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リアクション
「これから、浮遊島はどうなっていくのかな?」
フェイの声で、ベルネッサが我に返る。答えたのは凶司だった。
「なんでもクドゥルさんや、あの……ガーノさんでしたっけ? あの方たちがまた騎士団の設立を目指すそうですよ」
「新クォーリアの騎士ってわけかぁ」
「今度はいまの浮遊島の人たちの生活に極力干渉しない形で守っていくそうです。機晶石の在り方を見守っていきたいと言ってました。まあそうは言っても、ずっと神殿暮らしは退屈だから地上に遊びに行きたいとも言ってましたけど」
「げぇ……今度は敵同士っていうのは勘弁してよー」
フェイはうなだれる。それを見て、凶司とベルネッサはくすくすと笑った。
「あー、えっとそうだー、と、ところでー……」
凶司が実にわざとらしく話題を変えた。
「その、ベ、ベルは、この後はどうするか、き、決めてるんですか?」
「この後?」
ベルネッサは聞き返して、うーんと考えこんだ。
「どうしようかな……でも、みんなとはここでお別れになるのね」
「寂しい?」
フェイがたずねる。
「うん、ちょっぴり……」
ベルネッサが言うと、フェイは彼女のポニーテールの髪を引っぱった。
「いたたたたっ! な、なにすんのよ!」
「いつまでもしょぼくれてんじゃないの。会おうと思えば、いつだってまた会えるんだから。うちの馬鹿が言ってたわよー。『ダチとは絆で繋がってるからどこにいたって一緒だ!』ってね」
「ダチ?」
「違う?」
お互いに首をかしげあった二人は、やがて一緒になって笑った。
「そっか。そうだよね、ダチだもんね」
「そういうこと! だから、遠慮せずまた冒険に誘ってよね!」
フェイはそう言ってベルネッサの肩を小突く。
「そ、その、ベ、ベベ、ベル……」
凶司はあからさまに緊張した顔でベルネッサに話しかけた。
「ん?」
「そ、その、よ、よよ、良かったら……い、行くところが、なな、なければ、僕とい、いい、一緒に、パパ、パラミタに……」
そのときである。
ゴオオオオォォォ!
後ろのほうで、空から巨大な影が降下してきた。
「あ、もう来たみたいね」
ベルネッサたちを迎えに来た飛空艇である。
「おーい、こっちよー!」
ベルネッサとフェイの二人は手を振りながら、飛空艇に近づく。
凶司は目をつむっていてそれにまったく気づかず、なにやら続きを口にしていた。
「そ、そし、そして、ぼ、ぼぼ、僕と、お、おお、おつっぃだっ!」
舌を噛んだらしい。
そして、ようやくベルネッサたちの姿がないことに気づいた。
「あ、あれ?」
「凶司ー! はやくしないと置いてくわよ−!」
「いつのまに……」
ベルネッサとフェイは飛空艇のタラップに足をかけていて、凶司は呆然。
彼は仕方なくため息をついて、飛空艇に向かった。
「それで? 結局どうするの、これから?」
凶司を待っている間に、フェイがたずねた。
「うーん……いまさら地球に戻ってもしょうがないし……」
考えこむ顔でそうつぶやく。
「しばらくパラミタで過ごすっていうのも、悪くないかもね」
その答えを聞くことなく、凶司がようやく追いついた。
「それじゃあ、出発してー!」
ゴオオオオオォォォォ……――
飛空艇が飛び立ち、丘の上には誰もいなくなった。
そのとき一陣の風が吹いて、ベルネッサの置いた花束の花びらが風に舞った。