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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ!
地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

リアクション

 
 
 アコガレ
 
 
 いつの間に舗装されていたのだろう。
 アスファルトに固められた道路は、歩きやすくなった代わりに照り返しがきつい。
 パラミタではピエロの扮装をしていることも多いけれど、こんな片田舎を歩くには奇異にすぎる。ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)の今日の服装は目立たぬスーツ姿。髪は黒に染め、目にも黒のカラーコンタクトをしているから、ピエロ姿しか知らない者にはそうと見分けられないかも知れない。
 空の蒼と木々の緑、時折ぽつんと見える家。
 そんな風景の間を、ナガンは静かに歩いて行った。

 4年ぶりに訪れた実家の扉は、軋んだ音を立てて開いた。
 玄関からのびる廊下は埃が積もり、中にこもった熱気まで埃の臭いがする。
 スーツで上がるのはためらわれるような状態だったけれど、ナガンは構わず靴を脱いで家に足を踏み入れた。
 こもった空気に耐えかねて窓を開ければ、薄茶色に変色したレースのカーテンが翻る。
 拭き散らされて舞う埃に目をやり、まずはこれを何とかせねばとナガンは上着を脱いだ。
 
 元々それほど荷物の多い家ではないけれど、4年分の汚れを綺麗にするには案外時間がかかった。
 家中の掃除を終えるとナガンはこざっぱりと拭き上げられた畳に座り、窓の外に暮れゆく山を眺める。
 そう、こんな景色だった。
 普段は思い出すことがないけれど、自室の窓から見えるこの風景は記憶の奥底から消えることはないだろう。

 そうして外を見るのに飽きると、ナガンは掃除の途中見つけた箱を、押入れから引っ張り出した。
 中身は小さいの頃の宝物、ヒーロー番組の録画や玩具の数々だ。
 ソフビ人形に変身グッズ、色のはげかけた必殺の剣。
 子供の頃にしていたように遊んでみるけれど、あの頃のような高揚感は襲ってこない。
 録画していた番組を見直してみれば、夢と希望に燃える勇気のヒーローが熱く語りかけてくる。
「……空想と現実は違うよなぁ……」
 子供の頃はヒーローはまさにそこにあるもので、胸を焦がすほどに憧れた。
 けれど知恵づくほどに、ヒーローなんていないのだと、ただの作り事なのだと思い知らされた。
 そして今は……。
 ナガンは手の中にソフビ人形を握り締める。
 すがるようにしっかりと。
 その手を涙がぬらしても、ここには見る人はいない。
 それならば。
 今日だけはこうして憧れを抱きしめていよう。目を輝かせてヒーローに見入っていた、過去の自分とともに。