天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

リアクション公開中!

聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost― 聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost― 聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost― 聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

リアクション


間奏曲 〜Intermezzo〜


 某国。
「しかしヴィクター様、七つの大罪といい、クローン強化人間だったり、色々教えて下さるのは嬉しいのですが、そんなにご自身の研究機密を喋ってしまって平気なのですか?」
 水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)ヴィクター・ウェストに問いかけた。
 一つのことを聞くと、派生情報まで聞いてもいないのに喋ってくれる。研究に関して言えば他者にも気前よく振舞っているのだろうが、リスク管理もしないと自分の首を絞めることになりかねない。
 その辺が無頓着であるように、睡蓮には思えた。
「クク、科学とは競争によってより発展するものダ。秘密だなんだといって殻に閉じこもるなド、オレに言わせてみれば愚の骨頂。それは秘密がバレたラ、自分よりいい物が出来、それを自分は超えられないと恐れているからだロ? そうなってモ、『じゃあそれよりいいもの作ってやるよ』くらいの気概がなくてハ、科学者としては三流もいいとこダ」
 くつくつといつものようにいやらしく笑っている。
「リスクを恐れていては何も生まれなイ。禁忌や倫理などという人類が勝手に作った枠組みに縛られていては繁栄などなイ。間違わなければ正しさを知ることはできなイ。科学者とは『知の冒険者』ダ。まア、オレの勝手な持論だがナ」
 信念としては分かるが、よくこれまで殺されずに済んだものだと感心した。一応、護衛として鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)を待機させてはいる。こんな性格だと、うっかりこの研究施設の場所とかも洩らしていそうだ。
「……まあ、それはさておくとしまして。今、地球寺院はほぼ壊滅して、残党の一部がパラミタに再進出、教会とシャンバラ――F.R.A.G.と学院は和解に向かい、評議会の『総帥』は堂々と最終決戦を行うことを宣言……となると、そろそろ新しい出資者が必要になる気がするのですが、目星はついているのでしょうか?」
 これまで、鏖殺寺院、十人評議会、ベトナムやカンボジアの政府高官がスポンサーについていたとのことだが、今後はどうなるのか。
「私がまだ裏の事情に明るくないのはそうなんですが……これから今の環境を維持し続けることが出来るのか、ちょっと不安が……」
「この世界には平和を疎んじているヤツ、道楽三昧な癖に金を持て余してるヤツ、他人をいいように利用したくてたまらないヤツ、そんな連中が腐るほどいル。言ってしまえバ、オレみたいなヤツにとっちゃ超売り手市場ダ。一番環境が良さそうなところにつくとするヨ。現在のリストダ」
 見覚えのある組織の名前も多いが、確かにヴィクターは引く手数多のようだ。
「マ、しばらくは交渉期間になるだろうナ」
 そうなると、しばらくは研究は休止するだろう。助手としての仕事もほとんどなさそうだ。多少の余裕が生まれそうだ。
「その間、私には時間がありそうですので、ちょっと自分の研究をしてみたいと思います。イコンの研究・開発に関わるお話ですが……とりあえず、機晶技術の観点から性能の向上案を」
 それについて、軽く説明する。
「機晶エネルギーの『電力』に変換できる性質を利用し、通常の機晶コーティングの上に新たな特殊装甲を設けられないものか。具体的には、電磁力で発生させた斥力と熱量を利用したリアクティブアーマーのようなものでしょうか。磁力は関節の駆動に適用させ、運動性向上を図るのもいいかもしれません。
 私にはまだ知識や技術がありませんから……まずは既存の分野からやってみようかなと。これを実用化に向けるとすれば、普及可能な部分から、という感じですかね? 他の研究分野の詳細は九頭切丸にお力添えを請うこともあるかもしれませんが……そのときは宜しくお願いします」
 他の分野に関しても、ざっと伝える。
 機晶石を媒介とした機晶姫とのリンク……要は機晶姫をイコンのユニットとして組み込むもの。
 機晶エネルギーによる搭乗者強化。機晶エネルギーが直接人体に作用する性質を利用し、パイロットへエネルギーを流すことで、精神状態や身体能力をコントロールする機能を搭載出来ないか。
 なお、実は天学の覚醒はその性質を利用しているため、限界性能を引き出しても、パイロットが耐えられている。そのことはほとんど知られていない。
 そういった技術は機晶姫以外の種族にも適用出来るか、それに付随して何が必要になるか、などである。
「その辺はオレの専門外だガ、スポンサーの意向によってはやらねばならないだろウ。まア、助手が望むなら力を貸さないわけにも行くまイ」
 ふと気付くと、足音が聞こえてきた。
「おっト、客人のようダ」