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劇場版 月神のヒュムーン ~裁きの星光~

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劇場版 月神のヒュムーン ~裁きの星光~

リアクション


・Opening


「システム、起動」
【メタトロン】のシートに座り、ドミニク・ルルーはコンソールパネルに掌をかざした。
 生体認証開始。コックピット内のスキャナが、彼女が正真正銘ドミニクであることを確認する。
『認証完了。バイタル・サイン、すべて正常』
「そりゃあ、そうじゃなくっちゃね」
 パネルの表示を見て、ドミニクは呟いた。
 少しでも身体に変調をきたしていれば、動力炉は稼働しない。二重のチェックが終わると、コックピットの中が明るくなった、
 機体外の光景が、コックピット内に投影された。オールビューモニターを通し、機体の全身に搭載された高精度なカメラ・センサーにより、コックピットの中とは思えないほどはっきりと、外の様子が分かる。
「この光景、何ヶ月ぶりかな。天学のイコンも全周囲だけど、やっぱりこっちの方が鮮明だね」
『試作(試作機だからってコスト無視して最新鋭の機器使ってるんだから、当然でしょ)』
 マルグリット・ルルーから通信。彼女の姿が、モニターに映し出された。
「無線、異常なし。やほー、マルちゃん。そっちも大丈夫そうだね」
『一応(一応は。変態局長が勝手に載せた新武装試せないのがあれだけど)』
「地球上で使ったらヤバいから、それ! ってか変態ジジイマジ変態だよ……切り札にはなりそうだけどさ」
 いくら趣味半分、しかも一回きりだからって、下手をすれば国際問題になりそうなものをどうして作るかなあの人は。
「……まあ、今回は宇宙戦。アタシたちにとっての当たり前が通用しないわけだしさ。あとマルちゃん、音量上げる!」
 宇宙では風も、外の音も伝わってこない。それは「風読み」が使えないことを意味している。
『悔しいけど、今回はレーダーも使わざるを得ない』
「……普通、レーダー切るなんてのは自殺行為なんだけどね」
 ため息を吐くマルグリットだが、それはこっちがしたい気分だ。
「んじゃ、そろそろ行きますか――カリスドライブ、起動っ!」
 モニターに表示された――視覚的には空間に浮いている画面に表示されたスタンバイボタンを押した。
 機体の駆動音。振動が身体に伝わってくる。
「コス君、機体チェックいくよ」
 ドミニクが言うまでもなく、パートナーのコスマは各部のチェック作業に入っていた。
 出力、異常なし。
 レーダー・センサー、全て正常。
「システムスキャン、エラーなし。駆動部、FCS,動作良好。入出力における伝達・反応速度、規定値との誤差なし」
 モニターでは、絶え間なくウィンドウが開いては閉じていく。そして、全てのチェックが完了し、スタンバイの表示が青くなった。
「システム、オールグリーン。シャトル、接続」
 天御柱学院旧イコンデッキの電磁カタパルトに、機体がセットされる。
「マルちゃんも、OK……と」
 ドミニクは【メタトロン】と同様に発進準備が整った【サンダルフォン】を横目に見た。同じクルキアータの後継機であるウルガータがベースになっているとは思えないほどの重武装ぶりだ。
(あの変態ジジイも、よくここまで詰め込んだよ)
 多弾頭ミサイルランチャー二基、バスターライフル改、それに推力確保用の大型ブースター二基、そして、切り札となりうる新武装である。
『接続を確認。発進準備完了』
 管制室からの通信。いつでもいける、という合図だ。
「さあ、あの宙(そら)へ」
 ドミニクはスロットルレバーを握りしめ、深呼吸をした。

「【メタトロン】」
『【サンダルフォン】』

 目を開き、レバーを強く押し込む――

『「発進!!」』