リアクション
●『ウィール遺跡』と『氷雪の洞穴』の中間地点
「……やりましたか?」
「そう発言する時は大抵、敵は生き残っているものですな」
「やったわね!」
「唯乃、それは既に使い古された死亡フラグです」
閃光煌く中、美央と唯乃が同時にその発言をしたが故かどうかは定かではないが、直後閃光の中から声が響いてきた。
「……ったく、テメェらが張り切っから、こんな所で足止め喰らっちまっただろが。
その分覚悟はできてんだろうなぁ!?」
閃光が晴れ、そして姿を現したのは、頭から尾まで全て黒の、唯一瞳だけが紅く輝いた竜だった。
ゆっくりと翼を広げ、今にも離陸しそうな気配である。
「マズイです! 何とかして止めませんと!」
各員に命令を下そうとした美央の下に、校長室から連絡が入る。
「こんな時に誰ですか一体……」
『あなたたち、よく頑張りましたねぇ。後は私に任せなさぁい!』
『お母さん、皆さんに心配をかけたんですから、まずは謝ってください!』
『さっき謝ったじゃないですかぁ』
『それとこれとは話が別です!』
『……ごめんなさいですぅ』
いつもの無邪気というか慇懃無礼な態度を見せたエリザベートが、ミーミルに窘められて比較的素直に頭を下げる。
「校長先生の復活、ですか。で、その校長先生が何の用です? 今ニーズヘッグが竜形態になって羽ばたこうとしてるんです、急ぎませんと……」
「分かってますぅ。だから、こちらから迎撃してやるですぅ!」
「……どういう意味です?」
『こちらから迎撃』という言葉に首を傾げる美央。
『こういうことですぅ!!』
エリザベートが拳を高く振り上げて宣言すると、しばらくの後、生徒からざわめきが起こる。
「イルミンスールが……浮上していく……?」
「うわ、ちょっとマジで!? アレって浮かぶモノだったの!?」
「いえ、そのようには聞いていませんが……」
「うわーうわー、すごいなすごいなー! ねーねー、どうやって浮いてるんだろー!」
「……世界樹と契約した地球人のすること、と言う外ないであろうな」
一仕事やり終え、脱力感に身を委ねていたカヤノとメイルーン、セリシアとヴァズデルは、徐々に空へと浮かんでいくイルミンスールを見上げて呆然と感想を呟く。
「……まさか、世界樹そのものを浮かせるとはな。これは誰も予想し得ないだろう」
「確かに、ですわね。彼らにはいつも驚かされてきましたが、これもまた驚きですわ」
ヴォルカニックシャワーを撃ち終え、今は街を守る光の繭『ブライトコクーン』を展開している精霊塔から、ケイオースとセイランが呆気に取られた様子で呟く。
「……地下からの情報がまとまりました」
リュウライザーから情報を受け取り、アーデルハイトが一読する。
地下から『アルマイン』を持ち帰ったのは以下の生徒。
葛葉 翔
遠野 歌菜
高月 芳樹
十六夜 泡
七刀 切
柊 真司
九条 イチル
如月 正悟
神裂 刹那
本郷 涼介
赤城 花音
フレデリカ・レヴィ
茅野 菫
ファタ・オルガナ(レン・オズワルドも同乗して帰還)
なお、戦闘中行方不明は以下の2名。
六鶯 鼎
ナレディ・リンデンバウム
また、戦闘中に消息を絶ったアメイア・アマイアの行方は、なお不明。
(……地下で行方不明では、確実に生き埋めじゃろ。身代わりも用意してやれんかったし……すべてを守りきれんとは分かっていても、実際に失われるとなると、やるせないのう)
報告を読み終えたアーデルハイトが、いつもの椅子に座るエリザベートと、その傍に控えるミーミルを見つめる。
(それにしても、無茶苦茶をやらかしてくれる。どこの世界に、浮遊する世界樹なんぞあるんじゃ。しかも中にはアルマインを始めとして精鋭の魔法使いたち……これでは空想の機動要塞じゃよ)
だが、不思議と安心感に似た感情が湧いてもくる。彼女たちならばおそらく大丈夫だろう、という感覚も。
「ミーミル、行くですよぅ!」
「はい、お母さん!」
エリザベートとミーミルにとっての『機動兵器』イルミンスールが、離陸を始めたニーズヘッグへと向かっていく――。
――そして、イルミンスールが飛び立った後の空間、崩落が起き土に埋もれたそこから、大量の土砂が吹き上げられる。
(……フッ、流石の私でも、世界樹が飛ぶなど予想し得ないぞ。幼き契約者……面白いことをしてくれるではないか)
土に汚れてはいたが、目立った傷は見当たらない様子のアメイアが、自ら守ると言った生徒、ナレディと小夜子を地面に下ろす。周囲を見回し、地面に倒れている1機のアルマインを見つけるが、それには目もくれず、アメイアが思考に沈む。
(……結局、私に合うイコンを見ることは出来なかったか。戯れに世界樹を襲うのも興味深いが、それで何かが得られるわけでも――)
その時、少し遠くの地面から、飛び出す機影があった。
「!!」
それは、全身を鎧のようなもので包まれた機体。勢い良く飛び出したはいいものの、あちこちをふらふらと飛び回っている。
(……あれだ! あれこそが私に合うイコン……! そう、本来の私に最適な……!)
フッ、とアメイアが笑みを浮かべる――。
生徒たちの活躍により、ニーズヘッグのイルミンスールへの襲撃は食い止められた。
その間にイルミンスール地下から機動兵器『アルマイン』を回収し、さらにイルミンスール自身が機動兵器と化すという事態の中、『黒翼の竜』ニーズヘッグとの最終決戦が幕を開けようとしていた――。
To be continue……
猫宮・烈です。
『イルミンスールの大冒険〜ニーズヘッグ襲撃〜 第2回』、いかがでしたでしょうか。
いつものことではありますが、モニターの向こうで皆様が「どうしてこうなった……」と呟いているような気がします。
(それが自分のシナリオである、とも言えますが)
(PC視点で見て)行方不明になったPCは、次回アクションを掛ける際は予め決められた状況からとなります。
どういう状況かは次回のシナリオガイドで明記します。本文中に登場機会もあると思います、ご了承下さい。
アルマインを手に入れた方は、次回のシナリオで運用出来ます。2人以上じゃないと満足に運用出来ないのは、イコンと同じです。
後の設定については、現段階ではルーレンがしゃべっていたのがだいたい公式設定、アーデルハイトが何かブツブツ呟いていたのが自分のシナリオで採用(するかもしれない)設定……ということにしておいてください。
これについては(というよりいつもそんな気がしますが)、『設定は後から付け足すもの』とせざるを得ないようなので。
反省点としては、第1回もそうですが、仕掛けを複雑にし過ぎました。
第3回ではそういう凝ったギミックは用意しないようにしたいと思います。
後はリアクション中、個別コメント等でフォローしていると思います。
……どこかに穴がありそうな気がすると常に思ってしまうのは、まあ、性分です。
それでは、第3回をお楽しみに、よろしくお願いいたします。