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リアクション
鷹山剛次が姫宮和希に敗れ、クローン・ドージェがミツエに倒されたことで旧生徒会勢力は一気に瓦解した。
和希は、逃げる者はそのままに、投降者は受け入れるという方針をとった。
S級四天王として最後まで戦った国頭 武尊(くにがみ・たける)の居場所はわからない。
もちろん彼のことも、追うつもりはない。
戻ってきてくれるなら喜んで迎えるだろう。
休養を取り、体力も回復したミツエはニマが言い残したことについて考えたり、これからの乙王朝についていろいろと決めておきたいことが多くあったのだが、なかなか周りがそうさせてくれなかった。
たとえば。
「戦いの垢と埃を落としましょうよ♪ 背中、流してあげるから」
「ついでにこの戦いで成長したに違いないミツエさんのおっぱいで、王朝の未来をみてあげるよ」
ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)と朝野 未沙(あさの・みさ)が追いかけてくる。本気なのか遊んでいるのか……おそらく両方だろう。
「あんた達みたいなあやしいのとは入らないわよ!」
町中を逃げるミツエ。
ようやく二人を撒いた頃、今度は支倉 遥(はせくら・はるか)に掴まった。
「これを返してくれって頼まれましてね」
渡されたのは、ミツエが剛次の差し向けた追っ手から逃げていた頃にかけていた伊達眼鏡だ。
「世話になったと伝えてくれとも言われましたが……自称鮮血隊副隊長とお知り合いだったのですか?」
「副隊長? ……そう。そうね、助けられたりもしたわね。どうもありがとう。ところで、その変装はいつやめるの?」
遥はミツ右衛門のままだった。
いつにしましょうかねぇ、とのんびり言いながら彼女はミツエに背を向けた。
伊達眼鏡をポケットにしまい、頭の中で考えるべきことをまとめながら歩いていたミツエは、落ち着いた声の主に呼び止められた。
戦いの傷も癒えた風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)だった。
いやに神妙な顔をしている。
つられるようにミツエも背筋を伸ばして対した。
「これを」
と、優斗が差し出したのは一通の封筒だった。
何か用があるなら何故口で言わないのだろう、と不思議に思いながらも受け取るミツエ。
それを確認すると、優斗は「それでは」と静かに一礼して、ミツエが呼び止める声にも振り向かずに行ってしまった。
「どうしたのかしら……」
首を傾げつつも封を切ると、数枚の便箋が出てくる。
丁寧に折りたたまれたそれを開き、中を見たミツエの目がカッと見開かれた。
「こ、これは……!」
「わっ、ラブレター! やるねェ」
口笛でも吹きそうな調子で背後に現れたのはナガンだった。
手紙に集中していたミツエの肩がビクッと震える。
「いやァ、皇帝は大変だ」
「……。ところで何か用でもあったの?」
手紙のことはいったん考えるのをやめて、ミツエはナガンに用件を尋ねた。
「帽子を」
「ああ、帽子ね。ごめん、しわになったかも」
言いかけたナガンの言葉を遮り、ミツエは鞄から赤と緑に彩られたピエロ帽を取り出した。長いこと鞄に詰め込まれたいたが、言うほどしわにはなっていないようだ。
「何度燃やしてやろうかと思ったけど、その前にいつも止められてね。ま、処分する気もなかったけど」
本気で裏切られたってわかったら、この帽子を憎しみの糧にしてたわ、と言いながらミツエはピエロ帽をナガンに返した。
「本当は金剛をプレゼントしたかったんだけど、投げられちゃってさァ」
「クローンとはいえドージェだもの。気持ちだけ受け取っておくわ」
再び一人になったミツエの思考は、優斗からの手紙に移された。
受取人への熱い想いが綴られた手紙。
ミツエは読み飛ばしたりせずに、最初から最後まできちんと読んだ。しかし、答えはすでに出ていた。
「これから、国が始まるのよ。それに……」
まだ、誰かと恋愛できるだけの気力はない。
みんなの手前、達也さん──ドージェへの想いは断ち切ったように振舞ってはいたが、そんなに単純なものではない。
ミツエはその手紙をそっとしまった。
そんなふうにミツエは思っているのだったが、この手紙を書いたのは実はテレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)で、送り先はもちろん優斗。
ミツエの禅譲にショックを受けた優斗に、今なら、と自分に少しでも気持ちを向けてもらおうと、想いを込めた手紙を書いたのだ。
ただ、それはミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)に見られていた。
大好きな優斗をテレサに取られたくないミアは、テレサがいないうちに彼女のラブレターと、優斗のミツエ宛の辞表を摩り替えたのだ。
もしかしたら今頃は優斗は見覚えのある辞表をテレサから渡されているかもしれない。
戦いから数日が過ぎてヨシオタウンがそれなりに落ち着いた頃、ミツエからある発表がされた。
「ここを拠点にイリヤ分校を復興させ、そこに王朝を移すわ! それと、ドージェの戦いが終わったら、ニマの願い……ドージェを倒すわよ!」
これには場がどよめいた。
しかしミツエは宣言を曲げる気はなく、まっすぐに決戦の日を見つめるのだった。
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