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リアクション
第12章 あの人のためのサンタクロース
配達が終わった各地では、サンタクロース達も元の学生に戻って残り僅かのクリスマスを楽しんでいた。
「それじゃ、最後のプレゼントは虹七ちゃんにだね」
アリアは、サンタの袋の中に、2つプレゼントが残っていることに気がついた。
「あれ? 配り忘れかな?」
虹七は、袋の中から最後の1つをとり、アリアの手をひいてツリーの前へとやってくる。
「……これは、お姉ちゃんのだよ。……メリー・クリスマス、お姉ちゃん」
虹七の小さな手に包まれたプレゼントが、アリアに差し出される。アリアは、虹七に目線を合わせて腰を落とすと、持っていたプレゼントを虹七と交換した。
「メリー・クリスマス、虹七ちゃん」
配達を終えたリュースと真は、それぞれの年下のパートナーにと、仔トナカイからプレゼントを2つ渡された。
それは、配達の途中、お互いのパートナーには何がいいかと勧めあったものだった。
見透かされたことに苦笑しながら、真はリュースに勧められた木の玩具楽器を、リュースは真に勧められたスズラン柄のコンパクト手鏡を手に、帰路についた。
「メリー・クリスマス」
テオディスが、小さな袋をアルフレートに渡した。中にはターコイズのストラップが入っている。
しかし、アルフレートは礼も言わず、肩にかけたカバンから、袋を取り出し、テオディスに投げた。
「……メリー・クリスマス」
中には、スケッチブックが入っている。テオディスはさっそくヒラニプラの雪景色をスケッチし始め、アルフレートはその背に身体を預けてターコイズを眺めた。
「今日は、2人とも、お疲れさま」
葵は、エレンディラとイングリットにプレゼントを渡し、2人の頬にキスをした。
「メリークリスマス。これは私から感謝の気持ちだよ☆」
葵はおかえしに、2人から愛情たっぷりに抱きしめられた。
「紗月、どうしようまだ一個残ってる! 早く最後の配達に…」
慌てる凪沙を紗月が押しとどめた。
「それは、俺からのプレゼントだよ」
「………えっ、私…に?」
プレゼントを開けると、中には綺麗なリボンが入っていた。
「いつも世話になってるし、大切な妹だしな。それにほら、契約してから、お前に何かあげたこととかってなかっただろ?」
はらはらと、凪沙の目から涙がこぼれおちる。
「凪沙っ!? な、なんで泣くなんで泣くっ!?」
動揺する紗月に凪沙まで動揺する。
「だ、だって、突然だし、びっくりしたし、さ…紗月から、プレゼントもらうなんてなかったでしょ? だから、…うれし……っ」
また溢れだす凪沙の涙が止まるように、紗月はそっと頭を撫で続けた。
凪沙の胸に何かが突き刺さる。確かに嬉しい…はずの、『妹』へのプレゼント。
(なんだろ、これ…?)
凪沙には、まだこの気持ちの意味がわからなかった。
悠は、笑顔で亮司にプレゼントを渡した。
「お疲れ様。はい、私からのクリスマスプレゼント」
悠は、亮司が気に入ってくれるかドキドキしながら小さな箱を渡した。ありきたりかとも思ったけど、やっぱりオルゴールにしてみた。
「それじゃ、俺からも。メリークリスマス、悠」
佐野は、いつ渡そうか悩んでいたプレゼントを、あっさりと渡せたことに驚きながら、気恥ずかしさを覚える。
「綺麗!」
それは、誕生石のダイヤモンドと銀の飾り鎖のネックレスだった。亮司が悠の首に手をまわし、つけてやる。
「似合いますか?」
頬を染めて聞いてくる悠に、亮司は優しく微笑んだ。
ハーポクラテスは、ようやくラドゥ・イシュトヴァーン(らどぅ・いしゅとう゛ぁーん)の部屋に、プレゼントを置く事が出来た。
「ラドゥ先生の恋がかないますように……」
そう言って部屋を後にする。
プレゼントを渡せて嬉しそうなハーポクラテスの頭を、クハブスが撫でた。
「えっ、…何…?」
「何でもありません」
(早く、吸血鬼になるに値する人間に育って下さい)
悠希は、とうとう念願の静香の私室…ではなく、校長室の扉を叩いた。
「どうぞ」
中から愛しい静香の声がして、悠希を招き入れる。
「おや、可愛いサンタさん。どうしました?」
静香の優しい笑顔に、悠希はいきなり泣き出した。
「ど、どうしました!?」
「すごく、逢いたかったので……」
悠希は、なんとか涙を拭き、プレゼントを、静香に渡した。
「メリー・クリスマス、静香さま」
悠希のプレゼントを、静香は驚きながらも微笑んで受取ってくれた。
「急げ!」
ケイとソアは、揃って百合園女学院の寮の一室に向かい走っていた。
あと少しでクリスマスが終わってしまう。
ケイは、間に合うように祈りながら、手の中の『ハートの機晶石ペンダント』をぎゅっと握りしめた。
ソアも、ベアに「俺にかなうゆるキャラはいねぇ」と言われながらも手に入れた、ふわふわもこもこの『トナカイのゆるキャラぬいぐるみ』を抱え直した。
きっと彼女は気に入ってくれる。
きっと彼女は喜んでくれる。
あと少し、もう少しで彼女に届く!
学校入口で待っているベアは、やれやれとため息をついた。
「そんなに急がねぇでも、間に合うっての」
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