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古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』

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古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』

リアクション

 「刀真くん。ボクはあの子を……ルピナスを止めたいんだ。
 ボクは、ルピナスはごく普通の女の子だってことが分かったから。今はちょっと自棄になっちゃってるだけだから」
 桐生 円(きりゅう・まどか)にそのように言われ、刀真はルピナスを早々に滅し、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)を助けに行きたい思いを押さえつける。
「刀真、白花とはなんとか連絡が取れるよ。今はケイオースとセイランと一緒に居て、結界を張ろうとしてる。ルピナスが利用しているミーナの力を抑えようと頑張ってるよ。
 だから、私達も行こう。ルピナスを止めよう」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)にも言われ、刀真は大きく息を吐く。自分のこれまでの発言を振り返り、今ここで力のままにルピナスを滅ぼす事はそれらに反する、と結論付ける。
「……分かった、俺も行こう。おそらくルピナスの元には、彼女を殺そうとする契約者も居るはずだ。特にアルコリア……彼女が諦めるとは思えない。彼女は死ぬまで退かないだろうな」
 厳しい戦いになる、そう告げる刀真に円と、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が了解したように頷く。
「道案内は任せて。白花が位置を教えてくれてる。そこに着いたら後は真下に降りていくだけだって」
 月夜を先頭に、一行はルピナスを追いかける。
「契約者の力を取り込んだ、ねぇ。それってどうなるのかしら。再生能力は無くなったのかしらね」
 オリヴィアが“知った”情報を耳にして、円は思案にふける。
(ボクとキミは、一度は分かり合えた筈。けれどキミはボクと、契約者と決別する道を選んだんだね。
 契約者を取り込んだ……キミは人の痛みを取り戻したのかい? ……いや、元々無かったのを新しく得たのかな。
 それでキミはどうなった? 今でもやっぱりボクとバイバイ、の気分? そうじゃなかったら、ちょっとでいい、話を聞いてほしいな)


 刀真はアルコリアの斬撃を、黒の剣と白の剣の剣技で四撃までは食い止める。しかしその頃には体力も限界に来ており、次の一撃を受け切ることは出来なかった。
「刀真!」
 アルコリアの五撃目が刀真を襲う、そこに月夜が割って入り、剣の花嫁の力、具現化させた剣を盾代わりにすることで攻撃を受けるのを代わる。六、七、八撃目までは防ぎ切るが、月夜も次の一撃を受け切ることは出来なくなっていた。
「そんじゃーあと残り、ミネルバちゃん頑張っちゃう!」
 最後は円の援護を受けたミネルバが、アルコリアの残り二撃を受け切り、大剣を振るってアルコリアを遠ざける。その間にオリヴィアは疲労した刀真と月夜に治癒魔法を施す。
「……なんとか、死なずに済んだな」
「うん……正直、死ぬかと思ったよ」
 改めて、契約者を一発死に陥らせる攻撃を十連続で放つアルコリアに脅威を抱く二人。だが流石のアルコリアも今の攻撃は負担だったらしく、その後すぐの行動には移ってこない。
『皆さん、聞こえますか?』
 その時月夜の端末を通じて、白花の声が届く。
「どうしたの、白花?」
 通信に答えた月夜へ、白花は朗報をもたらす。
『ミーナさんが解放されました! 直に樹木の活動も停止するだろうとのことです』


 ミーナ解放に当たって効果を発揮したのは、結界はもちろんのこと、静麻のハッキングから得た情報を元にした対策だった。
「……なるほど、この樹にミーナの存在が散らばってんなら……なんとかしてかき集めて後はここから脱出させれば、やれるかもしれないな。
 お二人さん、その時はもう一度アレをやってくれると嬉しいんだが、出来るか?」
 静麻の頼みに、アルティアとイグナは快く頷く。それなら決まりだ、と静麻は端末を操作し、早速準備に取り掛かる。
「おーい、つうわけでもうちょっと頑張ってくれ。必ずミーナは助け出してやる」
 通信で、結界を張っている者たちに呼びかければ、『本当でしょうね? そろそろキツくなってきたんだけど?』とカヤノの声が返ってきた。
「そんな声が出せるうちはまだ大丈夫だろ。……心配するな、今準備が終わったところだ。それ、行って来い!」
 冗談っぽく答え、ッターン、と最後のキーを静麻が叩く。モニターには中心に向けて集まる球状の何か、下部にはゲージが表示され、それは少しずつ満たされていく。
「60、70、80、90……100! よし、後は目の前の壁を切り裂く! 頼んだぜ嬢ちゃん」
「はい。……ミーナさん、ここからどうぞ、帰ってきてください……!」
 アルティアが剣を抜き、突き入れる。傷口が十分広がったのを確認して抜けば、モニターで球状だったそれが現実に飛び出してきた。

