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全学最強決定戦! ~ラストバトル~

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全学最強決定戦! ~ラストバトル~

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 またリングのど真ん中にいた赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)も、詩穂との戦闘を開始していた。
「二刀ですか。自分も刀と、鞘を使うんですよ」
「ならお互いに不足なしだね!」
 刀と刀、刀と鞘がぶつかり合い、ギリギリと刃が震えあう。
 二人の強力なぶつかり合いに刀も共鳴しているかのようだ。
 先手は霜月。詩穂を強引に後ろへ押し出し、そのまま左右から挟み込む。
 対して詩穂は受けることをせず、非常に低い体勢でこれをかわし霜月へ接近。
 突き上げるかのように抜身を霜月へ突き出す。
 だが、これに反応した霜月の空木が霜月を乗せて空へ浮上。
 それも一瞬、すぐさま霜月は空木から身を投げ、空から急襲。
 攻めの姿勢を決してやめない霜月。
 詩穂も果敢に挑みかかり、霜月の攻撃を受けて防ぐが、先ほどよりも重い攻撃にその身体が軋む。
 更には片方の武器を取りこぼしてしまう。
 そして、詩穂は。
 笑った。
 刹那、霜月の顎に痛烈な一撃を見舞われる。
 武器を取りこぼしたのも、計算の内。いや、これこそが彼女の楽しみたかったもの。
「戦法もいらない、武器もいらない、小細工抜きで1対1で本気で戦いたかった!」
 突然の打撃攻撃に霜月も驚きを隠せず、防御で手一杯になる。
 だが彼も熟練者の一人。このまま冷静さを欠いているわけではない。
 すぐさま己を取り戻し反撃に転じようとする、が既にリング端。
 そのことを改めて知覚し、一瞬脳裏に溺れる自分が鮮明に映し出される。
 一瞬の隙、詩穂が者にしないわけがなく、霜月をリング外へと弾き飛ばす。
「……! 空木っ!」
 すぐさま空木を呼び出し、海面への着水を阻止しようとする霜月。
 その行いは辛くも成功しどうにかギリギリで事なきを得た。
 かに見えた。
「油断大敵ですわ」
 今度はセルフィーナの群青の覆い手が霜月を襲う。
 襲い来る水に霜月の肝は冷えっぱなし。いつもの冷静さを見失ってしまう。
 これもどうにか避けたものの、そのかわす最中に、足元が海面に触れていたことにより、
 着水と判定されてしまいここまでとなった。
「……水のない場所が、よかったですね」
 そう零さずにはいられない霜月だった。

 セルフィーナの援護もあり霜月を倒した詩穂たちをダリルが狙う。
「先ほどの借りをかえさせてもらう」
 またも二丁銃から機関銃と同程度の弾幕を張るダリル。
 だが彼は見抜いていた。先ほどこの攻撃を止めた武器はいまはないことを。
 青白磁も危機を悟り駆けつけているが、間に合ったとしても助けられるのは一人のみ。
「……後はお二方にお任せします」
 セルフィーナがそう言い、詩穂の背中を押す。
 そこへ青白磁が駆けつけ、鉄のフラワシと機晶シールドを併用して弾雨を防ぐ。
 セルフィーナも懸命に避けるが最後にはその人形を破壊されてしまった。
 そしてここで、リングが更に混沌と化す。

