なし

リアクション

■前説
■１回戦対戦表



「……ふふふ……今またデュエルキングを決める戦いが始まる」
「リーダー？　突然どうしたんでふの？」
　何だかデジャヴを感じつつ、今回も無理やり大会会場に連れて来られたリイム・クローバー（りいむ・くろーばー）は、十文字　宵一（じゅうもんじ・よいいち）に訊ねる。
「ゆうせ――ではなくリイムよ！
　今度こそデュエルキングの称号は俺が頂く！
　デュエルマスターの戦いを見せてやろう！　ふはははは！」
　今回もノリノリである。
　一体何に影響されたんでふ？　と思いつつ、そのテンションの高さが誰かに迷惑をかける前に止めようと、リイムも付き合いよく参加するのだった。
（……それにしても、あの人は……）
　リイムは、ちらりと視線を移す。
　アトラクティブアーマーと楊霞のバイザーで、正体を隠した参加者がいるようなのだが……。

「今回は、宣伝で来たんだからな。目立つのはいいが、勝ち過ぎるなよ」
「はいはい、解ってるって」
　『ネフィリム三姉妹』が、パラミタ・オールスターズ・コレクションのカードになったので、その宣伝と広報の一環として、三姉妹の長女、セラフ・ネフィリム（せらふ・ねふぃりむ）はこの大会に参加することになった。
「だが断る」
「おいっ」
　付き添いの湯上　凶司（ゆがみ・きょうじ）はたしなめたが、セラフは勝つ気満々だった。
「遊びも戦争も、本気でやるから面白いんでしょぉ〜がっ」
　ふふんと笑って手を振って、じゃあねー、と、セラフは参加者ブロックに歩いて行く。
「ちゃんと広報はやるから。でも勝負はガチね！」
「……全く。大丈夫かよ……」
　見送る凶司に、一抹の不安がよぎる。




「前回はカード半分こでしたけど、今回は自分でも考えてみました」
　デッキを手に、わくわくしている千返　ナオ（ちがえ・なお）に、千返　かつみ（ちがえ・かつみ）も頷いた。
「前回は二回戦負けだったから、今度はもう少し上を狙おう」
「それで、罰ゲームですけど……」
「えっ？」
　かつみは意表をつかれてナオを見る。
　前回、負けて帰って来たら罰ゲーム、と言って送り出したパートナー達と、今回は話題が出る前に家を出てきたから一安心、と思っていたら、まさか本人の口から出てくるとは。
「……勝った方が、アイス三段食べていいことにしましょう！」
　がく、とかつみの頭が傾く。
「……それ、罰ゲームっていうかアイス食べたいだけだろ」
「だって三段ですよ。かつみさんいつも、おなか壊すから二段までって言うじゃないですか。勝負に勝ったら特別ですよ！」
「はいはい。勝ったらな」
　とりあえず、かつみは安請け合いをしておく。




　カードゲームの大会申込書を書きながら、ルカルカ・ルー（るかるか・るー）はパートナー達に微笑んだ。
「という訳で今回も、最下位は皆に回らない寿司を奢るのよ」
「しかしよぉ、寿司は好物だがコレはついてんのかよコレは」
「寿司と共に供されるのだから当然であろう？」
　夏侯　淵（かこう・えん）が、くい、と飲む動作をするカルキノス・シュトロエンデ（かるきのす・しゅとろえんで）に頷く。
「寿司懐石に肉料理と酒付きでどうだ」
「どこが寿司なのかもう分からんな」
　淵は、上機嫌なカルキノスに呆れる。
　溜息を吐いて、ダリル・ガイザック（だりる・がいざっく）がルカルカを見た。
「で、ルカは今月の小遣いは残っているんだろうな」
「う、うん」
「本当か？」
　半眼のダリルに、ルカルカは目を逸らす。
「多分……大丈夫、かな？」
「お前新婚旅行の土産に随分金をかけていたよな」
「……」
「契約者としての収入から毎月の小遣いを渡しているのは俺なのだが、俺の計算によると……」
「わああんっ、勝てばよかろうなのだ――っ」
　ぽこぽことダリルを叩くルカに、ダリルは慌てた。
　ルカルカの「ぽこぽこ」は、態度の可愛さに騙されてはいけない。
「待てルカ、加減しろっ」