「……はぁ。完全に僕の失態だなぁ、これ。
 みんなにいっぱい、迷惑をかけちゃった」

 そして、反省の言葉を口にしながら人の姿になったミーナが、彼を助けるために力を尽くした者たち全てへ向けて、お礼の言葉を発する。

「まずは、ごめんなさい!
 そして、ありがとう!」



 白花の言う通り、根の動きが少しずつ弱まっていくのが見えた。
「……円、話をするなら今をおいて他にない。行って来い」
 刀真に言われ、頷いた円はルピナスの所へ行く。度重なる戦闘でルピナスの身体には無数の傷が付けられ、それは再生すること無く残り続けていた。
「……円さん」
 どこか弱々しく聞こえるルピナスの声、そういえば名前を呼ばれたのは初めてなんじゃないかな、円はそう思いながら口を開く。
「どこから話したらいいかな。話そうとしたことのいくつかは忘れてしまったよ。
 そうだなぁ……キミの大切な人の事、聞いてもいいかな? 君の望み、願いって前に言った、その人に関係してるの? 取り戻したいとか、そういう事?」
 円の問いに、ルピナスはしばらく沈黙して、やがてぽつり、ぽつりと語り出す。
「……その人は、カリス。
 わたくしにルピナス……『ずっと幸せ』の意味を持つ名前をくれた人ですわ」


 ルピナスの“奥”を進む綾瀬の前に、一人の男性がスッ、と現れる。
「あなたは……」
 突然現れた彼を綾瀬が見ると、白衣を着た男は優しげな笑みを向け、こう名乗った。
「私はカリス・アーノイド。彼女の生みの親であり、名付け親であり、そして……彼女の最初の『被捕食者』だよ」


 根の活動が徐々に弱まっていくのを見て、竜造は何らかの妨害を受けた結果だと判断する。こうなってはいずれ先に進むことが出来なくなるだろう。
「別の手段を探さなきゃなんねぇ……その為にもルピナス、テメェが必要だ」
 そう口にし、竜造が振り返る。しかし彼を行かせるわけにはいかないと、シグルズがスレイプニルを駆って迫り、電撃を散らして牽制する。
「雑魚が、オレの邪魔をするなぁ!!」
 叫び、大剣を抜いた竜造の斬撃が、スレイプニルを一刀両断する。愛馬をやられたシグルズは地面に落ちるが、すぐに起き上がってやはり大剣を構える。
「対象は違ったが、やることは一緒のようだ。体は傷つこうとも、足を引っ張るくらいはできる!
 大人って辛いなぁ、はっはっはっはっは。……さあ、僕らの悪あがきに付き合ってもらおうか」


 ミーミルがようやくのことで辿り着いた時には、ルピナスと契約者の戦闘は膠着状態に陥っていた。それよりもミーミルはその先、根の先端付近で行われている戦闘に着目する。
「! お父さん!」
 戦っているのがアルツールと知ったミーミルが駆けつけた時には、シグルズは倒れ、『レメゲドン』も本の姿に戻り、それを抱くエヴァも肩で息をして辛そうにしていた。
「チッ、一人加わりやがったか。じゃあテメェの相手は終わりな!」
 必死の防戦をしていたアルツールが、竜造の大剣で杖を飛ばされ、蹴りを懐に喰らって吹き飛んでいくのがまるでスローモーションで再生される。
「――――――!!」
 どんな声を出していたか分からない、ミーミルは掌に力を溜めると、それを竜造へ向けて放つ。
「お、おおおおおおおお!?」
 瞬間の速さで迫ったそれを避け切れず、竜造は剣を構えて受け止めるが押され、そしてまだ掘っていた根の穴の先へと足を滑らせ、落ちてしまう。
「がはっ!!」
 何かに叩き付けられるようにして、竜造は落ちた先に全身を打つ。朦朧とする意識、そこに響く声があった。


『――これが、お前達の意思だと言うのか』


「オレの意思だぁ……なにワケ分かんねぇこと言ってやがる。
 ここがオレが目指した先ってんなら、姿を見せやがれ!!」


 竜造が叫ぶ、すると地響きが辺りを揺るがしたかと思うと、竜造の意識は“それ”に取り込まれるようにして消えていく。
 その付近に居た契約者も、地下からせり上がるようにして出現した“それ”に取り込まれ、意識を失う。

 ――やがて、“それ”は地上へと、空高くへと飛び、ある高さで静止する。
 “それ”こそが、『天秤宮』と名付けられ、この世界の住民に対する“敵”として君臨する存在だった――。


古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』 完

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮です。
『古の白龍と鉄の黒龍 第4話『激突、四勢力』』リアクションをお届けします。

正直色々と足りてない部分があるのですが……!
そこは次回フォローさせていただきます。

各地の状況を以下に記しておきます。

『龍の耳』:一大勢力であった『オリュンポス・パレス』が沈んだため、膠着状態になりました。
また、もう一つの一大勢力であった“灼陽”も、ある事情により(リアクションで分かります)戦闘行為を止めたため、膠着状態になりました。

『龍の眼』:『執行部隊』と『疾風族』の戦闘は、契約者の介入もあって膠着状態になりました。

『契約者の拠点』:ミーナが契約者の行動の結果、解放されました。
ただ、地下から出現した『天秤宮』に押し上げられる形で、『天秤宮』と共に存在しています。

『深峰の迷宮』:最深部から『天秤宮』なるものが出現、それは契約者の拠点ごと空中へ浮かび上がりました。

足りない部分で補足できるのがあれば、今後マスターページにてまとめたいと思います。
第5話は……もう第4話のような事はしたくないので、頑張って早めに出します(反省

それでは、また。