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【借金返済への道】美食家の頼み

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【借金返済への道】美食家の頼み

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第5章


 皆が席に着き、ミニスカウェイトレスのホイップと美羽が次々に料理を運ぶ。
「ほむほむ、やはりジャタ松茸は美味ですな」
 ドロワさんが本当に美味しそうに料理を頬張る。
「次は誠さんの創作古代中国料理『益徳焼き』!」
 焼けている一頭の猪をそのままテーブルの脇まで持ってきて、切り分けて配っていく。
「ほむほむ、これはまた面白い!」
 舌鼓を打つ。
 そこへ九弓が息を切らして琥珀亭へと入ってきた。
 後ろには誰かが居る。
「遅くなったけど、連れてきたよ!」
「お招き頂き有難う」
 後ろにいたのは借金を背負う羽目になった事件の時の司書さんだった。
「ホイッヒッヒーの事凄く心配しているみたいだったし、一度ちゃんと話す機会を、と思ってさ」
 九弓、マネット、そして司書さんが席に座る。
「そうだったんだ!? 九弓さん、マネットさん有難う」
 ホイップは頭を下げる。
「だってさ、借金っていうきっかけで知り合えた人が一杯いるでしょ? だから、そのきっかけをくれた人も居た方が良いかなって。せっかくの楽しい食事会だしね」
「うん! では、続いて、私の作った『ジャタ松茸とその他諸々キノコごはん』と『猪肉のトマト煮込み』」
 ホイップが照れつつ料理を運ぶ。
「ほむほむ、これもまた美味ですな! 簡単な料理だが実に美味い」
「あら、本当。……借金がちゃんと返せるのか不安だったけど、こんなに素敵な仲間に囲まれているのなら大丈夫そうね」
「はい! 必ず全て返しますから、待っててね」
 元気よく応える。
「どう? おじさん。匂い袋分の料理になっているかな?」
「へっ? えっ、ああ! 十分だよ」
 薬屋のおじさんは少しぼんやりしていたのか、いきなり振られて驚きながらも返事をする。
「やれやれ、こんなキノコ料理をうまいと言っているようじゃ、あんた達の味覚も怪しいもんだ」
「誰!?」
 美羽が振り向くとそこには料理を手にしたベアが立っていた。
「明日もう一度この店に来てください。こんな借金魔女が作ったものより、ずっとうまいキノコ料理をご覧に入れますよ」
 きりりと言い放つ。
「いや、作ってあるなら、今すぐお料理出しましょうよ! というか『借金魔女』は酷いですっ!」
 そこへソアのツッコミが入った。
「ご主人、今のは余興だ」
 そう言い、自分の料理をテーブルへ並べていく。
「食べてみてくれ。これぞ、究極のジャタ松茸料理だ!」
 ベアが出した料理はなんともシンプルなキノコステーキ。
「味付けはキノコ本来の味を生かす為に塩と胡椒のみだ」
「ほむほむ……なんとも大雑把な味ですが、確かに素材の味を感じますな」
「そうだろう」
「ベアよ、この程度のキノコ料理で究極と語るとは……。片腹痛いわ!」
「なにぃ!?」
 厨房からお盆を手に現れたのはカナタだった。
「おぬしのようなキノコの味もわからぬ愚か者が作った料理では話にもならぬわ。わらわが皆の為に作った至高のスープを食してみよ!」
 キノコステーキの横へ並べるようにスープを置く。
「究極対至高の料理!?」
 美羽がのりのりで反応する。
「これは数え切れぬほどの魔法薬と高級な触媒を精密なバランスで配合し、特殊な味付けを施してキノコと煮込むこと七日七晩のドーピングキノコスープ!」
「いや、今日作ってたじゃん。それにそんな急には魔法薬も高級な触媒も手に入らないって」
「ええい! そんな細かい事は気にするでない」
 こちらにもパートナーからのツッコミが入った。
「ほむほむ……これは……高級な味がします。……この対決は甲乙つけがたいですな」
 皆も味を確かめ、頷いたのだった。

「なぁ、借金娘。オレが借金の証文を買い取ろうか?」
 給仕をしていると武尊が不意に声を掛けてきた。
「それはダメだよ! 手伝ってもらうのは有り難いと思ってる、でも借金は自分の力で返さないと。今日は武尊さんも有難う。料理楽しんでね」
 お礼を言ってホイップは去っていく。
「残念だぜ。借金で女の子を縛るなんてエロスな展開なのに」
 ホイップがかなり離れたのを確認してから呟いた。

「ね、ね。もう全部料理は出たんだよね? だったら一緒に食べようよ!」
 琴音が自分の席の隣へ手招きする。
「うん!」
 ホイップが座ると空いていたその隣へ虚雲が座る。
「俺が食べさせてやるよ! ほら、あーん」
 自分が手伝った煮込みハンバーグをホイップの口へと持っていく。
「あたしもソレやる! あたしが作った料理だよ! はい、あーん」
 琴音は青い色したシチューをすくい、虚雲のフォークを押し退ける。
「俺の料理の方を食べたいよな? ほら、恥ずかしがってないで」
「あたしの方を食べたいでしょ? 見た目は確かに劣るけど愛情たっぷり入ってるんだから!」
 2人の間で火花が散る。
「いや、えーっと……自分で食べれるから」
「俺の料理が食えないと?」
「あたしの食べてくれないの?」
 潤んだ瞳に根負けして口を開ける。
「じゃあ、虚雲さんの料理が先だったからハンバーグから」
「おう!」
 赤面しながら口へと入れてもらう。
「美味しい!」
「そうだろう」
 満足そうに腕組みをする。
「次はあたしの料理だよ! はい、あーん」
「あーん……ちょっと濃い味付けだけど美味し……ん? ……なんだか体が熱く……」
「元気になってきたんだよ! すっぽんの生血とかイモリの黒焼きとか色々入れたもん!」
「熱いよぅ……」
 胸元の服を開いたり、閉じたりして空気を入れ涼しくしようとするがあまり効果はないようだ。
「む、胸が……」
「ホイッピー! ダメだよ!」
 虚雲の視線に気づき、琴音がホイップを止めるがホイップのからだは熱くなるばかり。
 瞳も潤んできている。
「み、水ー!」
 琴音と虚雲は慌ててホイップを介抱し始めた。
 黎も介抱に手を貸す。

「いやあ、本当に美味しいですね……このトマト煮込みも……ん?」
 料理を食べていた琥珀亭のマスターが何事かに気が付き、他の料理も片っ端から味見していく。
「まさか――」
 慌てて厨房へと駆けて行く。
「わ、私の貴重な調味料コレクションが全て無くなっているー!! ああ……わざわざ地球から取り寄せた1900年物のワインまで……」
 がっくりと肩を落としたマスターから出入り禁止は食らわなかったものの、後日請求書が届く事になるのだった。
 厨房も2度と貸してはくれないだろう……。

 その夜。
「今日はよくやってた」
 介抱され、琥珀亭で横になっていたホイップの頭をなでてやっている黎の姿があった。


■今回の返済■
借金
− 13,800G
報酬
   6,500G
貴重な調味料
− 35,000G
ワイン
− 60,000G
必要経費
−  2,000G
今回の合計
−104,300G

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 シナリオ参加有難うございました。

 キャラの欲望、色々あって楽しかったですね。
 料理も細かく書かれている方が多くて、見ているだけでお腹が空いてきました。
 まさか料理対決がくるとは……!

 では次のシナリオでお会いしましょう!!