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美少女サンタのプレゼント大作戦!

リアクション公開中!

美少女サンタのプレゼント大作戦!

リアクション

・23時00分〜23時30分 

 ゲームが一番の盛り上がりを見せている頃、先にフレデリカに辿り着いた者達は、それぞれの場所でプレゼントを配り始めていた。
「さて、この辺りから配り始めていこうと思うけど……どうやって入ればいいんだい?」
 ミレーヌ、アルフレッド、アーサーの三人はちょうど最初の家に配ろうとするところだった。
「アル、知らねーで引き受けたのかよ」
「あたしは気付かれないように配れるから大丈夫なのよね。鍵開け、やっとく?」
 ミレーヌは自分のスキルを使えば何の問題もなかった。
「心配ないよ。ここはハリウッド映画っぽく、窓をぶち破って派手に登場、って感じがいいと思うんだ」
「バカ、それは迷惑だからやめとけ! サンタってのは子供に気づかれないように枕元にプレゼントを置いてくもんだろ?」
 どうやら彼女のパートナーはいかにしてプレゼントを配るかを模索しているようだった。
「そうだね、見つかって修理代請求されたらたまらないな」
「そこじゃねーよ!」
 その様子をミレーヌは笑いながら眺めている。
「アル兄も、アサ兄も、遊んでないで、そろそろ配ろっ!」
 ミレーヌは言い合いを続ける二人を促し、ようやくプレゼント配りに乗り出した。

「と、いうわけですので子供達にプレゼントを置いてって構いませんか?」
 真奈は孤児院の許可を得て、ミルディアとともに配り始めた。
「メリークリスマス! せめて今日の幸せくらいあ平等に、ね」
「メリークリスマス。せめて今夜くらいは貴方にも幸せを」
 一人一人の枕元に丁寧に置いていく。子供達は皆すやすやと気持ちよさそうに眠っている。目が覚めた時、この子達はプレゼントを見て喜んでくれるだろうか。
「この子達が喜ぶ顔も、見たいですね」
 一緒に配っていたフィルはふと口にする。明日にならなければ、プレゼントを受け取った子供達の姿を見る事は敵わないのだ。
 全員に配り終えると、挨拶を済ませて次の孤児院へと移動していく。
「そういえばミルディさん、よかったんですか? サンタクロースの衣装着なくて」
「うん。こっちの方がやってみたかったからね。サンタさんが衣装を貸してくれるって言った時はびっくりしたよ」
 ミルディアはサンタではなく、なぜかトナカイ姿だ。そしてプレゼントを載せているのは大八車である。配達のために引っ張り出してきたものだ。
「ふふ、皆さんがサンタクロースの衣装を着るとは思いませんでしたわ。でも、やっぱりこの方がクリスマスらしいですわね」
 空京を回り終えたら次はヴァイシャリーの教会だ。たくさんの子供達を笑顔にすべく、彼女達は配達を続けていった。

「メリークリスマス」
 セリナもまた寝ている子供のいる家を回りながら配っていく。
(明日の朝、きっと喜んでくれるでしょう。さあ、次の家に行きますか)
 こっそりと入っては出てを繰り返し、子供達の枕元へプレゼントを置く。
(桜井校長にも配りたいものです。あ、でもあくまでプレゼントは子供達のもの……やっぱりダメですかね)


