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華麗なる体育祭

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華麗なる体育祭

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穏やかな一時『昼休憩』

 頭を使い、体も使い。くたくたになっているみんなの元へティエリーティア・シュルツ(てぃえりーてぃあ・しゅるつ)はお茶を配りはじめた。
「りょくちゃとむぎちゃと、紅茶、どれがいいですか? おしぼりもありますよー」
「あ、ワタシは紅茶! 葉月はどれにする?」
「同じでいい……が、なんだその荷物は」
 先程リレーを終えた葉月とミーナは合流し、お弁当を食べようと場所取りに向かったのだが、ミーナの荷物が多い。
 勝手に歩き回らないよう、お菓子でも食べて待っていて欲しいと確かに荷物を預けていた。
 だが、競技に出る前と後では明らかに荷物の量が違う。
「コレ? さっきね、パンダさんがお弁当売ってたの! どれも美味しそうよねっ」
 とても嬉しそうということは、とにかく肉がたくさんはいったお弁当なのだろう。
「はぁ……迷子にならなかっただけ良しとするか」
「はい、お待たせ。冷たいから、一気に飲んじゃダメよ?」
 ゆっくり手を振り、みんなに行き渡ったかなとティエリーティアは周りを見渡す。
「おしぼり、まだありますか? 2つ、欲しいんですけど……」
 乳白金の髪をなびかせながら走ってきたのは、アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)
 片手に持ったバスケットとティエリーティアを交互に見つめながら、心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫、まだ冷えてるのあるよー……喜んでくれるといいね」
 優しく微笑むティエリーティアの顔に、アメリアは緊張をほぐされたのか満面の笑顔でおしぼりを受け取った。
「……うんっ! ありがとう!」
 急いで芳樹を待たせている木陰に向かうと、パートナーの高月 芳樹(たかつき・よしき)はシートの上で大の字になっていた。
「おなか……すいた……」
「お待たせ! はい、手を拭いて」
 まだ競技に出ていないとは言え、応援に熱が入ればお腹も空くし汗もかく。
 手渡されたおしぼりで手を拭き、額に当てればそれだけで涼やかに感じた。
「やっぱ、お弁当屋さん混んで……あれ? 弁当買ってきたんじゃないんだ?」
「お昼、これじゃ足りない、かな」
 おずおずとアメリアが後ろに隠していたバスケットを開けると、芳樹は目を輝かせた。
「このサンドイッチ……もしかして、アメリアの手作りっ!?」
「あの、無理して食べなくていいから! まだお弁当屋さん、間に合うと思うし」
 自信のない言葉を遮るように、大きく1口かぶりつく。味わうようにゆっくり噛み締められると、判決の時を待つのが苦しく感じる。
「アメリア、味見した?」
「え、あの、ごめんなさい……」
 冷静な芳樹の声に、思わずシュンとしてしまうアメリア。けれど、芳樹は凄く機嫌が良さそうに続けた。
「そりゃ、自信ないだろうな。こんなに美味しいこと知らないんだから」
 一緒に食べようと勧めてくれる芳樹は終始ニコニコしっぱなしで、その顔を見られるだけでアメリアも胸がいっぱいだった。
「どんな競技になるかわからないけど、応援してるからね!」
「ああ、任せとけ!」
 午前中の2競技だけで大波乱を呼んだ体育祭。午後からはどんな盛り上がりを見せるのか。
 期待と不安を感じながら、一時の休息は終わりを告げようとしていた。