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若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

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若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~
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第13章 夕暮れ

「これが最終便だぜ、ヒャッハー!」
 若葉分校、生徒会庶務。そして若葉種もみ祭実行委員のブラヌ・ラスダーが、バイクを走らせている。
 サイドカーに女性を。後ろには男性を乗せている。
「うおおおおおおおおおーーーーー! 学園祭バンザーーイ!」
 そしてもう一人、ブラヌのバイクに括ったタコ糸の先――大空には、大凧に乗ったモヒカン少年の姿があった。
「到着!」
 景色の良い道を通り、種もみ学院へと到着を果たす。
「それじゃ、楽しんで来いよ! ただ、票は若葉分校の出し物に入れてくれよな!」
 乗せてきた男女にそう言うと、ブラヌは落ちている凧と、凧に乗って宣伝をしていた仲間を回収しにいく。
「ぐふ、燃え尽きたぜ……」
「学園祭は家に帰るまでが学園祭だ。それまで死ぬな!」
 べしべしと仲間の背を叩き、励まして。
 それから、ブラヌはバイクのメンテナンスを始める。

 それからしばらくして。
「はぁ……学園祭、楽しかったのですが、何だか疲れてしまいましたね」
 ため息をつきながら、佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)が、種もみの塔から出てきた。
 彼女は若葉分校の学園祭実行委員として、移動に使う道のチェックや整備、乗り物のメンテナンスを担当し安全に努めていた。
 双方の運営状況もこうして見回って確認していた。
「そちらの様子はどう? 問題起きてないかしら」
 若葉分校にいるレナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)に電話をかけて尋ねると。
『普通じゃないことは沢山起きてるけれど、パラ実的には普通の範囲内みたいよ〜』
 そんなのんびりした返事が返ってきた。
『怪我人も結構出てるけど〜、魔法での治療体制も一応整ってるし、皆楽しそうだからいいみたい〜』
「そう……。でも、お客様が怪我をしないように、注意してあげてね」
『了解〜』
 電話を切って、もう一度ため息をつき、牡丹は歩き出す。
「……あ、ブラヌさん、丁度良い所に居ました!」
 ブラヌを発見して、牡丹は急ぎ足で近づいた。駆け寄るほどの元気はなかった。
「若葉分校まで乗せていってもらえますか?」
「オッケー、丁度メンテ終えたところだ」
 ブラヌはバイクに跨ると、牡丹に「乗れよ」と言う。
「ありがとうございます」
 かぽっとブラヌの頭にヘルメットを被せて、自分もヘルメットを被り、牡丹はサイドカーではなく、ブラヌの後ろに乗った。
「……おお? 今日、女の子で後ろに乗ったのはお前が始めてた。いいのか?」
「何がですか?」
 サイドカーの提案や、景色の良い道の提案をしたのは、牡丹だった。
 より、客に楽しんでもらうために、不便をかけないように、と。
 ブラヌはそのお陰で、輸送の役目をきちんと果たせたと言ってもいい。
「いいんなら、いいんだ。行くぜー! ヒャッハー」
 声を上げると、ブラヌはバイクを走らせる。
「夕焼け、綺麗ですね……あ、最短ルート通らないのですか?」
 ブラヌが若葉分校への帰還の為に選んだ道は、最短ルートでも、牡丹が提案した景色の良いルートでもなかった。
「この時間は、このルートが一番綺麗なんだ。おまえより、俺の方が大荒野のこと知ってんだぜ!
 それにもう少し楽しんでいたいからな〜。心地良いこの感しょ……いや、景色を!」
 ブラヌの言葉は良く聞こえなかった。
 牡丹は彼の声を聞くためにもと、もう少し彼にくっついた。
「ふふふ♪ 女後ろに乗せて帰還ってなんか誇らしいぜ〜。なァ、牡丹、お前教導辞めて、このまま俺の女のならねぇか!?」
「ん? すみません、良く聞こえません……」
「なんでもねぇ〜、何でもねぇよぉ〜っと。ほら、オアシスが見えて来たぜ!」
「あ、本当です……綺麗」
 これはきっと、頑張った自分と、そしてブラヌ自身へのご褒美なのだろうと。
 ブラヌに掴まりながら、牡丹は大荒野に降り注ぐ夕日と、煌めくオアシスを――美しい景色を堪能するのだった。