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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 レン・オズワルド(れん・おずわるど)は、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)とボートに乗って池の上にいた。
 レンは、フリューネと二人だけの思い出を作りたい、と考えたのだ。レンだけでなく、フリューネにとっても思い出になればと思っていた。
「誰かを愛するということは、その人と同じ時を過ごすということだ。だから、二人だけの思い出を作るのはとても大事なことだな」
 そう言いながら、レンは月を見上げた。一方、目の前のフリューネは、水面を見て穏やかな風を感じている。
「思い出、ね。確かに、とても大切な物だわ」
「人の記憶は無くならない。思い出の品、景色、匂い、音楽。それらに触れることで忘れていた過去の記憶を思い出す」
 レンは、一年前、フリューネを月見に誘った時のことを思い出した。月自体よりも、月を見上げる人々や会場を興味深く眺めてしたフリューネのことを。
「フリューネが月を見なくても、それで良いと思うんだ」
「どうして?」
「その場に一緒にいれば、思い出を作ることができるからな」
 今もそうだ。レンは月を見て、フリューネは風を感じている。それでも、今日という日は二人にとっての思い出になる。
「俺はあの月を見上げることで今日のことを、そして1年前のことをこの先何年も思い出すだろう。
 フリューネと俺が一緒に居たこと。その事実を2人の思い出としてな。フリューネにもそうあって欲しいと願う」
「そうね。……月を見上げなくても、こうした穏やかな風を感じる時に、今日のことを思い出すんじゃないかしら」

 ボートからの月と風を楽しんだ後、レンとフリューネは近くの東屋で酒と団子を楽しんだ。
「フリューネは、苦手な食べ物はあるのか?」
 団子を食べながら、レンが訊ねる。
「特に思いつく料理はないわ。基本的に、何でも食べられるわよ」
「そうか。いや、最近俺も料理をする機会が増えたんだ。誰かに自分の作った料理を食べてもらう。これが意外と楽しくてな」
「良いことだと思うわ」
 フリューネも、何度かレンの料理をごちそうになったことを思い出したのだ。
「……ねえ、レン」
 東屋の外を眺めるレンにフリューネは声を掛け、じっと見つめた。
「これからも、共に空賊を狩りシャンバラの空の平和を守る、私の人生をかけた戦友として、いてくれる?」
 それは、フリューネがレンとの関係について出した、結論だった。
「何度も考えたけど、やっぱりレンのことは大切な人で、私の人生から外すことのできない人。思い出から消すことのできない人。
 ……だから、今までの思い出だけじゃなくて、これからも良い思い出を作っていきたい」

 そう、真剣な瞳で告げるフリューネが、その言葉を導き出すまでにどれほどの時を要したのか、しれなかった。
 だが、その言葉に一片の偽りもなかったことも、また事実だった。