23時20分 ――ゲーム開始からもうすぐ四時間半

「あ、あんたが本当に本物のサンタなのか?」
 涼は追いついたサンタクロースが自分よりも幼い少女であることに驚愕した。周囲の他の人の反応も似たようなものである。フレデリカはこれまでのように、説明を始める。
「サンタさんのお孫さんだったんですかぁ〜。小さい頃、プレゼントありがとうございました、って伝えて下さい〜」
 メイベル達はフレデリカのもとへ辿り着き、話を聞いていた。しかし、その場にいたのは彼女達だけではない。
「そういう事だったんですね」
 葉月も納得したようだった。
「可愛い……プレゼントよりキミの方が欲しいな〜」
 玲奈は思わず声を漏らした。整った顔立ちと、歳相応のかわいらしさが合わさり、女の子からみてもフレデリカは魅力的に移ったらしい。
「ほんとに女の子だったとはな。予想はしていたけど、やっぱりびっくりだ」
 ショウもまた口を開く。
「結局どっちの勝ちだ? 俺の方が一歩早かったようだったけどよ」
「私の方が早かったよ、ケーキよろしくね!」
「いや、俺だ!」
 二人はほぼ同時にフレデリカに辿り着いたようだった。判定は彼女に委ねられる事になった。
「……ほとんど一緒だったから、同着ってことで」
「えー、そんなあ……」
 二人揃って落胆してしまった。決まらない以上、賭けてたケーキはおあずけのようだ。
「まさか俺と同い年ぐらいの女性がサンタクロースだったとはな」
 グレンもまた、サンタクロースの正体に驚きを隠せないでいた。それは彼のパートナーとて、同様だった。
「へぇ〜…あんたみたいに可愛らしい女がサンタクロースとは驚きだ」
 ナタもまた、口を開く。
「俺としてはプレゼントとしてあんたが欲しいぜ……なんて、冗談だけどな」
 彼女のその言葉に、フレデリカはやや苦笑した。
 そうこうしているうちに、また人が集まり始めた。護衛をしている朔やウィングがある程度見極めているのか、今はまだ過激な者は現れない。とはいえ、今この場に来たものには何かしらの攻撃を受けた者も複数いるのではあるが。
 フレデリカは改めて説明した。もう何度も説明しているので、いくら人見知りの彼女でも話し慣れてきていた。
「プレゼントの配達…手伝ってやろうか? その方が一人でやるより早いだろ」
「フレデリカさん、あの…私たちにも手伝わせてもらえませんか?」
 グレンと彼のパートナー、ソニアがまず申し出た。
「なんて親孝行な娘なんだ! よし、俺も手伝おう!」
 エヴァルトが申し出た。彼のパートナー達も頷いている。
「私にも是非手伝わせて欲しいですぅ」
 とメイベル。
「僕も協力するよ。みんなでやった方が早いからね」
「わたくしも手伝いますわ。あと、強奪する人もいないとは限りませんので護衛しますわ」
 彼女のパートナーであるセシリアとフィリッパも続いて申し出る。
「ボクにも手伝わせてくれよ。かわいい女の子が困ってるんだ、放っとけないじゃないか」
 金色の服に身を包んだエル・ウィンド(える・うぃんど)がやる気に満ちた声を上げる。どうやら、フレデリカにいい所を見せて仲良くなりたいらしい。
「あんたの手伝いをさせて貰いたい。そう言う貴重な経験が俺にとってプレゼントだからな」
 涼もまた、名乗り出て行く。
 しかしこの光景を見て、青ざめた者が一人いた。
「ま、まさかサンタクロースが女……だったなん、て」
 ばたんと倒れたのは皇祁 黎だった。その姿を少しだけ離れてフレデリカは目撃していた。そのため、彼のパートナーである万太郎が説明にやってきた。
「ああ、コイツ女の子が苦手なのだよ。だから倒れてしまったんだ。それにしても、まさか昔会ったサンタクロースがニコラス氏だったとは。彼にお見舞いとしてこれを渡してやってくれないか?」
 万太郎が手渡したのは酢昆布の詰め合わせだった。フレデリカはそれを受け取る。彼はそのまま、自分のパートナーを担ぎあげて去っていった。
 それから間髪入れないタイミングで、新たなる人物が登場した。
「空から……女の子が!?」
 誰が声を上げたのかは分からない。
「サンタさ〜ん!!」
 降ってきたのは、ヴァーナー・ヴォネガットだ。彼女はフレデリカの姿を見つけるや否や、飛び込んできたのである。
「そのまま無防備だったフレデリカに抱きつき、
「ボクのもプレゼント下さい。あと、お友達になって下さい」
と差し迫る。
 しかし、そんな彼女に剣が突きつけられた。メイベルのパートナー、フィリッパであった。
「あ、違います、ボクはただプレゼントを貰いに来ただけで……そ、そんな睨まないで下さい〜」
 よくよく見ると、他にも警戒している者達がいた。突然の出現だ、それも無理はない。
 しかしこの騒動に動じて、フレデリカに近付く者がいた。
「可愛い女の子を紹介してもらおうと思ったけど、サンタが一番可愛いじゃないか」
 ようやくサンタを見つけたカルナスは心躍っていた。紹介も何も、サンタクロースが美少女だ。
「プレゼントはいらない。代わりにオレと食事にでも行こう!」
 だがそれを差し止めに駆けつけた者がいた。周だ。
「プレゼントを、役に立つってモテるアイテムだよな!? あ、それよりフレデリカちゃん、俺と付き合ってくれ、いいだろ?」
「キミたち、フレデリカちゃんが困ってるじゃないか。彼女だってプレゼントを配らなきゃいけないんだよ」
 と、エルが仲裁に入る。
「ねぇねぇ、今日はちょうどイヴだからあたしと一晩デートしない?」
 その隙に今度はどり〜むがフレデリカを誘っている。さすがに彼女も困惑している。これだけの人数に持て囃されるなど、想像もしていなかったのだ。
「ゲームとはいえ、ちゃんと並んでプレゼントは受け取るんだ!」
 さすがに収拾がつかなくなりそうだったため、エヴァルトがその場を鎮めようと声を上げる。
 それから改めて、フレデリカとの交流が始まる。先にいた人達は、入れ替わりで配達に出発していた。
「私はプレゼントはいらない。だが、手伝いわさせてもらえないだろうか? もちろん、報酬もいらない」
 ちょうど到着したクレアが配達を申し出た。
「俺も手伝うぜ。同じく、礼はいらない、強いて言えば……こいつと友達になってくれないか?」
 トライブは自分の後ろに隠れているベルナデットに目を遣った。
「勿論俺ともな。可愛い女の子の友達なら大歓迎だぜ」
「わ、わらわと友達になって欲しいのじゃ!」 
 二人はフレデリカに声を掛ける。いきなりの事に少し戸惑ったが、彼女は快く笑顔を返した。
「うん! よろしくね」
 ただ、彼女の頭をトライブが撫でようとした瞬間、一斉に敵意が向けられた。
「な、そんなんじゃねーから、みんな怖い顔するなよ」
 特にナンパに失敗した男性陣の形相は恐ろしい事になっていた。しかし、それでも彼女に近づく者は絶えない。多くはプレゼントよりも手伝いの申し出ではあったが、そのついでに口説こうとする者は多い。
「煙突に登るのも一苦労でしょ? 俺が連れてってあげますよ(お姫様抱っこでね)」
 出雲 竜牙もまた、その一人だった。ただ、見た目には幼い彼はさほど強い視線を浴びることはなかった。
「プレゼントには余裕があるみたいだ。良かったな、じゃわ」
 藍澤 黎とパートナーのじゃわはいざとなったら順番取りのために、多少の強硬手段も辞さないと考えていたが、それは杞憂に終わった。

「じゃあ、手伝ってくれる人、お願いね。プレゼントと、あと衣装ない人はこっちにあるよ」
 フレデリカは内心、かなり嬉しかった。こんなにも多くの人が自分を手伝ってくれるなんて、考えてなかった。上手くいけば、夜が明けるまでにはプレゼントを配り終えることが出来るかもしれない。