天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

ホワイトバレンタイン

リアクション公開中!

ホワイトバレンタイン
ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン

リアクション

 今日は愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)とのお出かけ。
 バレンタインコンサートに行くことになり、彼女からクリスマスプレゼントに貰ったマフラーをして、風森 巽(かぜもり・たつみ)は約束の時間より30分早く、コンサート会場に到着した。
「愛沢、来てくれるかな……」

 今日は風森 巽(かぜもり・たつみ)とのお出かけ。
 彼から貰った指輪をチェーンに通し、ネックレスのように首につけ、約束より30分早く愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)はコンサート会場の前に着いた。
「今日はバレンタインだし、これって……デート、だよね?」
 し、知り合いに会いませんように! と願いながら、ミサは首から下げて服の中に隠した指輪をぎゅっと持つのだった。
 
 バレンタインコンサートの開場時間になり、たくさんの人たちが会場に入っていくのを横目に見ながら、巽は心配になり、携帯を取り出した。
「何かあったのかな?」
 もしかすると、今日はバレンタインだから、彼氏でもない人とは……と思ったんじゃ……とちょっと不安になりながら、巽は電話をかけてみた。
 すると、相手も待っていたかのようにワンコールで、電話が取られた。
「……もしもし、愛沢?」
「も、もしもし、風森?!」
 驚いたように、少し裏返った声で、ミサが答える。
「あれ?」
 その声が携帯から聞こえると同時に、近くから聞こえた気がして、巽は携帯を持ったまま、キョロキョロした。
「あ、あのさ、風森。今、待ち合わせ場所にいるんだけど……」
 ミサは少し困ったように電話口に話しかける。
「コンサート会場のドアのそばなんだ。風森は……」
「あ、いた」
「うわっ!」
 急に声をかけられ、ミサはオレンジ色の携帯を取り落としそうなほどに驚く。
「こ、こんな近くにいたんだ」
「ちょうどお互い、死角にいたみたいだ」
「ごめん。待たせちゃった?」
 心配そうなミサに、巽は表面上、首を振った。
「ああ、いやさっき来たばかりだよ」
 しかし、巽は待っていた。
 30分前からということではない。
 そうではなく、何日も前から……。
(ああ、待ったよ! 待ちに待ったともさ! 今日と言うこの日を!)
 巽は待っていたのだ。
 今日というバレンタインデートの日を。
「そ、それじゃ入ろうか。パンフレット買うでしょ、愛沢。あ、あとそれから、演奏の前に飲み物とか……」
「あ、ま、待って、風森」
 中に入ろうとする巽を呼びとめ、ミサは小花の模様の散ったえんじ色の落ち着いた雰囲気の紙袋を巽に差し出した。
「あ……あの、これ。ば、バレンタインだし……」
 会ったらすぐに渡したいと思っていた。
「既製品には劣るだろうけれど……前に一緒に公園での時よりは料理上手くなってるはずだから!」
 中身は手作りのトリュフチョコだ。
 巽はそれを大切に受け取った。
「あ……その、えと、ありがとう。凄く、嬉しい。大事に食べさせて貰うよ」
 照れながらお礼を言う巽に、ミサも頬を染めながら、お礼を言った。
「こ、こちらこそ、受け取ってくれてありがとう……」

 コンサート会場に入り、2人はパンフレットやチラシを見ながらあれこれ雑談した。
「詳しくないんだけど、今回の演目ってどんな感じの曲なの?」
「今日の最初の曲は……」
 そんな感じで巽が質問し、ミサが丁寧に答えていく形で、開園時間まで2人で話した。
 そして、指揮者が出て、演奏が始まると、2人はじっくりと曲に聞き入った。
 音楽の好きなミサはもちろん、巽も演奏に身を任せるように目を閉じた。
(凄い……音が満ち溢れていく……)
 その感覚や想いを共有したくて、巽はすっと隣の席のミサの手を握った。
(えっ)
 最初は驚いたミサだったが、その手の暖かさに、恥ずかしがりながらも、握られるに任せることにした。
 巽は優しく暖かいメロディーに浸りながら、ミサの手の暖かを感じ、心の中で思った。
(自分の鼓動が……愛沢の温もりが……演奏に重なって……ああ、そうか。我は本当に愛沢の事が……)
 ミサへの想いを強く感じながら、巽は演奏に聞き入ったのだった。

 コンサートが終わると、ミサが巽に提案した。
「あ、あの、良かったらまだ帰るにはもったいない時間だし、CD屋さん行かない?! ……よ、良かったら……なんだけど……」
 後半のほうは小さな声になっていたが、ミサは勇気を持って誘うことが出来た。
 待ち合わせの時には知り合いに会いませんように! と願っていたミサだったが、今はそうやって恥ずかしいと思う気持ちよりも、もうちょっと一緒にいたいという気持ちのほうが強かった。
 巽の方ももう少し二人で一緒にいたいと思っていたので、ミサの誘いに笑顔で乗った。
「もちろん、喜んで」