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イルミンスールの大冒険~ニーズヘッグ襲撃~(第3回/全3回)

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イルミンスールの大冒険~ニーズヘッグ襲撃~(第3回/全3回)
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リアクション

 
「パラミタには様々な世界樹があることは知っていますよね。その中で何故、イルミンスールを標的としたのですか?」
『あぁ、知ってるぜ。理由はオレが決めたから……じゃどうせ納得しねぇだろうしな。
 ……ラタトスクの野郎がユグドラシルの言葉としてオレに伝えてきたんだよ。イルミンスールへ行け、抵抗せぬようなら喰ってしまえ、ってな』
「オレが決めた……つまり、ニーズヘッグさんは自分の意思・意欲だけでここまで攻めてきたのですか?」
『ま、そんなところだ。ユグドラシルがちょっかい出したのは、テメェらも知ってんだろ』
 
 ニーズヘッグに質問をしていくナナ・ノルデン(なな・のるでん)へ、傍に控えていたズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が思ったことを口にする。
「ねえ、これってイルミンスール進化への試練だったりとかしないよね?
 コーラルネットワークに攻め込んできたり、衝撃波飛ばしたりしておいて、イルミンスールが空飛んだら何もしてこないみたいだし」
 ズィーベンの言う通り、イルミンスールが空を飛んでからというもの、ユグドラシルからのアクションは何もなかった。
 コーラルネットワークに攻め入った後で衝撃波を飛ばせるほどの相手が、それだけでヘバッて何も出来ないとは考え難かった。
「そうですね……一応、聞いてみましょうか」
 ズィーベンに頷いたナナが、その可能性がないかニーズヘッグに聞いてみる。
 しかし返ってきた答えは、『そんなのオレが知るか』であった。
「世界樹以外に食せるものはないのですか?」
『……わりぃ、考えたことなかったぜ。……そういやあオレ、何で生き物の死骸喰ってんだ? ま、昔のことだ、どうせ覚えてねぇな。うめぇモンなら何だって喰うんじゃねぇか?』
「考えたことない、って……何、あれが食べたい、これが食べたい、って考えたこともないってこと?」
『だから、うめぇモンが喰いてぇ、とは考えたぜ? テメェらの食いモンのことなんざ、オレは知らねぇからな』
 人間でも、食に興味がない人ほど、『美味ければ何でもいい』と答えるだろう。
「……分かりました。お答えいただき、ありがとうございます」
 ナナが一礼して、ニーズヘッグの下を去ってい……こうとしたところで、後方から何かを吊り下げた格好の生徒たちが迫ってくるのを目にする。
「丁度よかった。その『うめぇモン』を持って来ましたよ。是非口にしてもらいたいですね」
 シーラ、千雨と共に、イナテミスファーム産の焼き芋を運んできた大地が、ニーズヘッグの口元まで寄り、手にした焼き芋をニーズヘッグへ向けて放る。
 思わず口を開けたニーズヘッグに、その焼き芋が飛び込む。
「どうですか?」
『……分からねぇ。分からねぇけど……喰いたくねぇとは思わねぇ』
「そうですか。ではきっと、美味いんだと思います。ここに来れば、この美味い物がいつでも食べられますよ?」
 一つ、もう一つと、大地が焼き芋をニーズヘッグに放る。これを一生懸命作り、自分に託してくれたコルト、プラ、アシェット、他イナテミスの住民たちを思いながら。
 そしてシーラも、千雨も大地に続いて、動物にエサをやるが如くニーズヘッグに焼き芋を放っていく。
 その焼き芋を無言のまま、けれど嫌がる素振りもなく、ニーズヘッグが食していく――。
 
 沢渡 隆寛(さわたり・りゅうかん)に飛空艇の操縦を委ね、沢渡 真言(さわたり・まこと)がニーズヘッグに問いかける。
 
「一つ、聞かせてください。
 貴方の襲撃の意図は、イルミンスールを傷つけることでイルミンスールの防衛本能を目覚めさせることだったのですか?」
『んなわけねぇだろ。そもそもその世界樹はおかしいんだよ。空飛んだり、かと思えばそこのチビが気狂って暴走したり、何なんだよ一体』
「今チビって言いましたねぇ!? 私はチビじゃないですぅ!」
「そうですよ、お母さんはお母さんです、私じゃないです」
「ミーミル、今のはそうじゃなくてですね……」
 
