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【歪な侵略者】鏡の国の戦争(第1回/全3回)

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【歪な侵略者】鏡の国の戦争(第1回/全3回)

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鏡の国の戦争 19


「ヴァロア少尉、皆を―――いえ、尉官以上に集合を」
 本隊からの通信を終えた羅 英照(ろー・いんざお)は、すぐさまジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)にそう指示を出した。
 英照の表情を読むのは非常に難解だが、それでもこれがいい知らせではないというのをジャンヌは感じ取った。
 かくしてその予感は事実であり、精鋭部隊による黒い大樹の攻撃は失敗し、敵地から脱出ができのは全体の三割程度だったと告げられた。
 イコンの搬入実験の成功、本隊が予想以上の進撃を行い戦果と物資を回収したこと、そして自分達が空港を奪還したこと。いいニュースばかりが飛び交っていた中で、この悪報は事実以上に衝撃的だった。
 脱出に成功した精鋭部隊には負傷者が多く、本隊から迎えに行くための追加部隊が出撃したところだという。敵の追撃も続いており、彼らが無事に逃げ切れるかどうかは、この場にいる者達は祈る以外の手立ては無かった。
 彼らの無事と、誰が脱出でき、誰が確認できなかったのか、詳しい報告が届くには、朝まで待つ必要があった。



 アナザー・コリマ率いる本隊は、精鋭部隊と合流を果たすと、一部の基地の防衛に人を残し、ほとんどは千代田基地に帰還した。
 千代田基地は、彼らが出立した時と大きな違いは、国連軍のほとんどが見た事のない、巨大な兵器、イコンが整列していた事だ。
 千代田基地はそれからしばらく、ごたごたとした時間が続いた。負傷者の手当てや、脱出した精鋭部隊からの聴取、持ち帰られたデータの分析。
 昼夜の無い喧騒の中に、ひょっこりと一人の人物が静かに帰還した。
 帰還した紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、道行く人にアナザー・コリマの居場所を尋ねて進み、いくつかの場所をたらい回しにされたあと、結局彼の私室で姿を確認した。
「伝言を、預かってます」



「随分と派手にやられたな、遊びが過ぎたと反省したか?」
 帰還したダルウィは、黒い大樹を見上げる。
「やけに帰りが遅いと思ったけど、他意があったんだね。やんなっちゃうなー」
「不貞腐れるな。しかし、お前が出迎えとは珍しいな」
 ダルウィは出迎えにきたザリスが、銃剣を担いでいる事に気づいた。
 ザリス達に立場の優劣は無いが、それでもほとんどの場合は長刀か素手のザリスが対応するのだ。
「長刀は負傷して治療中、素手はなんか知らないけど応答せず、ついでにハンマーは死亡。剣のも、なーんか気に入らない事があったみたいで、仕事をサボってるね。僕と鞭だけで仕事しなきゃいけなくなって困ってるよ」
「普段は誰も仕事などしておらんではないか。それはまぁ、よい。面倒ごとは引き継ごう。して、捕まえた奴らはどうするつもりだ?」
「あー、それなんだけど、処刑しようと思って」
「……ふむ、随分と思い切ったな」
「でしょ? せっかくだから、遊びに来てた変なお面のオリジンの子に伝言を頼んであるから、もうそろそろ伝わってる頃かな」
「随分と用意がいいな、オリジンの子とやらについては聞かなかった事にしておく」

「せっかくだから、公開処刑がいいよね!」