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2023年ジューンブライド

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 そんなこんなで式が始まった。時間が押しているため、かなり駆け足で進行している。
 翠とサリアは、ようやく始まった式を興味津々に見ている。確かに、同時に二人と結婚する式なんて、そうそう見られるものではない。
 その傍には、成り行きで式に出席することとなった詩亜と玲亜もいる。例によってメイド姿のミリアとスノゥは、何故か隅っこでスタッフのごとく控えていた。
「新婦が入場致します」
 神父の言葉と共に、エクスとリーズが式場内に入ってきた。その後ろでは、メビウス・クグサクスクルス(めびうす・くぐさくすくるす)ネメシス・マネキスキー(ねめしす・まねきすきー)がベール持ちをしている。
「やっぱり、お嫁さんは綺麗ですねー。お招きいただいた上に、花嫁さんのベール持ちが出来て光栄です」
 メビウスが小声でそう言って微笑んだ。
「それにしても、花婿は既婚者の上、更に妻を貰うとかまるで鶏みたいですね。あっ、間違えました……チンパンジーの家族の間違いです」
 ネメシスも小声の毒舌で同意する。そのチンパンジーの妻となる二人の後ろで、この発言である。
 そんなメビウスたちの様子を、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)マネキ・ング(まねき・んぐ)と共に眺めていた。
「唯斗が、結婚するらしいので、招かれて来て見たが……重婚とは、道徳的に考えたら、真似はできないな……」
 セリスの耳にネメシスの声が聞こえたわけではなかったが、何となくそう言わざるを得ない気がしていた。
「まぁ、当人らがそれでいいならば何も言うまい……何にしても新たな門出を祝ってやろう」
「ふむ……やはり、祝い事はよいものであるな!」
 マネキは何に納得したのか、大きく頷いた。
「よし、そうと決まれば、我も来年は、セリスと結婚できまりであるな! 今年からフラグの準備である!」
「……その陶器物の姿で、結婚どうこう言われてもな……俺とお前の関係はそういうものじゃないのだから……」
 セリスは視線を花嫁たち二人に向けたまま、マネキの言葉に突っ込む。
「ふむ……どうやらセリスは、照れ屋の上、欲深いようだ……フフフフ……万事、我に任せておくがいい……」
「だが、断る、としか言いようがないが……って聞いてないな……」
 セリスはやれやれ、といった風に小さく溜め息をついた。
「兄さんも姉さん達も綺麗ですねー」
 そんな中、睡蓮は一人だけ至極真っ当に結婚を祝福し、喜んでいた。

 主に神父の説教が大幅に削られることとなり、誓いの言葉からは通常進行で式が進み始めた。
「俺、紫月唯斗はエクス・シュペルティアとリーズ・クオルヴェルを新たに伴侶とし生涯、全てを賭けて護ると誓う!」
 唯斗はかっこよく決めた。本日唯一の見せ場だと言って良いだろう。
『妾(私)、エクス・シュペルティア(リーズ・クオルヴェル)は紫月唯斗の伴侶となり共に歩み続けると誓う!』
 エクスとリーズの二人が同時に誓いの言葉を叫んだ。
 こうして、無事に唯斗の結婚式は終わったのだった。
 唯斗はエクスとリーズを伴って、式場の扉へと向かい始めた。エクスとリーズは手にしていたブーケを高く投げ上げた。
「フハハハ! その結婚式、ちょっと待ったあ!」
 式場の扉を大きく開け放ち、唯斗たちの前に立ちふさがったのは、ドクター・ハデス(どくたー・はです)紫月 結花(しづき・ゆいか)だった。