「……あれが新妻力（物理）ってやつかー」
　と、遠くから眺めるカルキノス達は止めない。




　何だか今回は自分も参加することになってしまった。
　だって前回、女二人のテンションの高さがあれやそれで、自分は全く暇だったのだ。
　とは言え、やっぱりカードゲームとやらの何が楽しいのかはよく解らない。
「なので素面では参加できん。という訳でコスプレすることにした」
「その発想がよく解らないわ」
　ローザ・シェーントイフェル（ろーざ・しぇーんといふぇる）は、パートナーの新風　燕馬（にいかぜ・えんま）の姿を見て呆れた。完璧な女装だった。
「ふふ――二人とも、よろしくお願いいたしますわね」
「口調までなりきっちゃって……」
　サツキ・シャルフリヒター（さつき・しゃるふりひたー）も呆れている。
　本人は、意識を切り替えて、『ヤミー』という女性に成りきっている。
　しかし完璧な女装とはいえ、変装ではないので、燕馬だと丸わかりなのだ。知り合いに会ったらどうするのだろうと思うが、まあ本人がいいのだからいいのだろう。
「偽者とはいえ、スタイルまでいいのがまた腹立たしいのよねー……」
「そろそろ始まりますわね。参りますわ」
　ヤミーの言葉に、女三人はカードバトル会場へ歩き出す。




「ふむ、ここがカードバトル大会会場か……。
　事前にルールを勉強しようと思っていたが、ラブに止められて、結局何も解らないままなのだが……」
　さて、どうするか、と思いながら、コア・ハーティオン（こあ・はーてぃおん）がうろうろと歩いていると、
「ご心配なく〜！」
　と、ハーフフェアリーのラブ・リトル（らぶ・りとる）が、ストンとハーティオンの肩にとまった。
「はいこれ。ラブちゃんが、ハーティオンの為に特製デッキを組んできました〜♪」
「む？　おお、私の為にか！　それはすまない！」
「大会開始前のエキシビションマッチ公開に参加することになったから、そこで実地でルールを教えてあげるわ。実際にやってみた方が憶えやすいでしょ？」
「成程、実戦形式か……！　ありがとう、このハーティオン心してルールを勉強させてもらうぞ！」
　ハーティオンにはカードは少し小さくて、多少掴みにくかったが（それを言うなら、ラブにはカードは少し大きすぎたが）、折角の機会、一生懸命にやらせてもらおう！　と、ラブに言われる場所に向かう。
　最もラブの腹の中は、
（ハーティオンの激弱デッキ対あたしの最強デッキで、あいつをボコボコにしたげるわ♪）
　という有様だったのだが。




　カードバトルの大会に参加することになって、アキラ・セイルーン（あきら・せいるーん）は、アリス・ドロワーズ（ありす・どろわーず）やぬりかべ　お父さん（ぬりかべ・おとうさん）達と、模擬戦などで今日に備えて来た。
「こういうのってシミュレーションしながらデッキを組んで行くのが楽しいんだよなー」
　皆で一緒に、あーでもないこーでもないぬ〜り〜か〜べ〜〜とワイワイやりながらデッキを構築し、三人でデュエルして調整して。
「そうして出来上がったこのデッキ！　これなら優勝間違いなしだヒャッハー！」
　自慢のデッキを掲げつつ、優勝宣言するアキラに、周囲の参加者達の視線が集中する。そんな皆も、自慢のデッキを持参で来ているのだろう。
「こういうのって、カードの引き運も大事なのヨネ」
　と、アリスが皆に幸運のおまじないをかけた。
「さんきゅう。
　よっしゃ、運も実力もばっちし！」
　アキラ達は、万全の体制で大会に挑む。