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イケメン☆サマーパーティ

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イケメン☆サマーパーティ

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ゲーム屋に集う人々

「またハズレ……このクジ、ハズレしか入ってないんだろっ!」
 藍園 彩(あいぞの・さい)が運の無さを嘆くように空くじを地面に叩き付けた。もうかれこれ何回挑戦したのか数えるのもいやなくらい、参加賞のようなキーホルダーやメモ帳ばかりを貰っている。このままでは、他のゲームが出来ないかもしれない。
「ふ、ふん。運任せなのが悪かったんだ。ここはスマートにダーツなんかで景品を勝ち取るのがオレらしいよな!」
 気合いを入れ直して店を変えようとしたとき、どこからかカコカコと軽快な音が響いてくる。
 一体何の音だと発生源を探そうとするが、それは以外と近くまで来ていたようだ。
 ――ドンッ!
「……ったた、ごめん。大丈夫か?」
 彩に体当たりをしてきたのは、青い浴衣に下駄と和装の結城 翔(ゆうき・しょう)。90度に曲がった地図を持っている様子から、道に迷っていたのかもしれないが、機嫌が悪い彩にぶつかるのはタイミングが悪かった。
「大丈夫じゃない! 今ので運をお前に吸われていたらどうしてくれるんだ?」
「お、やんのか? 火事と喧嘩はどっかの華らしいぜ!」
 素早く構えに入る翔を一瞥すると「上等だ」と腕を組みながら不敵な笑みで答えた。
「丁度1人でまわって退屈してたんだ。ダーツで決着をつけようじゃないか」
「乗った!」
 こうして、ダーツ対決をすることになった彩と翔だが、すでに露店では白熱したバトルが繰り広げられていた。
 この日のためにトレーニングをしてきたセシル・グランド(せしる・ぐらんど)は、少しでも一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)を見返してやろうと自信満々に参加をしたまでは良かった。
しかし、森次も欲しい景品に巡り会ったときのためにと鍛錬をつんでいたので、両者ともに譲らない成績だ。
 とは言え、極端に好成績を収めているわけでもない。
「森次、これはゲームです。何を熱くなっているんですか」
「それはボクのセリフだよ。セシルこそ人混みが苦手なら休んでもいいんだよ?」
 あと数ポイントで3等の景品が貰える。森次はなんとしても、そこにある熊のぬいぐるみが欲しかった。
「次の年には狙えない……今年にボクは賭けるっ!」
 刺さったのは、必要なポイントとの丁度境目。どちらになるかとドキドキしながら待っていると、店員は溜息をついて報告をした。
「惜しかったねぇ、4等だよ。こっから好きなのもってきな」
 がっくりと膝を付く隣で、同じようにセシルも膝をついた。どうやら、同じ点数でゲームを終えたらしい。
「つ、次こそは!!」
 そうして戦っているのは、射的も同じだった。
「ほらベア、頑張って!」
 たまたま通りがかった露店で、マナが物欲しげに見つめる物があったので、射的に挑戦するベアだったが、これが中々に難しい。
 当てるのが難しい上に、どうにか当てたところでぴくりとも動かず、どこを狙えばいいのかわからなくなってくる。
 同じように苦戦しているのは雪催 薺(ゆきもよい・なずな)。初めての夏祭りで何となくやってみた射的だが、1つも景品を手に出来ないとなると、とてつもなく悔しい。元来の負けず嫌いな性格も相まって、隣で撃ってるヤツよりは先に景品を手に入れてやると意気込みだけはあるのだが……。
「ちっ……当たらねぇ」
 そろそろ違う露店にも案内してやりたいが、意地を張ると納得するまで動こうとしないのを良く知るヴァン・クラクト(う゛ぁん・くらくと)は、薺のために甘い食べ物を買ってきてやった。
「遊んでばっかじゃなくて、食べるのも楽しみ方だぜ?」
 ほら、と差し出せば「一時休戦にしといてやるか」なんて呟きながら綿飴を受け取った。まさにそのときだった。
「やったぁ! ベア見てた? 私やったよ!」
 先程までパートナーを応援していた少女が、この場にいる誰よりも先に景品を手に入れた。
「……ヴァン、これ持ってて」
 むすっとした顔をしながら、もう1度銃を構えてみる。景品なんてどれでもいい、とにかく狙いを定めて――。
「っと! やった! ……あ。べ、別に、これくらい当然だろ」
 小さな景品を落とすことに成功した薺はつい顔を綻ばせるも、隣でヴァンがニヤけていることに気付いて頬を引き締め直す。
「うちのお姫さんはホント可愛いなぁ」
「子供扱いすんな!」
 褒めるように頭を撫でれば、怒気を含んだ声で突っぱねるけれど、やはり景品が取れたのが嬉しいのか次第に抵抗は小さくなる。
「……今日は、その…………サンキュな」
 そんな仲むつまじい2人の後ろでは、2個目の景品を手に入れるマナと面目丸つぶれの様子で落込むベア。
 彼女の意外な特技なのかビギナーズラックなのかはわからないが、楽しんでくれるのは嬉しいことなのに、少し寂しい気分になるのだった。
「仲良く2人で! みんなでジェイダス様になろう、ジェイダスのお面が買えるのは今だけだぜ!」
 ゆっくりと学園を軍用バイクで走りながら、佐野 亮司(さの・りょうじ)がお面の販売にやってきた。
「1つ10Gのところを今なら3つ買えば25Gに!」
 しかし、2人の世界に入っている者とゲームに夢中な2人には聞こえるはずもなく、その他の生徒たちも「ジェイダス様のお面?」と首を傾げるばかり。
「……作りすぎたんだよ、誰か買ってくんねぇかな」