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血闘! 瞑須暴瑠!(べいすぼうる)

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血闘! 瞑須暴瑠!(べいすぼうる)

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第2章 乱闘
「ベア・ヘルロットさんたちが実況席を出て行ってしまいましたので、私ナナ・ノルデンがあとを引き継いでいるのです。現在乱闘が続いているのですが、主審のマギステルさんと一塁審の緋桜さんは退避、三塁審のにゃん丸さんは止めようとしています」
 10番ハマティーがバットを持って走り出す。ベンチから何人か興奮した選手が武器を持って飛び出してきた14番姫宮、15番遠野とそのパートナー龍神丸 秋桜(りゅうじんまる・こすもす)だ。
 人間の立ち振る舞いというのは体格や訓練にもよるが、なにより心の持ちようによって変わる。教導団員たるハマティーの姿勢はいかにも訓練を受けたもので、重心を低く安定させての移動である。ボールによる投擲を警戒してのものだ。パラ実の生徒である姫宮や遠野はそうしたことは気にも留めない。近接戦よりも間合いを取っての戦いを重視するはずのソルジャーなのに、まったく気にせず突貫していく。勝算あってのことなのか? 監督の切縞に聞いた。
「パラ実生にセイバーやナイトはいねぇから、ローグやソルジャーが突撃するんだよ。どうせ相手もローグやソルジャーだしな。まったく、いきなり乱闘をはじめやがって」
 タイタンズは各校からの選手が集まっているが、野球軍側にはパラ実生しかいないのだ。
「ハマティー・インパクトォォォォォォ!!!」
 ハマディーが一瞬にして相手をふたり殴り倒す。セイバー特有の身のこなしだ。
「卑怯なことをやってくんなら、こっちも容赦はしねぇぜ」
 小柄な姫宮が殴りつけた野球軍選手が、信じられない距離を吹っ飛んでいく。この怪力はドラゴンの力と見て間違いない。
 遠野はやみくもに戦っているようだが、どうも野球軍選手多数に囲まれてしまった模様。もともと選手の数が5倍以上と無理からぬことだ。機晶姫である秋桜がパートナーの異変を察し、支援に入る。
「御龍、ダメージ大。生命に危険。今からあなたの回復を行います」
「よ、余計なことを…そんなことより敵を潰しなさい!…でもありがとう」
 興奮したのか観客席から何人か飛び込んだ。あまりに素早く、とっさには誰だったのかもわからないが、どうやら応援団の人間が仲裁に入ったようだ。バーストダッシュを使ったのだろう。野球軍選手とハマディー選手が引き離されている。両選手を押さえている姿から、飛び込んだのはツィオ・シュティレ(つぃお・しゅてぃれ)とその相棒バルディエ・ストラ(ばるでぃえ・すとら)だとわかった。

 しばらく乱闘が続いて、両陣営ともだいぶ落ち着いてきたようだ。スキルを使うと気力も尽きる。そうでなくとも人並みの能力しか発揮できなくなったりして、乱闘を続けるのが難しくなってきたのだろう。ここで審判がもう一度乱闘を中止するよう勧告、タイタンズはベンチに、野球軍は守備に戻った。
 3メートルはあろうかという巨漢、ジェイコブ・ヴォルティ(じぇいこぶ・う゛ぉるてぃ)が気絶した選手や乱入者をつまみ出す。一見するとパラ実の改造学生のようだが、当人はパラ実の生徒を怖がって入学しなかったのだ。
「ここは野球で勝負を付ける所だ。それができないなら出て行け」
 野球軍側はパートナー契約をしていない選手も多いため、多数の負傷者が出た模様。現在残り選手の数は81名。
 さて遅くなったが、デッドボールの扱いについて『瞑須暴瑠』ではどのように処理がなされるのだろうか。ルールに詳しいコーチに聞いてみよう。
「打者が生きているので問題ありませんわ。王選手は一塁のベース上に置かれます。」
 一塁審の緋桜が王選手を引きずっていった。試合再開だ。

第3章 魔球陥落
 1回の表、タイタンズの攻撃。1塁には気絶した王選手、バッターボックスには2番蒼 穹選手が入っている。教導団員ながらタイタンズの助っ人で参戦だ。
「まあ、たまにはまじめに運動するのも悪くない」
 さてストレート番長による投球、再び魔球『硬(光)球』が光って唸る! またも狙いはビーンボールか!
「狙いがわかっているのに喰らうものか!」
 ストレート番長投球が単調すぎたのか、蒼選手弾道を見切っている。うまく回避して判定はボール。ムキになったストレート番長、ビーンボールを狙い続けるがすべて避けられ、フォアボールで穹選手進塁。肝心の1塁には王選手が寝ているが、2塁上に動かされた。
 ストレート番長、なにか様子がおかしい。タイタンズ助監督のルーシーが何かに気づいたか、3番国頭選手を呼んで指示を出す。国頭選手納得した様子で打席に入りるが、手にしているのはバットではなく、光り輝く大型拳銃だ!
「こまけぇこたぁいいんだよ!! 光条兵器には光条兵器だぜ!」
 国頭選手も光条兵器の使い手だったのだ。奇しくも魔球対魔……バット? 対決という図式! ストレート番長、必死の形相で投球! 心なしか光も衰えている。国頭選手構える……が打たない! 二球目も振らない! ツーストライク、三球目で国頭選手が勢いよく振る! これは大きい! 打球はぐんぐん伸びてパラミタ大荒野の果てへと消えていく! ホームラン!
 ストレート番長、ばったりと倒れ伏す。どうやら精魂尽きてしまった模様。王選手、蒼選手、国頭選手が本塁に戻ってタイタンズ先制3点を獲得。ルーシー助監督にインタビュー。
「(サングラスを光らせつつ)あの魔球には弱点があったんですねぇ。光条兵器は使用者の精神力を消耗させるんですよぉ。調べたかぎりだと、普通は30分と保たないんですねぇ。」
 ウィザードでもないかぎり、光条兵器は10数分で限界を迎えるようだ。そんな過酷な魔球を連発していたのかストレート番長。1回表の途中で倒れたのも無理からぬこと。そんな彼に野球軍新監督、茅野 菫から非情のコメント!
「ふん、ひとり倒しただけかよ。使えねーな。ま、この調子でタイタンズを全滅させればあたしのチームの勝ちだからな」
 四天王を倒す少女とはこのようなものなのだ。
 さてここで先制点に盛り上がるタイタンズ応援席のようすを見てみよう!