「ククク、パラミタ最強は、この俺だ!」
 そんな言葉を恥ずかしげもなく堂々と言ってのけたのはドクター・ハデス(どくたー・はです)
 覆面戦闘員をありったけ連れ込むという荒業をやってのけている。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!
 ククク、この大会は、我らオリュンポスが優勝させていただく!」
 棚引く白衣がたくさんある。そして覆面もたくさん。
「フハハハ!これぞ真の分身の術!
 36人の中から本物の俺を当てることができるかなっ?!」
 確かに白衣と覆面を全員がしているのであれば、骨格の差はあれど一目で見抜くのは困難。
 実際、悪くはない作戦案である。
 ハデス本人が覆面をしていれば、の話だ。
「……ちょっと邪魔するぜ」
 それを静かーに見ていた唯斗。彼もまた分身することであらゆる局面を切り抜けてきた分身のエキスパート。
 目の前でこのように大胆で抜けている分身を見せられて思うところがあったのだろう。
 覆面白衣集団の端の方からちょこちょこと敵を倒していく。
 そしてある程度倒した後、直接ハデスのもとへ向かう。
「まあ、言うのもあれだが……バレバレだ!」
「ぐあー!?」
 唯斗の右拳がハデスの鳩尾に入れられる。痛烈かつ鋭い打撃にさすがのハデスも悶絶。
 と、そこへ更なる変……異変が。
「その隙、もらったー!」
「?」
 唯斗が声のするほうを向いて、思わずぎょっとなる。
 そこにいたのは、一切の武装を捨て、ゴボウとその他食材しか装備していない、異形の姿のレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)(女性)がいた。
 身にまとうのはゴボウと食材、そして人形。
 この中では人形ですら立派な防具に思えてくるが、今回のルールではむしろ弱点である。
「どうした、疲れてるのか?」
 唯斗の優しい声にレオーナはふっふっふと笑って答えた。
「君はもう既に罠に嵌っているのさ、このバナナスリップ地獄にね!」
 レオーナの言葉の真意、周りにはバナナの皮が散乱していた。
 つまりはそういうことだろう!
「バナナはおやつではありません。バナナはトラップです。
 ……バナナはおやつではありません! バナナはトラップです!」
 何故二回言ったのか! と契約者たちも観客たちも目が点になっていたが、大事なことだからいったのだろう。
 更にレオーナの心理的効果を考慮した罠が続く。
「更にこのこんにゃくをばらまき、『これはコンクリートのプロックかな?』と思わせる。
 硬いものを想像していざ触ってみたら想像以上にやわらかい……
 気付き驚いた時にはもうこの術中にはまっているのさ!」
「……そうか。それじゃいろいろと片付けて」
「あ。こら! 回収するんじゃない!」
 唯斗がテキパキとそれらを回収しつつ、覆面白衣たちを倒していく。
 万能忍者さまさまである。
「クッ…ククク…、よくぞ俺の分身の術を見破ったと褒めてやろう……
 だが、俺はあと3回、変身を残している。……この意味が、分かるな?」
 と、どうにかこうにか立ち上がってきたハデスが恐ろしげなことをいいます。
「なん……だと……?」
「ほう、面白いじゃないか」
 レオーナが意味ありげに驚き、唯斗が少しだけ興味を持つ。
 するとハデスは魔力解放を行い、いつものメガネもサングラスに変えて第一形態へ。
「さらに、二段階目!!」
 潜在解放を行い、純粋にパワーアップを果たす。
「ば、馬鹿げた気だ!」
「まあでも、ここにいるやつらは皆そんなもんだけどな」
 驚くレオーナに冷静なツッコミをいれる唯斗。あまりの行動に隠密も若干おざなりになっている。
「そして、これが最終形態だっ!!!」
 そう叫びながら自身の時間を逆行させ、何も怖くなかった14歳のあの頃の自分へと変貌を遂げる。
 その出で立ちもおそろしく、金髪に染めた髪と赤い瞳(カラコン着用)と鳥肌ものである。
「この姿だけは見せたくなかったのだが、仕方あるまい……!
 それでは行くぞっ、そこの忍者!」
「ん、俺か」
 14歳くらいのハデスが唯斗に向かっていく。
 神をも殺すといわれている大剣、ゴッドスレイヴを凶化する。
 言動からは想像できないが、鋭い一撃を唯斗へ浴びせる様に振るう。
(存外、やるなっ)
 唯斗は心の中でそう思うが、口には出さない。何か負けた気がするから。
「はあああっ!!」
「くっ」
 ハデスの一撃が唯斗を捕えるかと見紛う瞬間、唯斗は縮界を使い空へと距離を取る。
「無駄だ、すべてを見切る僕の邪眼には、どんな攻撃も通用しない!」
 人差し指と中指をパカッと開け唯斗を射抜くハデス。
 だがその足元には回収しきれなかったバナナが。

 ズルッ

「ぐおおおおお!! こ、巧妙な罠……俺の目をもってしても」
「いただきぃ!!」
 ここぞとばかりにレオーナがゴボウによるランスバレストをハデスへ。
「あーーーっ!」
 ハデスの声がリングに嫌に響き、ハデスはそのまま悶絶。
「尻ゴボウ、それは全てを凌駕する死因」
「ないからなー」
 唯斗は優しい口調でそういいながら、レオーナの人形を破壊し、また隠密に戻っていった。
 人形を破壊されたレオーナは「優勝したら、卜部さんのパンツをもらうんだ」と言って倒れた。
「ぐ、ぐぐ。まだ、まだだ、まだ終われん」
 どうにか立ち上がったハデス。どうやら致命傷は免れていたようだ。