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リアクション
小さな教会で、相田 なぶら(あいだ・なぶら)とフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)は結婚式を挙げることとなった。
先月婚約者となったなぶらとフィアナ。今から準備をして正式な挙式をするといつになるか分からない。
なぶらはこのジューンブライドの時期に予約できる式場を、と探したところ、この教会がやっと予約できたのだった。
(一生に一度のイベント、フィアナには申し訳なかったかな……)
白いタキシードに身を包んだなぶらは、純白のウェディングドレスを着たフィアナを見てこっそり思う。
結婚式は身内だけ呼んで行う、小規模な式になったことを、なぶらは少し寂しく思っていたのだ。
フィアナはフィアナで、そんななぶらの気持ちもお見通しだ。
(まぁ、自分からプロポーズしといて、全く式の事を考えてなかった事には多少の不甲斐無さを感じますが……)
そう思いながらも、フィアナはなぶらをみつめて微笑む。
(それでも、一生懸命探し回って見つけてくれた教会だと言う事は知っていますから、まぁ、今回は許しましょう)
なぶらには何も言わずに、フィアナは黙って式に臨んだ。
式は順調に進んでいく。
「それでは、誓いの言葉を」
牧師に促されて、なぶらは固まる。
「……誓い?」
「この場を借りて貴方に誓いをたてます、聞いて下さい」
なぶらが言う前に、フィアナが口を開いた。
「今後私は、貴方の戦乙女として、そして妻として貴方を護る為に剣を振い、生涯を賭け貴方を守り抜くと誓います」
「……守り抜くって、それは……俺のセリフじゃ……」
誓いの言葉をフィアナに先に言われ、パクパクと口を開くなぶら。
「ふふ、早い者勝ちですよ」
なぶらも、その直後に誓いの言葉を交わした。
が、その時のなぶらの頭の中は、フィアナに主導権を握られたことでいっぱいだった。
なぶらは後になって、自分が誓いの言葉何を言ったのかを思い出せずにいる。
「では、指輪の交換を」
牧師に促されて指輪の交換をしている時も、なぶらは心ここにあらず。
だが、どうにかお互いに左手の薬指に指輪を嵌めることができた。
「では、誓いのキスを」
(誓いのキス……ん? ……キス……?)
今更ながらに、なぶらは気付いた。
(お、俺、これがファーストキスじゃん……)
なぶらとフィアナは、恋人という過程を飛ばして結婚することになったのだ、当然でもあった。
(ここは、年上の私からしてあげますか。まぁ、私も初めてですが……)
「って、ん……!?」
フィアナは、戸惑っているなぶらに軽くキスをした。二人に取っての、ファーストキスだった。
(……フィ、フィアナからされた……男の俺がリードすべきところなのに……)
結構ショックだったらしいなぶら。
「これで、名実ともに夫婦ですね」
(駄目だ、挙式でこれだとこれからの夫婦生活もリードされ続ける将来しか見えない……!)
そんななぶらの心を見透かしたように、フィアナは微笑んだ。