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キノコ狩り

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キノコ狩り

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第5章 キノコキノコキノコ☆
「ようやく静かになりましたね」
「うん、何か色々楽しそうだったけど」
 菅野 葉月(すがの・はづき)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は皆がお化けキノコを退治している間も、キノコ採りに勤しんでいた。
 それも皆で楽しく鍋を囲む為!
「ねね葉月、これ食べられるの?」
「大丈夫ですよ。よく見つけましたね」
「えへへ〜♪」
 葉月に褒められ嬉しいミーナは俄然、やる気を出した。
「あっ! あっちにも色々あるみたい!」
「待ってくださいミーナ、僕も一緒に行きますから!」
 方向音痴のミーナである。よもやこんな森の中で迷子にはならないだろうが……イマイチ自信のない葉月は、慌ててミーナの後を追ったのだった。
「たっくさんキノコ見つけたよ! これだけ採れれば大丈夫よね♪」
 元気いっぱい森の中を走り回るパートナー、セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が寄こした籠を眺め、御凪真人は大きくため息をついた。
「セルファこれは毒キノコだと言ったでしょ……と、これとこれとこれとこれも……って、毒キノコ制覇でもするつもりですか!」
 見ると真人の隣には、選り分けられたと思しき毒キノコやら毒草やらがこんもりと山を作っていたりして。
「ぶ〜、折角採ってきたのにぃ」
 勿体ない、頬を膨らませるセルファ。
 負けず嫌いなツンデレさんは、真人の忠告も何のその、手当たり次第に採ってきているのだ。
 勿論セルファには悪気はなく、ただ皆で美味しいキノコを食べたい一念なのでそう強くは怒れないが……毒キノコはヤバい、マジで!
 なので容赦なく、捨てる。
「はいはい、御託は良いので食べれるものを持ってきましょうね」
「うん、また行ってくるね」
 それでも珍しく素直に、ごねる事無く再び森へと向かうセルファは、楽しそうである。
 元々運動神経は良いし、お化けキノコの脅威が去った今、縦横無尽に森を駆け回るのは楽しい事なのだろう。
「まるで野生にかえったように活き活きしてますね」
「誰が野生にかえってるって!」
 感嘆の呟きに、セルファの笑みを含んだどなり声が返ってきた。

・縦に裂けるキノコは食べられる
・地味な色をしたキノコは食べられる
・虫が食べているキノコは食べられる

「こんな風に言われてるけど、全て迷信だったんだよー!」
 と、力説するのは鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)。山歩き!、な感じの服装に軍手とビニール袋装備、と正にザ☆キノコ狩りスタイルの翔子。
 「えっへん!」と得意げにそらした、ちっちゃな背中。そこにキノコ図鑑が隠されていたりするのは、八神 ミコト(やがみ・みこと)だけが知っている。
「で、ボク一押しのナメコはブナやナラの枯れ木や切り株に生えてるんだよねぇ」
 キョロキョロちょこちょこと、注意深く目当てのナメコを探す翔子。
 その目がキラン、と光った。
「あっあったぁ!」
「鈴虫さん、それはコレラタケ……ナメコと少し似ているけれど、れっきとした毒キノコです」
 万歳する翔子にすかさずミコトの制止が飛んだ。こちらはキノコ図鑑を堂々と手にしつつの、キノコ探しだ。
 ちなみに服装は勿論の事、背中に背負った籠がミコトの静かなるやる気を表している。
「うあっ! ありがと、ミコトっち」
「いえ、キノコ狩りはお任せください」
「何気に燃えてる!?」
「香り松茸、味シメジ。私はおいしい方を取ります」
 翔子の突っ込みをスルーしつつ、ミコトは眼鏡の奥の瞳を周囲に走らせた。
「! あれこそホンシメジです」
 目当てのキノコを素早くゲットするミコトに、翔子も気合を入れ直し。
「ボクも負けてられないや。……あっ、あれ今度こそナメコっぽい!」
 時折ミコトに突っ込まれながら、大好物のナメコを手にしたのだった。

