルキノスの雷霆ケラウノスが振り切られ、発生した無差別の雷電がワイヤーを寸断する。
「むくろ」
「かまわぬ。うぬは行け」
「…………」
 強敵との戦いにあって、六黒のそばを離れるのは不安だった。
 けれど。
(むくろを、しんじる)
 沙酉は自身に言いきかせるようにこくっとうなずくと、ベルフラマントで身をおおってうす闇にまぎれた。
 離れて行く軽い足取りをかすかに感じながら、六黒はルカルカの雷撃のような剣をヴァルザドーンで受け止める。
 ルカルカはパートナーからのスキルや自身のスキルで攻撃力そして機動力の増加を図っていたが、対する六黒とてそれは同じだ。さらには魔鎧狂骨や身内にひそむ奈落人虚神 波旬(うろがみ・はじゅん)が貸し与えた能力がそこに上乗せされている。
「ふんっ!」
「やあっ!」
 ともに増加させた膂力で高速攻撃を仕掛ける。
 2人が剣を振り、刃と刃を打ち合わせるだけで周囲にビリビリと空振が走り、見る者に威圧を与える。
 一時も鳴りやまない剣げき。息もつかせぬ攻防が繰り広げられるなか。
 突然、シャッと隣室とつながるドアが開いた。
 ルドラが現実世界でのダリルの排除に出たのだ。
「おっと。おいでなすったようだぜ」
 そこからなだれを打って飛び出してきた少年型ドルグワントを見て、カルキノスは両手に雷光と炎がはじける炎雷をまとわせる。
「よせ、カルキ。ここはコンピュータルームだぞ。下のフロアはともかく、ルドラのそばでその技は使うな」
 淵からの注意にカルキノスは舌打ちをし、雷霆ケラウノスに持ち替えた。
 淵もまた、黎明槍デイブレイクを手に横に並ぶ。
「おまえも出るのか?」
「ああ。敵が敵だからな。――ぬかるなよ」
「ぬかせ!」
 2人は同時にドルグワントを迎え撃つ。
「はあっ!!」
 ゴッドスピードとパワーブレスの流動する輝きに包まれて、淵は奮然と戦った。その手に握られているのは黎明槍デイブレイク――払暁の陽の光のごとき輝きを放つ槍である。
 わずか140センチの小柄な体で、どこにそれだけの力を秘めているのか。爆発的なパワーと槍術でドルグワントの攻撃をいなし、払い、流して砕いた。
「次! かかって来い!!」