 エリザベートとミーミルのやり取りを、ひとまず脇において真言が言葉を続ける。
 
「もし、私が貴方と契約することが出来たら、イルミンスールの声が聞こえるでしょうか?
 私は、知りたいのです。イルミンスールが何故このような振る舞いをしたのか、その真意を」
『さあな、オレは少なくとも、ユグドラシルの考えてることは分からなかったぜ。
 テメェがイルミンスールとやらの声を聞けるかどうかなんて、オレは知らねぇし、興味もねぇ』
「……では、貴方の声は聞こえるでしょうか? 私は、貴方の真意も、知りたいのです」
『……知らねぇよ。その契約っつーのを、オレはしたことがねぇ以上、こう言うしかねぇだろ。
 真意つったって、オレがここに来たのはオレがそう決めたから……じゃ納得しねぇんだよな。
 ……出てみる気になったんだろうよ。どっかの物好きな野郎……女の一言でな』
 
 ニーズヘッグの言う女とは、最初にニーズヘッグに話しかけた人のことだろうか、真言がそこまで思い至ったところで、二人に遅れる形だったマーリン・アンブロジウス(まーりん・あんぶろじうす)がやって来る。
「回復役は戦いが始まってからの登場、ってな。少し見ない間に随分とボロボロになったもんだ」
 言いながらマーリンが、ニーズヘッグも含めたその場にいる者たちへ癒しの力を施す。もちろん、イルミンスールやニーズヘッグが目に見えて回復することはない。
『……ったく、テメェら全員物好きだぜ』
 だが、真言が聞いたニーズヘッグの呟きは、どこか刺の抜けた優しい感じがした――。
 
 
「私やセリシアちゃんとだって仲良くなれたんだもん、ニーズヘッグ……ううん、ニーズヘッグちゃんとだって、きっと分かり合えるよ!」
 そう口にしてくれたセリア・リンクス(せりあ・りんくす)の想いも一緒に、彼女が操作する箒に乗って、ルーナ・フィリクス(るーな・ふぃりくす)がニーズヘッグに語りかける。
 
「私達は、歩み寄ることは出来ないのでしょうか。……私は、歩み寄れると思いたいです。
 精霊と人は、この地で絆を結ぶことが出来た。種族を超えた絆は、確かに存在するんです」
『精霊……テメェの言う精霊は、エリュシオンのどっかに住んでるヤツらとはちげぇみてぇだな』
 ニーズヘッグの言葉に、直接は聞いていないものの、精霊長の皆々が『シャンバラの精霊とエリュシオンの精霊』について話をしていたことをルーナは思い出す。
「私たちにも、エリュシオンの精霊のこと、教えていただけないでしょうか」
「あっ、セリシアさん……!」
 そこへ、セリシアとカヤノが地上から二人の下へやって来る。嬉しそうに微笑みルーナに笑顔を見せて、セリシアがニーズヘッグに願うように問いかける。
『オレは、住んでるってことしか知らねぇよ。会ってもねぇ、話したこともねぇヤツらのことなんて、話せるわけがねぇ』
「そうですか……」
 残念がる気持ちを含ませたセリシアの声を耳にして、ルーナが自分がやらなくちゃ、という思いを強くしてニーズヘッグに話しかける。
 ――自分を強いと言ってくれたセリシアに、応えるために――。
 
「なら、ニーズヘッグと私達は、こうして会って、話をしている。だったら、歩み寄ることは出来ると思いませんか?
 精霊……シャンバラの精霊と人も、最初は互いを知りませんでした。だけど、会って、話をして、お互いに理解して、そして共存していくために手を取り合うことが出来ました。
 種族を超えてこんなに想い合えることを、精霊は……セリシアさんは教えてくれました。
 ……だから、ニーズヘッグさんとも、分かり合うことはできると思う……いえ、そうだと信じたいんです……!」