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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第1回/全4回)

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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第1回/全4回)

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プロローグ


  

「まぁ大体『高みの見物』を決め込む時っちゅうんは相場は決まっとるもんや」



 コンロンで調査団が足止めを食らっている最中、そう一人呟いたのは 瀬山 裕輝(せやま・ひろき)だ。
「一つは、ただ暇つぶしにソイツの実力が見たいだけ。一つは、自分が相手よりも優位だと思い込んどるが故の傲慢から。そして一つは、何かの機を待っとるから―――や」
 思惑入り混じり、張り詰めた空気の漂うコンロンから敢えて背を向け、裕輝は単身、エリュシオンへと向っていた。エリュシオンの次期皇帝候補、と言われているらしい「荒野の王」という人物を探るためだ。
「実力を見せ付けて優位に立とうとしとんのか……いずれにせよ、情報が足りんわな」
 先んじるべきか、泳がせるべきか。それを判断するにもまず、実態を調べなければ、と先を急ぐ裕輝がふと顔を上げると、その視線の先で、雲の隙間に何かが小さく動くのが見えた。
「……竜?」
 それは、上空を飛行する一頭の竜の影だ。どうやらこちらへ向っている、と、裕輝が気付いた次の瞬間には、風を切る音と共にその姿が一気に地面へと近付く。
「ありゃあ……」
 そして、その姿が見知った相手であるのに、裕輝は目を細めた。



「すんまへん、電波が悪うて……」
 飛行する竜の背中で、電話の相手に申し訳なさそうに言ったのは第三龍騎士団の天才剣士キリアナだ。どうやら電話の内容はあまり良いものではないらしく、その表情は優れない。
「そうですの……おおきに。ほな、現地で……何やあったら、よろしゅう」
 見えない相手ながら頭を下げつつ、通話を切ったキリアナは、ふと視線の先に何かが動くのに、自らの竜の首をぽんと叩いた。
「エニセイ、速度落としておくれやす」
 主に応えて速度を落とした竜の背から見下ろすと、その影はどうやら人のようだ。こちらに向けて手を振っている、所まで判って、それが見知った者であるのに気付いて、キリアナは、更にその高度を下げるとふわりと竜を地面へと降ろした。
「お久しぶりやね。こんな所で、どうしはりましたん?」
「ちょいと観光や。何でも、荒野の王……言うんが出てきたんやて聞いたんで」
 エリュシオンに何か用事でもあるのだろうかと首を傾げる様子に、にっこりと人を食った物言いをした裕輝に、その凡その目的を察してか、キリアナは僅かに眉を寄せた。
「あきまへん、今の内に引き返しなはれ」
 緩く首を振って、キリアナは続ける。
「今、他国の……それもシャンバラのお人が、つて無くエリュシオンをうろつくのはあまりお勧めできまへん」
「なんでや?」
 裕輝が首を傾げるのに、一瞬躊躇ったキリアナだったが、言わなければ恐らく裕輝は納得しないであろうことも判っている。どちらにしろシャンバラ国軍の情報部は恐らく情報を手に入れているだろうし、いずれはパラミタ全土にも伝わる話だ。溜息をつきつつも口を開いた。
「まだ公にされてへんけど……アスコルド大帝が、崩御されたんどす」
 その情報には、流石の裕輝も思わず目を見開いた。それが真実なら、確かに今のエリュシオン国内へ迂闊に他国人、それも嘗ては敵対していたシャンバラ側の人間がうろつくのは危険だろう。だが、同時に裕輝は浮かんだ疑問に目を細めた。
「けど……そしたら、何でキリアナはエリュシオンを出たんや?」
 第三龍騎士団は、ユグドラシルの防衛が主な任務の筈であり、皇帝が崩御したのであれば、セルウスの捕縛に関わっている場合でもないのではないか、と。飄々としつつも探りを入れてくる目線に、キリアナ苦笑し「これも仕事やし」と目線をすっとコンロンの地へと向けた。


「ウチは迎えに行かんとあきまへんのどす。あのお人を……」