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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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「ただいま戻りました」
 聞き取り調査に行っていた小尾田 真奈(おびた・まな)が帰ってきた。
「おお、何か収穫はあったんか?」
「現場まで行ってみましたが、襲撃された場所に共通点はありませんでした。被害者の中には自身の研究室や自宅で殺害されている方もいますから、犯人は場所を選んでいないと言う感じがしますね」
「ここ最近で普段と違った様子があったりとかは?」
「ご遺族やご近所の方に伺ってみましたが、これといって何も。殺害される日までいつもどおりだったと」
 真奈は被害者の襲撃当時の所持品リストを開いた。
「被害者の襲撃当時の所持品の共通点、また紛失しているものを洗ってみました。殺害された研究者の内3名が研究資料を紛失しています。ただどのような資料だったのかはわかりません。”極秘に進めていた研究”らしく、紛失した記録媒体以外にバックアップを残していなかったようです。以上の点を踏まえますと、残る2名の研究者の研究資料も紛失している可能性がありますね。彼らも極秘に進めていた研究があれば、紛失したとしても警察は気付けませんから」
「なるほど。”極秘の研究”か。そりゃ気になるとこやな」
「あと、必要なデータは破壊されたプラントのデータですね」
 メティスは言った。まだプラント調査班からの報告はこちらにまで上がってきていなかった。
「この2ヶ月の間に破壊された施設は例のプラントの他に3件あります。先々月に、北区の倉庫区画で大型倉庫が破壊されています。何か強奪されたと言う事はありませんが、倉庫を引っくり返したように徹底して荒らされています」
「もう2件は?」
「被害者の一人、ニコラス博士の研究所が火事で消失しています。それと同じタイプのエネルギー開発系のラボラトリーが何者かに襲撃され、研究データが奪われ、建物が全壊しています。こちらは夜間のため被害者はいませんでした」
 とその時、扉が開き、ルカルカが帰ってきた。しかし浮かない顔をしている。
「……なんや景気の悪いツラしてるな。思うように成果が上がらんかったんか?」
「ご名答。折角、手がかりを掴んだんだけど、聡に聞いてもどこを調べても”G計画”なんてもの出て来なかったわ」
 ルカルカは印刷したサイコメトリ画像をホワイトボードに貼付けた。
 ふと、陣の携帯が鳴った。
「お、ちょうどプラント組から連絡や。……朝斗くんか?」
『こちらの調査はあらかた終わったよ。調査結果を端末に送るから、そちらで目を通して』
「ああ、ありがとうな」
『……ところで、陣さん。旧体制の暗部の件は何かわかったのかい?』
「……いや、まだ調べてへんが、今の様子だとその辺は無関係な気がするわ。警察が裏で手を引いてる感じはないな」
『そう、ならいいんだけど……』
 転送されたデータを真奈に記録してもらい、メモリープロジェクターを使って、壁に投影させた。
「関係者の名簿か……。ほう、思った通りや、ニコラスと紺野がこのプラントに出入りしてるな」
「まったく無関係と言うわけではないと言うことか」
「開発さていたのは新型の燃料。納品先が天御柱学院ですか……しかも普通科、気になりますね。ところで、陣さん。このプラントで作られていた燃料は今、何処のプラントで作られるようになっているか、わかりますか?」
 メティスの質問を受けて、陣は転送されたデータを確認する。
「敵の狙いはまだ特定は出来ませんが、もし敵の望みが未達成なら同程度の施設が狙われる可能性は高いです」
「……製造されていたのは特殊な燃料だったらしい。同じものを作れるプラントは無さそうやな」
「あ」
 ルカルカが声を上げた。
「あぁーーっ!! ”G計画”! あんなに調べて出て来なかったのにこんなところに名前がある!」
「……残念ながら名前だけで内容は不明のようだが?」
「あ、そうなんだ……」

「ところで、少し非現実的な話かもしれないが、ひとつ可能性を提示してみてもいいだろうか?」
 思わせぶりなレンに、陣とルカルカは顔を見合わせた。
「なんや、もったいつけんと教えてくれ」
「そうだよ。意見はなんでも出して行こうよ。何が手がかりになるかわからないんだし」
「……”現在”と”過去”で繋がりのない被害者同士が”今後知り合う可能性”はあるのだろうか?」
「?」
「今回の依頼を受けるに当たり、天御柱学院を訪れたところ”未来人”の存在を主張する生徒たちがいた。まさかとは思うが、その”可能性”も視野に入れると捜査の範囲は格段に広がる」
「……面白い話やな」
 陣はまとめた資料をパラパラとめくる。
 すると共通点が見えてきた。ニコラスと紺野は来月、天御柱学院に教授として招かれる予定になっている。
「そう言えば、ブルークも天学の教授だったな……ん?」
「どうした?」
「いや、招聘先が普通科なんや。こいつらみたいな技術者やったら整備科のはずなんやけど……ん、待てよ。ブルークも来月、普通科に異動の予定になっとるわ」
「有能な研究者を普通科に集めていると言う事か……。何かありそうだな」
「……もうひとつ、海条氏が担当していた案件を洗っていたところ、面白い話が見つかったぞ」
 サーファー刑事と一緒にカルキノスが資料室の奥から出てきた。
 ホワイトボードに一枚の写真を貼付ける。海京のどこかで撮影された教会の写真だった。
「その教会には見覚えがある。最近、海京に進出してきた空京の”グランツ教”だろう」
「ああ、空京で熱心に布教してる教団ね」
「そういや、ここにくる途中も何度か街頭演説しとるの見かけたわ」
「海条氏は海京防衛の責任者だ。治安維持にあれこれと手を回していたようなのだが、それに関連して、グランツ教の内偵を進めていたらしい。事件に教会が関わっているのではないかと疑っていたようだ」
「うーん、あんまりイメージが湧かないわね。あの教団は慈善事業に熱心だし、活動もとても穏やかなものだよ?」
 ルカルカが首を傾げると、カルキノスも同意した。
「俺も悪い噂を聞いたことはない。事実、これまで何の不祥事も起こしていない。だが、海条氏はそう思わなかったのだろう。連続殺人・破壊事件が起こり始めたのが二ヶ月前、グランツ教が海京に進出してきたのも二ヶ月前、この一致が彼には引っかかったようだな」
「グランツ教の内偵は警察内でも、秘密裏に進められてい事案だ」
 サーファー刑事は言った。彼も内偵捜査に関わっていた人間の一人だった。
「グランツ教の信者は多いからな。下手に踏み込んで何もなかったじゃ、海京警察の信用もガタ落ちだ」
「信用ガタ落ち済めばええけど、あの教団の規模だととんでもない大問題になりかねないしな」
「そう言うこった。だから、この案件はごく限られた人間しか知らねーんだ」
「……グランツ教か。調べてみる価値はありそうだな」
 元刑事であるレンは、直感がざわざわとざわめくのを感じていた。