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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

「何だろうね、これ」
 白波 理沙(しらなみ・りさ)いんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)からもらったキャンドルとマッチを見て、首を傾げた。
「さあ……でも、綺麗なハート型だ」
「う、うん」
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)に覗き込むように見られ、理沙は頬を染める。
「少し歩こうか」
「そうだね」
 理沙の提案にリュースが頷き、理沙の手を取り、指を絡めて、手を繋いだ。
 そして、その理沙の手を、自分のコートのポケットの中に入れる。
「リュ、リュース……」
「寒いでしょ」
 ニコッと笑顔を見せるリュースに、理沙は見惚れる。
 自分を見上げる理沙に、リュースの方も見惚れ、夜の公園で二人はしばし見つめあっていたが、リュースがハッと気づいて、持ってきたラナンキュラスを理沙に差し出した。
「花言葉が理沙に合うと思って」
 『晴れやかな魅力』という花言葉を持つラナンキュラスを、理沙が抱きしめるように受け取る。
 そして、さらにリュースは自身が桜染めした桜色のシュシュを理沙にプレゼントした。
 リュースは姉弟が花屋経営していて、自分自身もパラミタに来なければ花屋の一員になる予定だったため、花に関する知識は多いのだ。
「これも理沙の金の髪に似合うと思って……」
 髪飾りはシュシュかヘアゴムのみの理沙のためにと、リュースはシュシュを選んだのだ。
「ありがとう、制服のときも似合いそう」
 理沙がうれしそうな笑みを見せる。
 蒼空学園の制服を、理沙はちゃんと着ているほうなので、ピンクのブレザーと桜色のシュシュがとても似合いそうだった。
「そ、そうかな」
「うん。つけてみていい」
「あ……」
 いいよ、と言いかけて、リュースはその言葉を飲み込んだ。
 リュースは表面上よりも独占欲があり、離れたくないと内心では必死に思っている。
 だから、恋人らしく行動しようとした。
「つけてあげるよ」
 リュースはシュシュを受け取ると、理沙の髪に触れた。
 髪にリュースの手が触れ、理沙は緊張する。
 それと同時に、リュースも緊張した。
 でも、緊張しながらも綺麗につけようと努力し、理沙の髪にシュシュを綺麗に巻いてあげた。
「ありがとう」
 理沙がお礼を言うと、今度はリュースは携帯のストラップを出した。
「た、たくさんあるんだね」
「オレのいたところだと、バレンタインデーは男性が女性に贈り物をすることになってるから……」
 そう言いながらも、リュースは自分のプレゼント攻めに、余裕の無さが現れているのかなと思い、ちょっと恥ずかしくなった。
 しかし、せっかく用意してきたプレゼントなので、理沙にアイドクレースとカラーレスジルコンの携帯ストラップを渡す。
「おそろいで作ってみたんだ」
 石言葉は、アイドクレースが『約束と二人の愛』、カラーレスジルコンが『全てを懸ける恋』。
 転じて、全てを懸ける愛を誓うという意味で、リュースは理沙に贈った。
 同時にパワーストーンなので、自分と自分の祈りを込めたこの贈り物が彼女を守っていくという意を込めてのプレゼントだった。
(理沙の持つ不安を少しでも軽く出来たら……)
 リュースはそう思っていたのだ。

「ただいまぁ〜!」
 出かけて早々に帰ってきた晃月 蒼(あきつき・あお)を迎え、レイ・コンラッド(れい・こんらっど)は目を丸くした。
「ワン殿にチョコを渡しに行ったのではないのですか、蒼様」
「うん、渡してきた。ワンちゃん、『キマクじゃこんなうめーチョコは食えねえ』って感激して食べてくれたよ〜♪」
「それは良かったです。お早く帰られたのも……」
 レイは王 大鋸(わん・だーじゅ)自身は根がいい人だと理解していたが、パラ実がうごめくキマクに蒼が遅くまで出かけるのは心配だと思っていたのだ。
「うん、だって早く帰ってこないと。今日はバレンタインだし」
「バレンタインだし?」
 不思議そうにレイが首を傾げるが、蒼はえへへ、と照れた笑みを見せ、部屋に足を向けた。
「お出かけしよう、レイ。準備するから、待っててね〜♪」
 パタンとドアを閉じた蒼を見て、レイはますます首をひねる。
「すでに外出着でしょうに……いったい何の準備を?」

 その後、準備ができたという蒼に連れられ、レイは公園へと行った。
 いつの間にか夕暮れ時になっていて、2人は合羽で顔を隠したいんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)からキャンドルとマッチを受け取って公園の中に入った。
「これはちょうど良いですね」
 もらったハート型キャンドルを見て、レイは微笑を零した。
「ちょうどいい?」
「ええ。チョコケーキを焼いてきましたので。公園の東屋で食べたいと思っていたのですが、キャンドルがあると、雰囲気が良くて良さそうです」
「わあ、楽しみ〜♪」
 蒼はレイのあいたほうの手をぎゅっと握った。
 レイはその手を繋ぎ返して、一緒に仲良く公園を歩くのだった。