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死いずる国(後編)

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死いずる国(後編)
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突破
PM21:00(タイムリミットまであと3時間)


 仲間たちが、死人と戦っている。
 コームラント・ジェノサイドは船での先行組のおかげで僅かだが削られている。
「今が、好機だ」
 クローラの言葉に全員が頷いた。
「コームラント・ジェノサイドの囮は、私達に任せてねぇ」
 のんびりした口調を崩さないまま、木枯がさらりと言った。
 しかしその瞳には覚悟の色が浮かんでいる。
「ここはあたしに任せて、みんなは先に行ってね♪」
 さらりとフラグを立てるのはミルディア。
「ワタシも、こちらに行くのが最善手だと判断しました」
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)も、木枯の側に立つ。
「みんなぁ……」
 木枯は囮を申し出た仲間の顔を見つめる。
 囮組なんて損な役回りを受ける人物は、そんなにいないと思っていた。
 いざとなったらじゃんけんで……なんて言い出そうかと思っていた。
 だけど、こんなにも進んで受けて立つ仲間がいるなんて。
 更に。
「私も、囮となります」
「ああ。俺もだ」
 その言葉を聞いて、発した人物を見て、木枯と稲穂は驚きの表情を浮かべた。
「フレンディスさん!」
「私は、私達のやるべき任務をこなすだけです」
 嬉しげな稲穂の言葉に、しかしベルクと共に並んで立つフレンディスは無表情のまま。
 それでも木枯と稲穂は、顔を見合わせ微笑んだ。

「それじゃあ、行きましょう!」
 理子の周囲には、陽一、壮太、旭、クローラたちそうそうたる護衛の面子。
 ハイナには、ルカルカたちが護衛する。
 横須賀基地から来た聡もそれに同行する。
「行くぜ!」
 壮太の号令の元、コームラント・ジェノサイドと戦っている木枯たちの側を通り抜け、突破組が走る。
「そこを左だ!」
「あの木の脇を通り抜けろ!」
 コームラント・ジェノサイドのワイヤーが掠め、高熱ガスが髪を燃やす。
 しかし、壮太の指示に従って走る突破組は、なんとかその攻撃をかいくぐっていた。
「ガキぃ、右からの攻撃が来るぜ」
「わかったぜ、オッサン!」
 宗也の声に、壮太は全員に声を張り上げる。
「右方向に気をつけろ!」
 宗也は未来予知でコームラント・ジェノサイドの攻撃を予測し、それを壮太が全員に伝えていた。
 それによって、突破組はほとんど致命的な攻撃を受けることなく戦場を潜り抜けている。
 本来なら、これ程の回避は不可能だったろう。
 コームラント・ジェノサイドと戦う仲間、囮となる仲間。
 彼らがコームラント・ジェノサイドの戦力を削ったからこその、回避だった。

「みんな、がんばって生き残ってね……!」
 基地に向かって走って行く仲間を、ミルディアは小さく呟いて見送った。