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ゆきやこんこんはいきんぐ

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ゆきやこんこんはいきんぐ

リアクション

○12月15日
今日は2日目。だいぶ山の中までのぼりました。昼には中隊のいくつかの班で狩りに行くそうです。
―――――――――
「伏せて。あの窪地の向こうにいるみたいだよ」
 赤い瞳の少女、桐生 円(きりゅう・まどか)がささやく。
「おおよっ! まかせろやっ」
 ロア・ワイルドマン(ろあ・わいるどまん)が豪快に伏せてアサルトカービンを構える。
 もちろん、ガサガサッと『獲物』は逃げていく。
「もぉ〜逃げちゃったじゃないの。これで何度目?」
 円のパートナーの吸血鬼、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)がロアの前にしゃがみ込む。
「嫌いじゃないんだけどね、ロアみたいなバカ。でももう一回やったら干物にして殺しちゃうわよ?」
「ほぅ、面白れぇぜ。どっちが強えか勝負してやんよ?」
「へえ、おねーさんと気持ちイイことしたいんだ?」
 ロアがオリヴィアにガンを飛ばす。オリヴィアも冷たい視線を流す。
「え? 戦闘? 戦闘? 混ざっていい? ミネルバちゃんも混ざっていい?」
 オリヴィアと同じく円のパートナーにして戦闘バカの英霊、ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)も騒ぎ出す。円は他人事、知らぬ存ぜぬだ。
「皆さん落ち着いてください」
 皆を諭すように話しかける執事がいた。リオン・バガブー(りおん・ばがぶー)である。彼は不幸な男だった。不幸っぷりでは負けたことがなかった。24才になってようやく学校に行くことができ、学校に行くことができたかと思ったら雪山で狩りに行くことになり、狩りにいったらこのメンバーだ。
「おちついてください……どうか落ち着いて私の話を……」
 しかし、だれも彼の話を聞いていなかった。
 ぷちっと彼の中のなにかが切れた。
 リオンは彼らをまとめてちょいと突き飛ばした。
 すると、張られていた糸がピンと切れ、様々な仕掛けが一斉に発動した。
 円とロアとオリヴィアとミネルバは雪の中から飛び出した網によってひとかたまりにされてつるし上げられ、鋭く尖らせた木槍が四方八方から突き刺さる。無傷で済んだのは奇蹟に近い。
「落ち着いたようですから作戦を練り直しましょう。ね?」
「これだからうちのご主人様は恐ろしいんだよ……」
 リオンのパートナーの吸血鬼、ラック・シード(らっく・しーど)だけは、リオンのうすら恐ろしい罠フリークっぷりをよく心得ていたのだった。
 かくして作戦は練り直され、円がオトリとして獲物を引きつける役になった。ディテクトエビルを使える彼女がいちばん適任だという理由からだ。やがて1匹のサーベルタイガーを円は感知する。それを遠くの木の陰に隠れたオリヴィアとロアの狙撃隊にジェスチャーで伝える。
 ゆっくり、ゆっくりとサーベルタイガーが近づいてくる。円はギリギリまで身動きひとつせず耐える。そして襲われるその寸前、あらかじめ掘ってあった壕に身を落とした。
 目標を失ったサーベルタイガーは一瞬動きを止める。その隙を狙ってオリヴィアは矢を放ち、ロアは引き金を引く。
 銃声がこだまする。
 わずかに弾道が逸れる。
 サーベルタイガーが逃げ出す。
 だがその方角は待機していたミネルバが退路を阻む。くるりと身をよじって反転し、駆け抜けていくサーベルタイガー。その前にまんまと待ち構えていたのは、リオンとラックの用意したトラップゾーンだった。
 最終的にサーベルタイガーを捕まえたのはラックだった。しかも噛みついて捕まえたので、サーベルタイガーに懐かれてしまっていた。
「なんだ、まだ子供じゃないですか」
 リオンはラックの抱えた小さなサーベルタイガーの頭をなでる。
「襲いかかられた時はもっと大きく見えたんだけどな」
「フフフ。円ったら恐がりなんだから」
 オリヴィアが円をからかう。
「よこせよ。これは俺のスープにすんだよ」
 ロアがラックからサーベルタイガーを取り上げようとする。が、ラックもサーベルタイガーが案外気に入ってるようで、
「ふざけんな俺様が捕まえたんだぜ。俺様のペットだ」
 と、手放そうとしない。
「よーし、じゃ、これならどうだ? 首から上はてめえのペット、そっから下は俺のメシだ」
「肉はくれてやるが血は一滴も流してはならないってことなら相談に乗るぜ」
 そんな感じでしばらくやり合った後、中隊長預かり兼非常食と言うことで決着がついた。
―――――――――
今日、食料兼ペットのサーベルタイガーのこどもが中隊配属になりました。中隊長が名前を付けていいと言ったので、がー君にしました。ぎゅーってしたら、ふにゃって鳴きました。