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キノコ狩り

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キノコ狩り

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第1章 キノコ狩りに行こう!

「お化けキノコが発生した原因を調べて、これから同じ事が起きないようにしないと」
 羽入 勇(はにゅう・いさみ)ラルフ・アンガー(らるふ・あんがー)と共に事前調査を敢行していた。
「これが森の地図ですか」
「うん、大まかなものだけど……出来るだけ皆に配っておこう」
 手書きの地図には、キノコの森の位置やお化けキノコの目撃情報などが書き込まれている。
「で、問題のお化けキノコは無差別に襲っているみたい……動くものに反応するらしいの」
「ではもし遭遇しても、動かなければ大丈夫なのでしょうか?」
「ん〜、それはそれで難しそうだけどね」
 確かに、と苦笑するラルフに勇はぐっと拳を握りしめた。
「とにかく他の人たちとも合流して、キノコの森に行ってみましょ。やっぱり現地取材……実地調査は基本だしね」
 にこやかに微笑むラルフの手にはちゃっかり、丁度いい大きさのカゴが抱えられていたりした。
「キノコや薬草とかは素人判断では見分けにくいはずですから」
「流石にキノコの食あたりは洒落になりませんからね」
 陽河 誠一(ひかわ・せいいち)御凪 真人(みなぎ・まこと)が調べたのは、キノコ。毒キノコや食べられるキノコ、最終的には専門家に任せるべきだが、出来うる事はしておきたかった。
「なぁ風間先生、食用のキノコや薬草に関して、聞いてもいいか?」
「はい、分かる事なら何でも聞いて下さい」
 そういった方面に詳しいと踏んで、保健医の風間先生に質問するのは緋山 政敏(ひやま・まさとし)だった。
 傍らではパートナーのカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)が、いつになく真剣な政敏を珍しげに、リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)が同じくらい真摯に、耳を傾けている。
「シイタケや舞茸、マツタケ、地上で知られているものと基本的には変わりはないようですね。但し、毒と食用と見分けるのは難しいので……そうですね、御凪くんやリーンさんのように図鑑を持っていくといいかもしれませんね」
「ちょっとかさ張りますけどね」
「それが難点だけど、命に関わるものだからね」
「後さ、毒キノコの中でも『忌み嫌われている』ものってあるか?」
「それですと、毒性の強いこの辺や、幻覚を見せるこれとか、後は……」
 指示される図鑑の写真を、政敏やリーンはしっかりと頭に叩き込む。
「ちなみに他の生物に影響はないのですよね? モンスターが出現する以外で、例年と異なる気になる点がある、とか」
 同じく真剣な面持ちで問うたのは影野 陽太(かげの・ようた)だ。
 キノコモンスターが増殖する大元が森の何処かにある、その手がかりを得られれば、と思ってだ。
「う〜ん、そうですね。直接関わりがあるかどうかは分かりませんが、キノコの森の奥に行った人から一つ気になる話を聞きました」
「先生、それってどの辺ですか?」
 勢い込んで地図を広げる勇、陽太達もまた真剣な眼差しを地図へと落としたのだった。
「誠一はキノコ採取を目的にしているが……」
 そんな誠一達を見つめつつ、誠一のパートナーであるマリアンヌ・アイゼンハワー(まりあんぬ・あいぜんはわー)は口の端を釣り上げた。
「緩さの純度100%のあの男はお化けキノコ共には絶好のカモであろう。おびきよせる餌としては申し分ない」
 マリアンヌとしては、思う存分暴れられる絶好のチャンスである。
「言っておきますがマリアンヌ、火術を使う際は十分に注意して下さいね。私たちが行くのがどういう場所なのか、くれぐれも忘れないように」
「分かっておる。誠一は仮にも我のパートナー、案じずとも一応守ってやろう」
「いえ、私の心配はそこではなく、火術の使い方をですね」
「了解したと言っておろう。それよりグズクズしていたら勇達に置いていかれる、急ぐのだ」
 普段ゆるゆるな誠一の、珍しくしつこい注意。
 まぁ気に留めておいてはやろう、鷹揚に応えるマリアンヌに、誠一は一抹の不安を抱かずにはいられなかったのである。
「本気で行く気かよ?!」
「はい」
 戸隠 梓(とがくし・あずさ)は不機嫌そうに確認してくるパートナーキリエ・フェンリス(きりえ・ふぇんりす)に、おっとりと頷いた。
 梓が勤務しているのはイルミンスール魔法学園だが、だからと言って困っている人を放ってはおけなかった。
「お料理はキリエくんに全力で止められちゃいましたし」
「うっ……いやそれはやっぱ……」
 ごにょごにょと口ごもるキリエ。流石に「料理の腕に不安が……」とかは言いづらい。
「あっでも、キリエくんが嫌なら、付き合う事はないですよ? 待っていてくれれば良いですから」
 梓の言葉にキリエは周囲を見回す。
 ラルフも誠一も真人も人畜無害っぽいが、だからといって梓にちょっかいを出さないとも限らない。
 何せ梓は顔立ちも整っているし、スタイルも良いし、何よりとてもとても優しい性格なのであ〜る。
 なので、キノエの答えは一つだった。
「梓を一人で魔物退治になんか行かせられるか! 俺も行く」
「はい、心強いです」
 にこにこ笑む梓が、キリエの葛藤に気付く事は……全くなかった。


「ここが問題の森、ね」
 小型飛空艇に乗ったコトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)と共に、件の森を見下ろしていた。
 赤いオーバーオールと帽子に付け髭、といった装いのルオシンと、青い衣に口元を覆うマスク、といった意匠のコトノハ。
 対照的というかシュールというかな二人だが、本人達は気にした風もなく、ただ森を……静かな森を見つめる。
「静かだ……静かすぎるな」
「そうね。……この森で、お化けキノコなんてモンスターが発生した事はなかったのよね」
「そのようだ」
「キノコをモンスターに変える何かが、森に有るのかもしれない」
 コトノハは表情を引き締めるとルオシンを振り仰いだ。
「その原因を突き止める為にも、降りてみましょう」