「立派な闇鍋の為、頑張るでござる!」
 坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)は片っ端からキノコを集めていた。
「さすがはパラミタ、見た事のないキノコがいっぱいでござる」
「そこな御仁、お待ちなさい」
 そんな鹿次郎を見咎めたのは、図鑑を手に真面目にキノコを採っていたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)だった。
「皆の為、キノコを集めているのは感心です。ですが、キノコを甘く見てはいけません。見た目が普通の毒キノコが一番食中毒の原因となるものですよ」
 指摘し、おもむろにキノコのチェックを始め。
「これはダメです、これとこれも……」
「ちょっちょっと待っ……」
 毒性の強いものを選りわける。
「ザカコ殿? 本当に毒性の強いものはともかく、多少のものは多めに見ていただけませんか?」
 見かねてフォローを入れたのは、鹿次郎のパートナー姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)だった。
 多少の毒ならキュアポイゾンでどうにかなるし、ちょっとしたものなら闇鍋を盛り上げるエッセンスにもなろう。
「鹿次郎のお馬鹿さんも”毒ながらも食べられるキノコ”と判れば嬉しそうですし」
 こくこく頷く鹿次郎を見、雪を見。
「それは確かに……」
 勿論ザカコとて、全くの石頭というわけではない。
 そこはそれ、折角の闇鍋なのだ。
 お楽しみが全くないというのも味気ないだろう。
 なのでワライダケなど軽度のものは、敢えて見逃すしゃれっ気を発揮したのだった。
「ほいアク、選別よろしく」
「了解です」
 やはり闇鍋用のキノコ集めに奔走していたのは葉月 ショウ(はづき・しょう)だ。
 採ってきたキノコはパートナーの葉月 アクア(はづき・あくあ)に渡す。
「これは毒キノコ……眠りキノコですね。こっちは笑いキノコ、これが痺れキノコです」
「ほぅ、ほぅほう成程」
 アクアは図鑑を片手に、毒キノコと大丈夫なキノコを袋に分ける。
「ショウ、くれぐれも持って帰る袋を間違えないで下さいね」
「勿論勿論、分かってるって♪」
 何も知らないアクアに請け負い、ショウはニヤリと毒キノコ袋を背負い込むのであった。
「探すとなると意外と無いものだな」
「そうね。でも、頑張らなくちゃ」
 ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)もまた、一生懸命キノコを探していた。
 地道な作業だったが、皆の笑顔の為……二人は懸命に探し続けたのだった。


 キノコの森の奥。
 そこは、先ほど陽太達が抜けてきた喧騒が嘘のように、静まりかえっていた。
 じめじめとした感じはなく、寧ろひんやりとした空気が漂っている。
「つまり、これが原因ってわけ?」
 不思議そうに、コトノハ。
 キノコの表面に浮かぶ、赤い花のような模様。それは特殊な黴だという。
「こんなに小さな黴がキノコの異常成長を促した……何かすっごく不思議よね」
 パチリ、カメラに収めながら勇が興味深げに呟く。
「そうですね……多分間違いないと思います」
 誠一に、栗は「ですが……」と小首を傾げた。
「これは大昔に絶滅した筈ですよね」
 他の生物に寄生……というより共生し、成長を促すと言われていた黴。
 但し、熱に極端に弱く、現在では死滅していると思われていた。
「何らかの原因で残っていたか、復活したか……まぁこういうのはしぶといですからね」
「そうだね、大和と同じに」
 ラキシスの突っ込みに、一応復活したらしい大和は「はっはっはっ」と笑いで誤魔化し。
「こいつらだってまぁ生きてるんだもんな」
 ちょっとだけしんみりと政敏。それでも、互いの生活圏を守る為には時には戦いあわねばならないのか。
「折角だし調合用に採取しようと思ってたんだけど……」
 リアトリスは思案顔だ。
 黴つきキノコ。しかもとても繁殖力のありそうな黴である。
「生物部としてはキノコと共に、是非調べてみたいですね」
 いつになく熱のこもった口調の栗を、綾香は嬉しそうに見守り。
「確かに研究対象としては興味深いですよね」
 オレグも興味津津な様子だ。
「これ自体に毒性はない。有効活用出来れば色々使えるかもしれませんね……良い事にも悪い事にも、でしょうけど」
「悪い事に使われるのは嫌ですね」
「というか、ここにある分……寄生されたキノコごと、処分した方がいいですよね」
 こういう事態を再び招かない為にも、と陽太は主張した。
「そうだよな、一番相性が良いのはキノコで、今が旬といっても……このままにしておくのは危険だよな」
「はぁ〜い、じゃこの紅蓮の魔術師サマが完全☆焼却するぜ」
「ただ炎術を使いたいだけでしょう」
「キシシ♪」
 それでも、方法はやはりそれしかないようで。
 とりあえず一同はどこか神妙な面持ちで、黴つきキノコを焼却した。
「でも良かったわ。とりあえず、今回のモンスターは災厄とは関係なくて」
「……あぁ」
 コトノハが何を心配していたのか悟り、ルオシンはふっと口元をほころばせた。
「……勇?」
「え? あ、うん」
 そして、地図をじっと見ていた勇は、ラルフの声で我に返った。
「何か気にかかる事でもありますか?」
「ってわけでもないけど。ここ、キノコの森の最深部のはずでしょ? でも何か……この先にまだスペースがあるような……う〜ん、気のせいかな」
 と、その時。
 きゅるるるるる〜★
 勇のお腹が可愛らしく鳴った。
「うっ、あっ……今のは、その……」
「そう言えばお腹が空きましたね」
「闇鍋の方も楽しそうですね……ウィル、参加しませんか?」
「そうだな、面白そうだし」
「うわっ早く帰らないとボク達の食べる鍋が無くなっちゃうよー」
「では急いで戻りましょう」
 慌てる勇にラルフはニッコリ微笑んだ。
 抱えたカゴを、キノコや栗などでいっぱいにしつつ。